かの人の後継者

コロマルの散歩から帰ってくると、なぜか目を輝かせた後輩達に囲まれた(良く見れば後輩じゃないのも混じっていた。なにやってんだお前ら)。
先輩お誕生日おめでとうございますこれ俺たちからの気持ちです遠慮せずどーんと受け取ってくださいよ!とそれぞれが小奇麗にラッピングしたなにかを押し付けてくる。小奇麗にラッピングはされているものの、なんだか大きくかさばるなにかを。
誰だ。誰がバラしやがった人の誕生日。いや、聞かなくても分かる。





はいどうぞと差し出されたその中の一つをまじまじと見つめてみれば金色の包み紙の間から覗く「月光館学園行き」の文字。学生のほとんどが電車を使用するためほとんどの生徒の記憶から抹消されているけれど、巌戸台の駅前にそびえていなくてはならないのではないか、これは。電車と待ったときとか乗るだろバスにも。



学校サボってアウトローな先輩にピッタリということでひとつどうぞ。先輩の武器鈍器ですし。このあいだプロレスをみんなで見たんすけどねそれがなかなか格好良くて。
無駄にきらきらと光を乱反射させる後輩たちの瞳に見上げられ、彼は言葉を詰まらせる。こういうのに弱かった。なんだこいつら純粋そうな目しやがって腹の奥では名に考えてんだかわかんねえやつらばっかりなのに特にはしっこの前髪長いやつ。


折れた折りたたみ式椅子、錆びたポスト、タイヤのパンクした三輪車。


どっから拾ってくるんだよ。明らかに粗大ゴミだろこれ、と口を開こうとして視界の端に入ったのは駅前商店街の喫茶店の人形。ちょっと待て。


犯罪だろ、酔っ払いが持って帰ってきたって窃盗だろ。思わず手に取れば、それは私のチョイスだ!と嬉しそうな声が上がる。寮長にして会長にして部長。
ああお前は初めて会ったころから全く変わらないな。それは普通喜ぶところじゃない。










これもどうぞと渡された最後の包み紙を開けてみると銀に輝く大きなパスタ鍋が一つ。防錆加工。すばらしい。どうしようか普通に嬉しいぞこれは。いや待てこの流れでこのでかい鍋、ということは。
プレゼント攻撃を受ける男の周囲に群がる少年少女たちは笑っていた。
楽しそうに笑って、同音異句で言葉を発した。


いやあパスタ鍋で敵をなぎ倒す先輩見てみたいなあ。


















なあシンジ、誕生日って楽しいなと昔なじみに笑いかけられ、しかもその視線の輝きが昔から変わらないそれであることに彼は頭痛を覚えた。ああ馬鹿だお前らまとめて全員。









みんな取り付かれたように一丸となっています。
不真面目なときは一致団結。
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