2004年1月:機動戦士ガンダムSEED
 
 
 2002年10月から1年間にわたって放映されたテレビアニメ「機動戦士ガンダムSEED」。21世紀初のガンダムシリーズとして注目を集め、また誕生から25周年を目前にしての作品としても話題になった。しかし、この物語は図らずも重い命題を背負うことになってしまう。それは、製作者サイドでさえ予想し得なかった自体。この物語の進行に並行するように、起こってしまった惨事。イラク戦争――――
 ガンダムSEEDの世界で世界を二分する要因は、人類古来の種「ナチュラル」と遺伝子改変によって生み出された新たな種「コーディネイター」。この作品では従来のガンダムシリーズとは異なり、思想や思惑ではなく初めて「人間そのもの」の違いによって対立する構図が描かれている。
 人は、より良くありたいと思い、より賢くありたいと思い、より強くありたいと思い、より良いものを手に入れたいと思い、より強い兵器を手に入れたいと思う。そしてそれを手に入れた人は、自らより劣る人を軽蔑し、差別し、貶める。迫害を受けた人は、自らより優れた人を羨み、ねたみ、やり返そうとする。そして、果て無き死の連鎖が生まれる。
 より良くあることがそんなにも貴重なのか。より強くあることがそんなにも特別なのか。「一番」であることがそんなにもすばらしいことなのか。
 やったらやり返される。誰かを殺せば、その妻が、息子が、父が、今度は自分を殺しに来る。人はなぜこんなにも単純なことがわからないのか。
 平和のために戦う、とある人は言った。だが、戦うことで本当に平和は訪れるのか。そもそも平和とは何だ。戦わないことが平和なのか。争いがまったくないことが平和なのか。武器が消えれば平和になるのか――――
人には感情がある。感情は憎しみを呼ぶ。それは仕方のないことだ。そして、憎しみが何を呼ぶ。人の死か、戦争か、別の何かか。
 「『反戦』と叫ぶのは簡単だ。だが、それだけでは何もできない」と誰かが言った。だが、何もできないからといって叫ぶことをやめたらどうなる。少なくとも、まだこの地上には「反戦」の声を叫ぶ人がいて、それを聞いてくれる人がいる。そうである限り、人は「反戦」を叫び続けるだろう。
 誰かが言った。「小さくても、強い灯は決して消えない」と。そうであってほしい。そして願わくば、それが大きな灯になっていくように。

 『今もしかしてとひとつ思うことは、毎日頻繁に色々な友達とメールをやり取りするよりも、一月に一度でも半年の一度でもいい、一人の人間とじっくり互いの話をするほうがいいんじゃないの?ってことくらいだが』
 
★機動戦士ガンダムSEED
  著者:後藤リウ
  イラスト:小笠原智史
  刊行:角川スニーカー文庫
  @すれ違う翼:   2003年4月1日 初版発行
            ISBN:4-04-429101-2
            定価:552円(税抜)
  A砂漠の虎:    2003年7月1日 初版発行
            ISBN:4-04-429102-0
            定価:533円(税抜)
  B平和の国:    2003年9月1日 初版発行
            ISBN:4-04-429103-9
            定価:533円(税抜)
  C舞い降りる剣:  2003年11月1日 初版発行
            ISBN:4-04-429104-7
            定価:590円(税抜)
  D終わらない明日へ:2004年2月1日 初版発行
            ISBN:4-04-429105-5
            定価:600円(税抜)