2002年10月:.hack// AI buster |
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TVアニメ、ゲーム、コミック、OVAと多彩なメディアミックスを展開する「.hack」に、待望の小説版が登場です。その名も「AIバスター」。
はじめにご説明しておきましょう。「.hack」は、貞元義行・伊藤和典・真下耕一らが中心となった、その名も「Project
.hack(プロジェクト ドットハック)」が原作の総合メディアミックス作品で、今年になってまさに彗星のごとく登場した作品です。今までの作品になかったネットワークゲーム内の仮想空間という独特の世界観を取り入れ、またそれぞれのメディア展開を微妙にリンクさせることで、そのファンを着実に増加させています。TVアニメ「.hack//SIGN」は先月末で放映終了、ゲームは現在までに「vol.2 悪性変異」までが発売され、今後vol.4まで発売予定です。コミックス「黄昏の腕輪伝説」は単行本1巻が発売中、OVA「Liminallity」はゲームに同梱されている作品です。
と、「.hack」の概要をご説明したところで、本題である「AI
buster」に入りましょう。
前述のとおり、ネットワークゲームのバーチャルワールドが舞台のこの作品においては、リアルの世界では考えられないような現象が多々起きます。ですが、その大半が開発元によってプログラムされた所謂「イベント」であって、逆に言えば、開発元、つまりゲームの管理者側にとってはすべての現象が既知の事実なわけです。ですが、「.hack」舞台となるネットワークゲーム「The
World」では、管理者側でも原因が特定できない現象が起こっているのです。そして、この管理者側の人間「碧衣の騎士団」「紅衣の騎士団」任務のひとつに「放浪AI」の削除があります。「放浪AI」はプログラムのバグやチートユーザーの人為的な改竄によって生み出されたバグプログラムで、本来ゲーム内には存在してはならないものです。これがこの小説のタイトル「AI
buster」の由来です。
ところが!今回の小説版では、その管理者側の人間が放浪AIと偶然接触してしまったからさあ大変!この管理者側のキャラクター「アルビレオ」は、普段は管理者という立場を隠して、普通のキャラクターとしてプレイしているのですが、そのプレイの最中に放浪AI「リコリス」と接触します。このリコリスが不可思議な少女で(まあ、バグプログラムですからね)、アルビレオにさまざまなアイテムを要求します。その名も「eciov.cyl」や「rae.cyl」といったもの。ネットゲームをやっている方なら「あれ?」と思われるでしょう。ゲームのアイテムに、このような拡張子のついたものがあるはずがないのです。このアイテム、ちょっとした暗号になっているのですが、それは読んでいただいて理解していただきましょう。
そのほかにも、本来ソロプレイヤーであるアルビレオと他のキャラクターとの交流をえがいた部分などの伏線も用意されていて、予想外に面白くなっています。
著者をご紹介しましょう。浜崎達也さんは1999年に第4回角川スニーカー大賞優秀賞を受賞、主にアニメーション作品のノベライズを担当してらっしゃいます。主な著作には「ワンピース」や「星闘士星矢」など。前述のコミックス「.hack//黄昏の腕輪伝説」の原作も担当しています。また、コミックスで漫画を描いている依澄れいさんが小説版の本文イラスト担当しています。同じコンビではあるものの、立場が全く逆転しているために作りも全く違い、それゆえに楽しみ方も全く変わってきます。両方とも読むと世界観がより広がるのは言うまでもありません。
追うものと追われるもの。その2人が展開する冒険の物語、そして結末。
悲しき思い出
それが、リコリスの花の花言葉です。、 |
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★.hack// AI buster
著者:浜崎達也
イラスト:依澄れい
刊行:角川スニーカー文庫
2002年10月1日 初版発行
ISBN:4-04-422204-5
定価:533円(税抜) |
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