A.S.K

はっと気がついたら、目の前には金髪碧眼の美女がいた。
なんだここは天国か。



覚醒を確認。お気分は良好でありますか。



焦点が定まれば目の前の金髪美人は良く知る鋼の乙女であることが理解できた。
ああ、そうか。俺は生きているのか。
…いやなんで?


私は一つ学習しました。ものには一つの使い道しかないと理解していましたが、それは大きな間違いです。ご存知でありましたか、荒垣さん。


なにが、なにを?何の話を?と思っていると、わたし、こういうときを知っております。"百聞は一見にしかず"であります。
どうぞ、と差し出されたのは小さな袋に詰まった歪に丸い粉っぽい塊と、粉砕されたとしか言いようがない塊であったと思われるもの。
なんだ、これは。なんだか妙に硬くて重いが金属でも詰まってるのか。…いやこれはまさか小麦粉

彼の思考が一つの答えを導き出そうとしたときがらりと病室のドアを勢い良く開けて飛び込んできたのは後輩の一人。ここしばらく彼の下で"勉強"をしていた探索担当。


あっ先輩!気がつきましたか!

約3分40秒前の覚醒になります。

ああ、よかった…本当に…!


泣き出す一歩手前の後輩に、自分はこの後輩にここまで思わせるような存在であったかと彼は疑問に思ったが、彼女の続けた言葉でようやく話が見えた。


まさか私の作ったものが人の命を助けるなんて思っていなくて…


その視線の先には鋼の乙女の掲げる粉っぽいもの。おそらく、いやこれは間違いなく小麦粉製だ。世界はそれをクッキーと呼ぶ。彼はかの少年に呼び出されたときにこれを後輩から渡された。確かあのときの台詞は夜食にどうぞ、だった。初めて作りました!それっぽくなりましたよね!と恐ろしいまでの笑顔で半強制的にそれをコートの胸ポケットに入れた。そして寮を出て、そして。


わたし、これは食べ物ですのでアイテムだと思っていました。しかしその実はアイテム欄ではなく、アクセサリー欄なのであります。効果は対射撃防御大。


おいこらそこのメカもっともらしくうなずくな、そんなはずあるか。原材料小麦粉で助かったってどんな展開だよ俺にどんなキャラクターを付与したいんだよ。大体鉛玉の威力を少しでも殺すって一体全体何をどうすれば作れるんだよ。メルトダウンでもさせたのか。元は小麦だぞ!小麦!


あ、新作です。どうぞ?と笑顔で受け渡され、いやだからなにで出来てるんだよこれは!そもそも食べ物作って装備扱いされてなんとも思わないのかだとか言いたいことはいろいろあったのだが彼は全てを飲み込むことにした。
なんだかんだいって、根本的なところでいえばこの謎の菓子で助かってしまったのである。隣で治療経過を事細かに話すメカの話を聞けばなにやら回復系のペルソナを大終結させて3日3晩における戦いが繰り広げられたそうだがなんにせよ大元はこれなのである。
どうにもこうにも歯切れは悪いが生き残ってしまったものはしょうがない。

彼はしぶしぶなぜだかずっしりと重く、おかしなくらい硬いなにかの詰まったその小さな袋を受け取った。
焦げ茶色。ほんのりと香るカカオ。


…装備に味は関係ないだろ、山岸。















"装備に味は関係ないだろう"ですか、なるほど。









おいこらポンコツ俺の言葉まで翻訳すんな。





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妄想@アイちゃんは動物(っぽいもの全般)の心が読めるだろう。
妄想A風花ちゃんはチャーリーズエンジェルの一人並に料理が出来ないだろう(マフィンが爆弾になる程度)
妄想Bチドリンがどうにかなるならニット帽もどうにかなるだろう(ここが一番高濃度妄想)
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