2003年7月:ジャンクフォース - JUNK FORCE -
 
 
 産業発展に伴う地球環境破壊が深刻化する中、今や人類は新たら居住地を求めて奔走しています。まず目をつけたのは、自分たちの“足の下”、すなわち「地下」であり、この試みははおおむね成功したといっていいでしょう。しかし、環境破壊とともに新たに浮上してきた「過剰人口」―――世界人口はまもなく60億を突破―――への対策は、これだけでは足りません。しかも、環境破壊は人類は居住できる地域を確実に狭め続け、現在もその勢いは止まっていません。。そして人類はついに、“頭の上”にも安住の地を求め始めました。それが、「テラ・フォーミング」―――火星の地球化計画です。
 太陽系の存在する8つの地球外惑星の中ではもっともその性質が地球に似ているといわれている火星。しかしそれでも、大気の90パーセント以上は二酸化炭素、水はまるでなし、昼と夜の気温差は摂氏にして100度以上。現状ではとても人間が住めるような環境ではありません。しかし、アメリカのNASA(連邦航空宇宙局)が主導となって行われている火星調査などにより、テラ・フォーミングは着実に現実のものとなりつつあります。しかし、逆にこうも言えるのではないでしょうか。「火星の地球化」は、「地球の火星化」をも引き起こしている、と。
 西暦2134年、「脱出派」と「地球再生派」に二分された人類は、人類全体の去就をめぐって最終戦争「Last World War」を引き起こします。そしてその結果、広域破壊兵器の度重なる使用によって地球環境は壊滅。紫外線が常に降り注ぎ、気温の高低差が50度を超える“死の砂漠”と化した地球。一握りのエリートたちはテラ・フォーミングの終了した火星へ逃れ、そうでない大多数の者たちは劣悪な環境の中、各地でコミュニティーを形成して辛くも生き延びています。
 そんな中、“理想の街”を目指して砂漠の旅を続ける3人の少女たち。物語は、彼女たちがいまどき珍しい「まっちろな」少年と出会うところから始まります。住んでいた街を破壊され、彼女たちを盗賊と間違えて逃げ惑う少年。しかしその甲斐もなく、少年は彼女たちに捕獲されてしまいます。そしてそれ以後、4人での旅が始まるのです。彼の街を破壊したもの。それは盗賊でもなく、軍でもなく、自動戦闘機械でもなく。
 この本は7章構成ですが、原作は13章もある長い小説。単行本化されるのはこれが初めてです。ちょっとわけがわからくなったかもしれませんね。原作「JUNK FORCE」は、トイズ・ファクトリーのホームページで連載されていたWEB小説なのです。第1部完結と、新たに第2部「JUNK FORCE FROM MARS」がSOFT BANK GAMESで連載され始めたのを記念して今回単行本化されたわけです。ちなみに、コミックスとドラマCDが既に発売されています。多分探せば手に入るはず。
 作家陣は、いかにも、な感じの2人組。柿沼秀樹氏はゲームやOVAの脚本や演出のみならず、キャラクターデザインなどもこなすというマルチクリエイター。「ガルフォース」「アーミテージ・デュアルマトリックス」などを手がけています。イラストを担当しているのは、稀代の美少女作家として知られる駒都えーじ氏。「イリヤの空」「蒼い海のトリスティア」のキャラクターデザインなどさまざまな場面で登場する天才です。
 旅の話には恋がつきもの。少年と結ばれるのは、さて、いったい誰でしょうか。
 
★ジャンクフォース - JUNK FORCE -
  著者:柿沼秀樹
  イラスト:駒都えーじ
  刊行:メディアファクトリーMF文庫J
  2003年7月31日 初版発行
  ISBN:4-8401-0812-9
  定価:580円(税抜)