2002年9月:RUMBLE FISH[4]伝説崩壊編 |
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今月は、近未来SFスクールアドベンチャー作品をご紹介しましょう。この「ランブルフィッシュ」は、近未来の架空の都市「恵里谷」に建つ「恵里谷闘騎技術専門校」を舞台としたSF作品です。作中には「レイド・フレーム」と呼ばれる人型兵器も登場し、機械好きの中高生にとってはたまらない要素がふんだんに盛り込まれています。
ではまず、主な登場人物の紹介をば。主人公の高雄沙樹は、編入試験によって恵里谷にやってきた闘騎手で、名前からは想像できませんが、男です。もう1人の主人公である志村瞳子は恵里谷の設計科の学生で、ちょっとした手違いから沙樹と同室で暮らすことになってしまいました。また、彼らの所属する恵里谷D班の面々や沙樹と共に編入してきた3人の少年たちも重要なキャラクターです。が、何よりも忘れてはならないのが、沙樹が操縦するRF(レイド・フレーム)の「ガンヒルダ」です。白い塗装の人型兵器、というと真っ先にガンダムを思い浮かべますが、実はガンダムとは似ても似つかない容姿をしています。全体に角ばった印象を持ち、頭部は胴部アーマーとほぼ一体化されています。例えるならば、かの有名な「エヴァンゲリオン初号機」の、頭部を少々埋め込んだイメージでしょうか。そんな形をしています。
今回の話は、中間試験真っ最中の恵里谷が舞台。と言っても、第2巻あたりからずっと中間試験が続いているのですが。今回はその準決勝をめぐる物語です。ですが、その話がすべてではもちろんありません。今回のゲストキャラクターは結構多く、この作品を読みなれていない人は少々混乱するかもしれません。まず、沙樹の妹の亜夜と香夜。沙樹たちの準決勝の相手である、A班の稲杜楓と藤真蒼威。ガンヒルダのもともとの設計者である深見祭理。沙樹と同じく編入してきた林崎要の、兄の婚約者である風早詩織。そして、沙樹の父親の高雄一樹。ずいぶんいるんですねぇ。これがそれぞれ違った方向で話が展開していくものですから、混乱するのが普通かもしれません。うまく頭を整理しながら読んでいかないといけません。本流である恵里谷中間試験の話をすれば、前作でガンヒルダが「理想筐体」であると告げられた沙樹と瞳子が、結果的にはそれも理想筐体であったとわかるA班の「プロトシグリッド」と準決勝で対戦します。プロトシグリッドは校内では負け知らずの強敵で、D班の面々はほとんど戦意を喪失してしまうのです。そんな中で全く負けるつもりのない沙樹と瞳子が懸命に頭をひねって対策を考え出し、シュミレーションでの勝率を脅威の67パーセントまで上昇させるのですが、さて試合の結果やいかに・・・・。
著者である三雲岳斗さんは、1998年に「コールド・ゲヘナ」で第5回電撃ゲーム小説大賞「銀賞」を受賞、同作でデビューし、その後「アース・リバース」で第5回スニーカー大賞「特別賞」を受賞し角川スニーカー文庫に登場しました。「ランブルフィッシュ」は2001年に第1巻「新学期乱入編」が発売されて以来、個性的なキャラクターと主に男子中高生を中心とした読者にはたまらない設定のオンパレードとあってその読者を増やし、今年の1月からは月間少年エース誌でコミックの連載もはじまりました。単行本もタイムリーに今月発売され、同時に10月からラジオドラマの放送も決定しました。このままの勢いでランブルフィッシュがヒットを続けるならば、そのうちOVAなどもできてしまうんではないでしょうか。
この作品でメカニックデザインを担当しているのが、おなじみの山根公利さんです。山根さんといえば、このレビューでもご紹介した「スターシップオペレーターズ」のメカニックデザインも担当してらっしゃるほか、「スプリガン」や「カウボーイ・ビバップ」など、この分野ではもはや権威となられた方です。持ち前の独創性あふれるデザイニングで、ランブルフィッシュの世界観を大きく広げています。従来からある人型兵器の概念は微妙に継承しつつ、三雲さんが設定した新たな装甲や武器などを忠実に再現してまったく別のRFをいくつも生み出しています。
小説から始まり、コミック、そしてラジオドラマと多彩なメディア展開を見せる「ランブルフィッシュ」。これを楽しむにしろ、原点であるこの小説版「RUMBLE
FISH」ははずせません。メカが大好きな少年たちも、未来的な世界観が好きな人たちも、ぜひご一読くださいませ。あ、ギャンブル好きの方でも楽しめるかもしれませんよ。 |
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★RUMBLE FISH[4]伝説崩壊編
著者:三雲岳斗
イラスト:久織ちまき
メカデザイン:山根公利
刊行:角川スニーカー文庫(角川書店)
2002年9月1日 初版発行
ISBN:4-04-424105-8
定価:533円(税抜) |
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