「やあゲン、飲んでるかい?」

「言われなくても飲んでるぜ。いやあそれにしてもレオナルドさん、あんたも良い飲みっぷりだねえ!メカだっつうのに!」

「人間娯楽を忘れちゃあお終いだよ。こんなこともあろうかとアルコールもエネルギーに代えられるようなボディにしておいて正解だったね」

「違いない!」





せっかく全部片づいたのだし、打ち上げでもしようか!とレオナルドに言われ、ゲンは少なからず驚いた。
なんていっても今回の彼の旅の道連れはもの凄く変わっていた。

メカ。

右を向いても左を向いてもメカ。
彼も祖国を出て以来モンスターやら妖魔やらが混じったパーティに幾度も加わったことはあったがまさか全員生き物ですらないとは。
長生きはしてみるものである。

それでも退屈しなかったのはこの機械達が見た目以外機械とは感じないような輩だったからであった。

引っ込み思案な特殊工作車を叱咤激励しつつ、義理堅いpzkwVの肩(?)を叩きつつ、まるで子どものようなナカジマ零式を叱りつつ、生前そのままのレオナルドと酒を飲みつつの旅はとても愉快であった。
そして生真面目なT260Gとも。




「お前も飲むか?」

「私はアルコールをエネルギーとして稼働出来ません」

「あーそーかい」





メカというのは不思議なもので、皆画一的な性格をしているのかと思っていたが出会った彼らは個性豊か。
初めて出会ったのがT260Gであったため、そう信じ込んでいた。
そう思えば”これほどメカらしいメカ”は他にはいないだろう。
彼は少し楽しくなって傍らの機械に話しかけた。酒もだいぶ回ってきたようだ。





「くそ真面目なのはお前の性格だったんだな」

「私は対RB3型戦闘用リージョンシップのAIとして制作されました。最低限のコミュニケーション機能以外搭載されていません。従って”性格”と判断するには」

「あーわかったわかった!難しい話するなって」

「了解」




やっぱりお前は真面目なんだよなあとゲンは呟く。
それが逆に笑い話になることは何度もあったが。
タコおじさん”様”だなんていつ思い出しても笑える。

憮然とした顔つきでその場に黙って立ちつくすT260Gに(いやこの思考はかなりいい加減に違いない。この機会は普段と同じようにそこにいるだけなのだし)、ゲンはぽんぽんとその頭を叩きながら言った。




「別にお前に手酌しろなんて言わないから安心しろ」

「何故ですか?」

「なぜってそりゃ、野郎に手酌して貰ってもなぁ」




酔っぱらいの言葉に、おやおやと反応したのはレオナルド。
彼は酔いつぶれたナカジマ零式の背をさすってやりながら360度体を回転させてにやりと笑った。
にやりと笑ったような気がした。
彼は言った。



「何言ってるんだい?T260Gのパーソナルは女性だよ」








一瞬の沈黙。
思わず手からグラスを滑り落としたがT260Gが素早くキャッチし、その手の中に戻した。




「あ、わりぃな」

「落下速度と軌道は予測計算済みでした」

「それはどういたしましてってことなのか…?あ、いやそれどころじゃない。レオナルドさんよ、メカに男も女もあるのかい!?」

「そりゃ性格的なものならあるよ。僕は男性だよ」

「あんたはそりゃそうだろうけどよ、こいつはどうなんだ?」

「僕もこの間気がついたんだけどね。彼の、いや彼女のコアを調べてみたら、どうやらそうらしいんだよ」

「お前は何なんだ!?本当なのか?!」

「制式形式番号T260、認識ID7074−8782−1099」

「それじゃねえ!」

「どれですか」

「お前女だったのか!?」

「本機に搭載されている人格データの基礎は、女性型です」




ということは、だ。
言うなれば自分はこれまで記憶喪失の美女の記憶を取り戻すために、そしてその失われた記憶の目的を果たすために旅をしてきたと、そういうわけか?(美女なのはご愛敬。ものはいいようだ)
うーん、そう考えればなかなか有意義だったなあ。




「ゲン様。眼球と視線の位置が一致していませんが、アルコールの摂取過剰と判断します」

「俺の妄想をぶちこわすなよ!」

「妄想が見えるのなら、泥酔状態と判断し直します」

「ほっとけ!」

「あ、君は知ってる?」

「あ!?なにをだい?!」

「昔から、シップは女性が守るものなんだよ。海の船には女神像。リージョンの船には女性のナビゲータシステム」




女性っていうのは守る力が強いと思われているんだね。だから”彼女”が君の飲み過ぎを心配してくれるのもしょうがないと思わなくちゃ。
まあそれは考え過ぎかもしれないけどねあははははと笑いながら新しいアルコール飲料を追加しに行く天才博士。
ゲンが思わず傍らのその丸い姿を見つめると、”彼女”はなんのこともなく淡々と




「アルコール依存症は視力、記憶力を含む脳細胞、及び内臓の大部分を破壊します」




問題箇所の詳しい説明が必要ですかと告げられ、ゲンは笑った。
まったく何を考えているのか一番分からない奴だなあ。

全く先の読めない奴だと思う。
あ、これを女心と秋の空というんだったっけかな?ちょっと違うか。

これを口に出せば直ちに正しい意味を教えてくれるだろう。でもまあ。このままでもいいか。




「ったくお堅いねえ」

「現在A級任務として総指揮官ローズマリー様より”ゲン様の過剰なアルコール摂取の阻止”を命令されています」

「そんなことばっか言ってるとせっかくの美人が台無しだぜ」





なんてなー!いやあやっぱり酒っていうのは何も考えねえで楽しく飲むのが一番なんだよ!これで死んだら俺は本望だね!ローズもそのうちこのうまさが理解できるってもんよ!
酔っぱらい特有の大げさなジェスチャーと大きな笑い声と共にまたもや頭を叩かれ、いつも無愛想な”彼女”は今度こそ憮然としているに違いない表情で、発した。






「理解不能」








おわり!


攻略本読んでたら、T(以下略)ったら女の子だそうで!
うわーうわーそーれーはーイイね!と食いついてみました(聞いてない)。メカってみんなかわいいですな!ラビットもBj&Kもみんないっぺんに仲間になれば良かったのに!(ムチャ)

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