全員集合!との号令がかかり くつろいでいるところすまない。これからのことについて相談したいことがある、と女帝は言った。 真田先輩がいませんけど、と後輩の一人が発言したが問題ない、とあっさり切り返された。
「問題ない。この場には呼んでいないからな」
戦友達は顔を見合わせねえねえこれからのこと話すのにいなくていいの?二大トップのひとりじゃないの?まあ桐条先輩が頂点で、その下にいるって感じだけども。この集団での副班長の位置ですよね?たまに職務放棄して大暴走するけど、必要じゃないの?とそれぞれ心の中で考えたが、口には出さなかった。 それぞれ立場というものはわきまえている。今は黙って話を聞くべきときであろう。
女帝はみなの沈黙を納得ととったのか、力強く口を開いた。 一人ひとりの顔を見つめ、厳かに。
「これから、食事は当番制ということにしたい」
みなの意見が聞きたいのだが。
「…え。……え?い、今!?今そんな話なんすか!?」
「これからどうしようとか、そういうことじゃなくて?!」
「でも、素敵な考えだと思うなあ」
「目、輝かせてるところ悪いけど風花は作んなくていいからね」
えっじゃあ私の番は3日に一回でいいよゆかりちゃん。毎日作る気だったのあんたはっ!えーなんでなんでゆかりっち。風花の飯ってそんな問題なん?…お、おいリーダー?なんで震えてんのねえ。世の中には知らないほうがいいこともある、なあ乾くん。その通りだと思います。えっなに?俺の知らない不思議な世界なに!?
わいわいと、しかしその提案には疑問を挟まない後輩達を見て、女帝は微笑んだ。 その手には一枚のメモ。 つづられているのは書き殴られたメッセージ。
外食が続くのはよくない。様子を見ていたがせっかく台所があるのにたまにしか使わないのはどういうこった。ここのところ良く使う奴が作るのは料理なんてもんじゃねえ。しかも手本になるべき上級生が毎日肉食ってどうする気だアホか。てめえはてめえで効率重視だか知らないが一人食ってるんだか食ってないんだかわからねえ変なもん食ってるし。ビタミン剤に頼るなよ。野菜を食え野菜を。
最後のほうはただの愚痴にはなっていたが慈しみが込められたそのメモを、彼女はそれを残したものの言葉に従い誰にも見せることはなかった。 そしてそのメモの最後に書き殴られた一言を忠実に守ってやることにした。 巻き込んでしまった戦友としての最後の償いとしてということもあるし、もっともだと思ったからでもある。
頼むからあの馬鹿に作らせるなよ。あの肉食動物に作らせたら最後野菜は精々紅生姜だけだからな。
ああどこまでお前という奴は。どっちが馬鹿だか分からないぞ。 思わず天を仰いだ彼女の目の前で、少年少女たちがいかに殺人料理人山岸風花に夕飯当番の立候補を思いとどまらせるかに全精神力を注ぎ込んでいた。
彼女とその裏にある真意は知らずに。
= 食事当番
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