ツーと言えばカー ハイと言えばイイエ


「こんにちはーヴェルナーさん」

「よう、エルザ。こんな時間からどうした」

「ヴェルナーさんこそこんな時間からお店開けちゃってどうしたんですか!?まだ午前中ですよ!?私ほんとは用事なかったのに思わず入っちゃいましたもん。…はっまさかそれが作戦じゃ

「客引きでわざわざそこまで考えねえよ」

「ですよねえ…やる気ないですもんねえ…」

「やかましい」


朝も早くからケンカ売りに来るなよお前はとだるそうに言われ、エルザは頭の中を疑問符いっぱいにした。この店主、いつもいつもだるそうだが今日はいつにもまして力がない。言葉に刺が少ないことからも本当に眠いのだと言うことが分かる。
そこまでしてどうしてお店を開けるかな、と首を傾げるエルザに、店主は疲れたように首を振り、


「そろそろ来るぞ」


とこの店唯一の外界との接点である扉をやる気なく指さした。
この店で、来る、と言ったらかの女傑しかいなく、






「やっほーヴェルナー!おじゃましまーす」






エルザがまさか、と思ったその瞬間、外から弾け飛ぶように扉が開き、店主とは正反対のテンションの客が飛び込んできた。



「…ほんとに来た」

「あっおはよーエルザ!午前中にここで会うのは初めてじゃない!?」

「私もそう思うわ。っていうか午前中ここが開いてたことが初めてだわ」

「それがねえ、たまにやってんのよ。不思議よねー。もっと真面目に労働して欲しいわよねー」

「お前もケンカ売りに来たなら帰れよ。買わねえぞ、そんなもの」

「あはははは本音なんだからしょうがないじゃない!あっそうそう今日はね、あれ買いに来たのよ、あれ」



飛来する皮肉も軽く迎撃し、えっとメモどこやったっけとポケットをさぐるリリーに (さすが) と何がさすがなんだか自分でも分からない称賛を送りつつ、エルザは笑ってその背を叩いた。



「やだ、リリー。まだそんな年じゃないでしょ!」

「うっかりに年は関係ないのよ、これは本人の資質の問題だもの!」

「それは欠点って言うんだよ。ランドーならそこの棚。アードラの羽は後ろの箱、グラセン鉱石は足下の袋」



彼はきっちり嫌味は言いながらも彼女がひとことも声を発する前にあれこれと指示を飛ばしてみせた。リリーが我が意を得たりとうなずき、それもとってと指をさせば、彼はだるそうに立ち上がり、背後の本棚からほこりを被った本を一冊引き出し差し出した。
その流れるような一連の動き。
何人たりとも理解の出来ない言葉の応酬。



「ありがと!」

「今度来るときこないだのあれ持ってこいよ」

「はいはい了解!じゃ、急ぐからまたね!今度ご飯でも食べに行こうエルザ!」

「え、ええうん。それじゃね」



後は見慣れた状況。
外へ飛び立つかのように駆けだしていく彼女の後ろ姿。
残されたのは見送りは右手をだらりと挙げるだけ、顔を上げようともしない店主と
時間に取り残されたかのごとき客。

ようやく動き出した彼女は恐る恐るカウンターへと目をやり、やはり恐る恐る尋ねた。







「……………なにかの超能力ですか」

「要は慣れだ、慣れ」









『アレは』『ほら、コレだろ』みたいな熟年夫婦っぽいやりとり
というMOEでしたーッ!(テンション高く)。なんていうかいつも通りの二人になりました(ウワァ)。ツーカーの仲というのはいいですね。もう熟年通り越して老夫婦みたいになっちゃいましたがこの二人(あれどこやった?)(おじいさん眼鏡ならかけてますよ)(おお、そうかそうか)

リクエストありがとうございました!!