ことば



「なぁなぁ、アルさあ」

「なんですか?」

「ナイトハルトってお前の姉ちゃんの婚約者なんだろ?」

「はい!そうで…ど、どうかしました?」

「こう言っちゃなんだけどよ…どこがいいんだ、あいつの」

「で、殿下は立派な方ですよ!?」

「いやそうじゃなくてさあ、政治とかそういうので立派かもしれねえけどさあ、なあバーバラ」

「そうよねぇ。スカーブ山一人ハイキングとかは、どうかなって思うわねえ」

「あーそんなことしたって言ってたなあそういえば」

「途中でくたくたになってどうやって帰ってきたか覚えてないとか言っていたな」

「ムチャしすぎ」

「だよな」

「ねえ」

「成人の記念に行ったのなら、今のアルと同じくらいだったわけね」

「やばいやばい!ほんとムチャしすぎだろ!」

「というか、今あいつはいくつなんだ」

「30くらいじゃないのかい?」

「なんだ、俺と同じくらいじゃねえか!」

「おっさんは老けてるから比べてもしょうがねえよー」

「言ったなコノヤロー!」

「あ、でもでも、カヤキス、じゃなかったナイトハルト殿下いい人だよ。モンスターから私のこと助けてくれたし!」

「ああ、そんなこと言ってたね」

「うんうん。人さらいからも助けてくれたし、そのあとクリスタルシティのお城にもつれてってくれたし、国王様にも会わせてくれたし、ええとそれから温かいお水にも入れてくれたし」

「なんだいそりゃあ」

「ええとね、オフロ?」

「お風呂、入れられたの?」

「そのあと皇帝に謁見、か」

「それでそれで?」

「国王様から昔のローザリアの偉い人とタラール族のアイシャって人がラブラブだったよっていうお話聞いた!」

「なんか、自分の嫁さんを親父に紹介しに行ったみてぇだなあ」

「きまぐれにしては、やりすぎね」

「しかも相手は草原でたまたま発見した幼女だ」

「ギャーグレイ!その言い方マズイ!マジでマズイ!」

「ねえねえバーバラ、ようじょってなあに?」

「可愛い女の子ってことよ。ところでアイシャ、それはいつのこと?最近?」

「うん。ジャミルとウハンジさんのところで会った前の日」

「ということは、イスマス陥落前日か」

「ということは、アルベルトのお姉さんにプロポーズした日ね」

「プロポーズする前に」

「幼女を父親に紹介ね」

「み、みなさん誤解しないでください!殿下はそりゃ少しというかかなり衝動で動かれることがありますけど!そういうことに関しては本当に奥手な方なんです!その日も姉にプロポーズしに来るだけだというのにイスマスに来るまで悩みに悩んで早朝に出発したのに夕方に到着されたくらい、奥手な方なんです!」

「ローザリアからイスマスなんて、馬に乗ったら二時間もかからないじゃないの!」

「早朝に出たものの、決心が付かなかったのでしょう。だから行くか行くまいか悩んでいるところに偶然アイシャを見つけて、どうせならクリスタルシティを見物をさせよう、どうせなら陛下と謁見させようと現実逃避なさったに違いないんです!あの方は姉と会っても何を話すわけでもなく、隣に黙って座っているだけで満足されるような方なんです!どうか、どうか誤解しないでください…!」

「…で、アイシャ。あんたいつナイトハルトと別れたんだい?」

「お昼前には、お家に連れて行って貰ったけど…」

「もう一度言います、到着されたのは、もう日も沈みかけた 夕 方 で し た !















「…」
「……」
「……………」













「あのさあ、アル」

「なんですか?」

「そこまで聞いといて、悪ぃんだけどさ」

「はい」








「フォローになってない」



アイシャを連れ帰る暇があるならディアナを攫っちゃいなさいよ、という…(言葉を濁しつつ)