オアシスに謝罪

なぜ今自分がここに立っているのかというと交渉ごとだのなんだのをまとめるのにうってつけな人材だからです。それを上手く利用して、上手く利用されて結果的にはみんながよければ全てよし。それでいいじゃないか。なんで黙って利用されるのかって?それは偽善でしかないけど罪滅ぼしです。ロードレイクの人たちへの。根本的な責任はどこにあるのかは今となっては分からないけど。今まで税金でただ飯食らってた身分としては、税金を納めてくれていたところには感謝しなくてはいけないのに、そこを問答無用で破壊してその後あんな生活をおくらせておいて、そこへのうのうと偵察なんかに行ったんだ、なんで殺されなかったんでしょうね僕は。僕が逆の立場ならのこのこ現れた馬鹿な王子を誘拐するなりなんなりして改善を要求するよ。あの町の人たちはいい人たちなのか、もうそんな力がなかったのか…。最悪殺されることを予想して行ったんだけどなあ。殺されてもいいから派遣されたんだと思ってますよ、ええ。それが母の意志ではないとしても。

…そもそも将来あの国を統べると決まっている者しかあの城にはいてはならなかった。王族だけれど王位継承権がない人間は、今までいなかったんだと聞いているし。ええおっしゃる通り、この血筋には一度も男が生まれたことがなかったことになってる。そんな馬鹿な話はあるはずはない。何年続いてると思ってるんだ。確実に、昔は絶やされていた。いなかったことにされていた。僕はそもそもそういう生き物だということです。今はなぜ生かされてるんですかね。







…なんちゃって。こういう卑屈な考え方をしている奴が軍主の反乱軍でよければどうぞ参加してください。あなた方が参加するもしないもあなた方が思うままに。




淡々と、大真面目な表情でそれだけ言うと、世の中の反乱軍の長を担う王子その人は押し黙った。それ以上は何も説得工作はする気がないらしい。軍師となるべくスカウトされた女はそれに対し、口の端に笑みを浮かべて答えた。ああ、なにがこの青年をここまで動かすのだろうか。



あら、王子。それだけ分かっちゃってて自ら動いちゃうんですから、お人よしですこと。



彼女の言葉に、今度は青年が笑みを浮かべた。あはは、おかしな風にひねちゃったんですよ僕は。城に住む人々とは違って。
ま、結局のところただ飯ぐらいの戯言ですからお気になさらず。





あなたが協力したいと少しでも思ったのなら幸いです、と矢張り淡々と続ける青年の手を、女はとることにした。どうせここに閉じ込められていてもなにもすることもないのだ。
天才とうたわれた軍師はどうせなら負け戦側に加わるほうが面白い、と笑顔で返してみせた。



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ひねちゃった王子と、ひねくれちゃってる軍師。