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みつめる | ||
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ナイトハルト殿下が、この危機にあたって何もせずに傍観なさるなど私には信じられません! 騎士団領の使者の悲痛な訴えがクリスタルパレスに響いた。 時は勇者と呼ばれる者達が、サルーインとの決着をつけるべく最後の決戦に旅立った直後。 徒党を組み、エスタミルに襲いかかった魔物達に対するべく、古き騎士達はクジャラートに協力を惜しまなかった。 しかしそれでも、数知れない魔物を相手にする中で、敵対している国々にも協力を仰ぐしかなくなってしまったのだ。 南のバファル、北のローザリア。 これまでのいざこざを全て忘れて、協力して欲しいとは虫のいい話ではあるとは思う。 しかしそんなことを言っているときではない。世界の危機であり、政治などの問題ではないと彼女は涙ながらに訴えた。 早くしなければ、大切な人たちを失うことになるかも知れない彼女の言葉は悲痛そのものであった。 しかし、皇太子は直ぐに動こうとはしなかった。 使者の少女の叫びもそのままに、彼はしばらくの間考えた。 出兵した場合の利益不利益のこと。 これからの帝国軍の動きのこと。 そして勇者達の一人である未来の義弟のこと。 その思考が一つの答えを導き出そうとしたとき、ふと、鋭い視線を感じた。 それは正面に項垂れて懇願する使者ではなく、自らのすぐ隣から。 見やればそこには婚約者。彼女はただ、真っ直ぐに男を見ていた。鋭い目線を逸らすことなく、瞬きもせず。 そして、静かな声で彼を呼ぶ。 「殿下」 その目はただ、言っていた。 言葉よりも雄弁に。 この非常時に何考えてるのすっとこどっこいいえ分かりますわあなたがこんな時でも政治だのなんだのというもので頭がいっぱいなことくらいは!けれどあの泣き虫アルベルトでさえ戦っているのですから私たちが戦わずにどうするのですかあなたが戦わないと言うのなら 「私だけでも」 そこだけははっきりと口にして、姫は玉座の横から歩き出す。それはどこまでも堂々として、この城の主が誰だか忘れてしまいそうになるほど悠然と。 そして使者である少女の方に手をかけ、ひざまずく。 驚いたのは周りを囲む兵士達、そして使者コンスタンツ。 瞳に憤りを映し、皇太子を見上げている彼女はどんな処罰でも受ける覚悟でその場を動いたのであろう。 そしてそれでも何も声を発しようとしない男の目の前でその覚悟の証として、左手に輝く指輪に手をかけた。 それはいつぞや渡した唯一の、そして彼にとっては絶対の、婚約の証。 最終忠告。 それは女から男への最終忠告であった。 そのような根性の座らぬ方は、こちらから願い下げです 実家に帰らせていただきます 実際結婚もしていないし、彼女実家はサルーインの住処となっているのだから彼女がそんな思いで指輪に手をかけたのかは分からない。もしかすると、そんなことは微塵も思わず、ただ手が指輪にかかっただけかもしれない。 しかし彼には少なからずダメ−ジを与えることとなった。 このままでは、逃げられてしまう! 「使者殿、皇帝陛下に使いを出すことにしよう。兵をひかせてもらう」 慌てふためいて、突然態度を変えた皇太子に使者は首を傾げつつも、ありがとうございますと頭を垂れた。 そんな彼女を励ますかのようにかの婚約者殿はその肩を叩き、あなたの勝利ね!と微笑んだ。 誰の勝利であったのか、いや、誰が敗北したのかということは、男は黙っていることにした。 |
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ディアナは指輪をつけているらしいという話を耳にしてから彼女婚約指輪装備がデフォルトとなっております(いいのか)。 だからって指輪ネタばっかり! |
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