封印の巻物


彼が昼の怠惰な眠りから覚めてみれば、窓の外は空一面橙色に覆われており、
目の前は床一面大小様々な段ボール箱が積み上げられていた。
そういえば引っ越してきたばかりだったころのこのような有様であったことを思い出す。どこから湧いたのかと男は額を押さえる。もしかして、彼女の実家においてこさせた無駄なあれこれをそれが彼女の実家側としては我慢ならず「いいかげん引き取りやがれ」と送りつけてきたのだろうか。
それは、逆らえない。

最早ポケットには存在しないライターを無意識のうちに探しながら彼が状況に飲まれていると。すっごいでしょう!と元気の良い声が寝室のほうから響いた。姿は見えない。凄いのは分かる。嬉しくはないが。


「この間クラス会があったでしょ」


あった。確かにそれはあった。クラス会という名の葉佩探検隊メンバーが一同に会したものが。彼はにアルコールを散々飲まされ彼女は自ら進んでアルコールを摂取し結果的に両方とも前後不覚になりかけた悪夢の一夜。そこで彼女は最近の生活について尋ねられあっけらかんと答えたのだという。



「甲太郎君はあたしが目の前で着替えてても全然平気だよ」

「人に言うなそんなこと」

「そしたらみんなが心配してくれてね、皆守の奴ヤバイぞ倦怠期だぞっていうかこれまで先輩がまともに人と一緒に生活できたことが不思議だぞって」

「悪口じゃねえか。っていうか夷澤あとで覚えておけよ」

「で、皆守にときめきを取り戻そう委員会が九ちゃんの手によって発足されてみんなが色々送ってきてくれたってわけ」



もしや、このダンボールに書かれた謎のアルファベットMTIは、と彼が戦慄しているとひとつの箱が開いていた。恐る恐る除くと中には医療の天使たちの戦装束。



「…………で、これか」



あとねえ凄いんだよ今流行のお手伝いさんとかフライトアテンダントだとかと楽しげな声に反して、彼はあさってに視線を飛ばした。なんでもいいがなんでこんなもん持ってるんだあいつら。
思考も遠くに飛ばしていた彼に、ようやく寝室から彼女は現れた。
じゃん!これが九ちゃんのお勧めです!と飛び出てきた彼女のそのいでたちは。



…ああ胸元のリボンが眩しい。




途端突風のように蘇る。あのときの自分はいったい何を考えていたのか。自分が何をやらかしていたのか。しかしあの頃がなければ今のこの状態はありえなく。なにがどうなって今自分はここにいるのか。まざまざと蘇った。絶句。
ときめきでは決してないがそれに近いような遠いような気持ちが津波のように彼に襲い掛かる。同時に襲い掛かるのは沈黙の嵐。
目の前には満面の笑みでそこに立つ彼女(なぜ髪型まで当時のものにしているのか!)。



「えへへー。びっくりした?びっくりした??」

「…………驚かせてどうするんだよ。ときめきはどうしたんだよ」

「甲太郎くんがびっくりしてくれたらあたし的にはミッションはかなりコンプリートなのではないかと」



九ちゃんがね、甲太郎くんは絶対これに弱いからって言うから実家から持ってきちゃったよ。いやあ懐かしいよねえいつもだるいー眠いーって言いながら意外とつきあいよかったよねー。意外と紳士だし。あたし良く考えてたら結構甲太郎くんのこと好きだったなあ。…ど、どうした皆守甲太郎!顔が真っ赤だぞ!衛生兵!衛生兵!
ああ、頼むからその格好で駆け寄らないでくれ。しかも笑顔で。ほかのやつらが何を考えているんだかは知らないが目の前の彼女のことだけは分かる。こいつ楽しんでやがるな。何を着ても構わないからその服だけは今すぐ脱げ頼むから。…あと今後そういう趣味に目覚めるなよ。言葉には出ない願いを男はただただ祈るしかない。

そして歯の間からなんとか言葉を搾り出した。







「…満足か」

「わりと!」






いつも冷静な人が耳まで真っ赤にして照れるMOEでした!
皆守さんそんないつも冷静じゃないですけど(笑)(本末転倒極まりない)。

皆守氏は物凄く淡白そうなんですが弱点は高校時代のあの3年間(むしろ転校生がやってきてあとの怒涛の時間)だと思います。今考えるぞ恥ずかしいなあ副会長。わはははは!(酷い)
途中までやっちーがナース服で登場してましたがいつのまにかこんなことに!楽しかったです(笑顔で)

リクエストありがとうございました!!