2002年7月:トゥインクル☆スターシップ3
〜私、あなたが信用できません〜 |
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前回に引き続き、スペースファンタジーのご紹介です。今回は、ファミ通文庫から刊行されている「トゥインクル☆スターシップ」をご紹介します。
前回「スターシップオペレーターズ」をご紹介したのでどうしてもそちらとの対比になってしまうのですが、まず時代設定は「トゥインクル☆スターシップ」のほうがずっと前になっています。「オペレーターズ」が2300年代なのに対して、「トゥインクル」は2100年代。それでも作中に登場する先端テクノロジーはどちらも大差ありません。そして2つの作品の大きな違いが、宇宙開発という観点から見た開発対象の違いです。「オペレーターズ」では主に戦艦や地上基地といった軍事方面での開発がかなり進んでいますが、「トゥインクル」ではそういったものではなく、宇宙空間そのものの開発が非常に高度に発達しています。代表的なのが「ゲートウェイ」と呼ばれる宇宙基地で、これは現在NASAが中心となって開発が進んでいる国際宇宙ステーション(ISS)の小型版と思っていただいて構いません。ですが、その機能は近い将来に建設が完了するISSのそれをたやすく凌駕するほどです。また、人口のものでない機械として、「ビースト」と呼ばれる自立機械が登場します。作中では、このビーストの脅威を克服した人類が、「ビースト」そのものから多くの技術を学び取ることになった、という設定になっています。これもなかなかユニークな発想で、機械すらも生物と同じように扱っているということです。
さて、「トゥインクル☆スターシップ」のおおまかなあらすじですが、登場するのは移民実習船に乗り込んだ5000人にクルーたち。ですが、ただのクルーではありません。「八丈島移民開発学校」、通称「八開キャンパス」の学生たちなのですが、「八開キャンパス」は女子校ですのでクルーは全員女子・・・・のはずです。ですが、移民実習船の指揮官候補は男性に限られているため、この移民実習船「トゥインクル☆号」に乗り込んでいるのは、性格には4999人の女子と1人の男子、ということになるのです。初めにこの設定を見たときは「なんてすばらしい環境なんだ!」と思ったものですが、いざ読み進めてみるとそれが全くの誤解であったことに気づきます。女って、コワイですね(笑)
この「トゥインクル☆スターシップ3」では、主人公の桐生セイジ(言うまでもなく、トゥインクル☆号ただ1人の男子)とちょっとワケありの新キャラクター、淡雪ユズリハが登場します。正確にはセイジの兄とユズリハの両親がワケありなのですが、逆恨みというか、まぁそういうやつです。でも、最後には仲直りするので万事OKという感じですね。
「トゥインクル☆スターシップ」の面白いところは、サブタイトルに登場人物の台詞を使っていることです。この本のサブタイトル「私、あなたが信用できません」も、作中でユズリハがセイジに向かって言った言葉で、先ほどの逆恨みに関係しています。章ごとのサブタイトルにも台詞を使っているので、サブタイトルをみただけではどんな内容かが全くわからないというようになっています。なかなかユニークな演出です。
読んでいると、4999人の女の子たちに振り回されるセイジに同情したくもなるのですが、そこは物語、セイジもきちんと男として、指揮官候補としての威厳を保っています。その駆け引きの行く末を、ぜひお楽しみください。 |
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★トゥインクル☆スターシップ3〜私、あなたが信用できません〜
著者:庄司 卓
イラスト:まりも
刊行:ファミ通文庫(エンターブレイン)
2002年7月2日 初版発行
ISBN:4-7577-0897-1
定価:640円(税抜) |
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