末は博士か 大臣か


彼が今回も無事(と言いきっていいものかは毎度の事ながら悩むことではあるが)依頼を解決し、一気に疲れを放出させながら事務所に帰ってくると、自称有能助手である彼女がキッチンに立ち、なにやら鍋をかき回したり、野菜を刻んだりと忙しそうにしていた。感謝の言葉を述べる依頼人やら、某そうめんしか食べられない刑事に彼が捕まっている間に『それじゃっ!』と片手を上げ、あっさり帰った彼女だったが、まあご飯作ってくれていたのなら、と彼はこれまたあっさり納得した。例によって味噌ラーメンだろうと踏んでいたが、事務所中に漂うスパイシーな香りがその選択肢をあっさりと否定する。え、なに?真宵ちゃんがカレー?



「どうしたの真宵ちゃん。持ちメニュー増やしたの?」



その言葉に彼女はおかえりーと振り返り、ふふふ、といかにも怪しげな含み笑いを持って答えた。
その右手にはおたま。左手はキッチンミトン。首にはタマネギ防御のためか水泳ゴーグル。



………ほんとに怪しいよ、真宵ちゃん。





「真宵ちゃんがいつまでたっても成長しないと思ったら大間違いだよ。なにせレストラン経営者だからね、将来の夢」

「将来の夢って、霊媒師はどうするんだよ」

「うーん、天才霊媒師の美味しいお店…どう?」

「いやだよ!なにその曰く付きっぽい店!」

「あっそれだ!おいしさのあまり取り憑かれるレストラン…どう?」

「いいんだ、それで!?」





想像してみる。
怪しげな看板。
怪しげな外装。
怪しげな店内に、怪しげなBGMの中、ゴーグル装備の真宵ちゃん。
しかもメニューは普通のカレー。





「…儲からないと、思うな」

「ええっそうかなあ。じゃあじゃあ、なるほどくんなんか副業考えてみたら?」

「例えば?」

「弁護士兼、玉子屋さん、とか」

「なんだよ玉子屋さんって!?」

「今依頼人先着10名様に産み立てタマゴ1パックプレゼント!」

「何に使うんだよ、タマゴ。裁判に」

「じゃあ魚屋さんはどうかな!?無事依頼解決できたら市場直送本マグロプレゼント!」

「大体、何でさっきからなまものばっかりなんだよ!?」

「そうだなあ…事件もなまものも鮮度が命!ってキャッチコピーで売り出すのはどうかな」

「それらしいこと言ってるけど、意味分からないから!」





なんでもいいからカレーに集中する!鍋焦がしたらそれ一個しかないんだから真宵ちゃんの自腹で新鍋買ってきてもらうからね。えええなるほどくんそれはちょっとケチくさいよ!?男ならどかんと鍋の一つや二つ。いいから!

いつもの事ながらなんでここまで意味分からないことを力強く断言できるのかなこの子はと頭を振りながら、彼はソファーに深く腰掛け、彼女の”作品”が出来上がるまで待つことにした。
なんだかんだいいながら最近彼女との掛け合いのテンポが良くなってきているかも知れない、などと考えながら。










「あ、そうそうなるほどくん。これ、カレーじゃないよ」

「え」

「カレーラーメン!」











「…………僕、今日外で食べてくるね」

「な、なんでっ!?」


物凄く元気な女の子とその元気さに毎回振り回させる男の子のコンビ MOE でしたー!
久々逆転裁判ですが、なんというかまあ、

カレーラーメンはおいしいですよね(そこかよ)

リクエストありがとうございました!!