2003年5月:FINAL FANTASY XI 〜星の誓い〜 |
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RPGを題材にした小説は、過去にも数多く出版されています。しかし、そのほとんどはゲームのストーリーを大きく踏襲したもので、広い意味では「(フィクションをもとにした)ノンフィクション」になってしまいます。ノンフィクション小説のデメリットは、ひとえに、読み手に固定概念がついてまわることに他なりません。つまり、最終的にはこうなる、というのがわかってしまう。それは、活字から生まれる数多のシーンを創造させることを妨げ、文章の世界を狭めてしまうのです。
では、この本はどうか。ファイナルファンタジーシリーズは、日本中にその名を知られたRPGの代名詞とも言うべき名作です。1982年に第1作を発売して以来圧倒的な支持を受け続け、常に日本のゲーム業界のNo.1に立ち続けています。そして、世界的に大規模高速通信が発展してきた2002年、開発発売元のスクウェアは、シリーズ第11作をオンラインゲームとして発売することを決定しました。それが、「ファイナルファンタジーXI
ONLINE」です。
MMORPG(Massivly Multiplayer Online Role Playing Game)というジャンルのこのゲームに、明確なストーリーがあるわけではありません。それどころか、主人公すら存在しない。しいて言えば、多くの人がプレイしている無数のキャラクターすべてが主人公となります。と、いうことは、小説を書いても読み手の固定概念はまるでないことになる。
この小説の主人公は、ヒュームの戦士アルフレッドです。彼は、白魔導士のイーリスやシーフのシェラ、赤魔導士のジェドなど6人の仲間と共にパーティーを組み、ヴァナ・ディールという世界を旅する冒険者です。前作「祈りの風」で戦った「戦車」の設計図を入手した彼らは、それをウィンダスへともたらすべく旅を続けます。今回は、そのお話。
世界観や地名、登場するモンスターなどはゲームのものを踏襲しているものの、ストーリー自体は完全なオリジナル。純粋に彼らのたびを楽しむことができます。ゲームをまったくプレイしたことがない人でも楽しめるし、やりこんでいるのならなお良し。
彼らのたびは、もう1作続くようです。今回のラストで思い思いの方向へと散っていった6人の仲間たち。故郷バストゥークへと戻ることになったアルフレッドとイーリスに、さて、今度はどんな困難が待ち構えているのか。そして、10年前に幽霊船との戦いで亡くなったイーリスの両親についても明らかになるのかどうか。そして、その後の展開は。
どうやら、次回作はけっこう慌しくなりそうです。 |
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★FINAL FANTASY XI 〜星の誓い〜
著者:はせがわみやび
イラスト:金田榮路
刊行:ファミ通文庫
2003年5月1日 初版発行
ISBN:4-7577-1424-6
定価:640円(税抜) |
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