今日の特報芸能ニュース

※漫画版エスカデ編。




彼女の目の前には激しく泣き声をあげる男の姿があった。人目をはばからず(この状態ではばかるべきなのは彼女の視線くらいなのではあるが)、わんわんと泣いた。泣きに泣いていた。







子供たちの首も据わり一人で立ち上がって歩きまわれるようになったため、彼女は世話になった彼のもとに挨拶にやってきた。驚くほどの大歓迎を受け(この家の住むものたちは独立独歩に見えて人好きの寂しがり屋のようなのである)、近頃どうなのよ、とこの家の主に尋ねられた彼女はただ正直近況を報告したのだが、その途端彼の表情がぴしりと凍りついた。え、嘘だろ、そんな酷いの?彼女にとっては何が酷いのか分からなかった。なにぶん、一緒に子供たちを育てている幼馴染の男は昔から口ばっかりで大したことをしないのは彼女は十分承知していたのである。彼が命をかけて全力で取り組むのはかつて幼馴染であった少女に関する事柄のみ。ほかの事はからっきしであることはこれ以上なく分かりきっていた。

しかしそのあたりは勘違いと思い込みとそれに伴う大暴走を根本として生きる男、表情をこわばらせたまま恐る恐る彼女に尋ねた。




「なぁダナエ…それはなにか、俗に言うダメ夫と、そういうことか?」




ああダナエ!君が朝早く起きて一日中家事をしてもあの馬鹿なんにも感謝しないでむしろ当然だという口ぶりで酒を浴びるように飲んで博打に酒に女遊びの生活なのか!

いや、むしろ家事をメインでやってるのはその男のほうで、私のほうが出稼ぎに出てるようなもの、むしろ夫も何もかの男とはハウスシェア相手である以上の関係は全くないだと彼に言っても、スイッチが完全にオンになってしまった彼には何の言葉も通じなかった。
そして今に至る。










師匠のスイッチに反応したのは彼の弟子たち。昼間のワイドショーで鍛え抜かれたその知識を全開にし、一人は湯飲みを落っことし、一人は魔道書をぶん投げて同時に叫んだ。




「えええええダナエさんお茶がぬるいって湯のみ投げられたり、料理がまずいって机ひっくり返されたりしてるんですか!?」

「いいえきっとそれより酷いわ!サッシのところのホコリにケチつけたり、子供の給食費に手をつけてパチンコにいったりするんだわ!!」

「なにいいいいいいエスカデの野郎いい気になりやがってあのスパッツ男めが!奈落の底に埋めてきちゃえばよかったぜ!!」

「師匠っ!これは成敗です!成敗しかありません!」

「よっしゃ任せとけ、。俺の一撃必殺築地三枚下ろしで奴を頭髪と本体とスパッツの三枚にきっちりおろしちゃる」

「サボテンくん2階から師匠の獲物持ってきてー。いつものじゃなくて下ろし用の出刃」




泣いたり怒ったりと大興奮の住人たちを前に、ダナエの腕の中の一人と足元を歩き回っていた子供たちは何が起こったのかと一瞬ぽかんとしたものの、けらけらと笑い出した。ああその楽しそうなことときたら。幸せそうねえあなたたち、あなたたちが幸せだと私も幸せよ。それにしてもマチルダ、笑いすぎ。ひきつけおこしかけてるじゃないの。




子供の背をさすってやりながら、後からやってくるはずの男の身に訪れる衝撃を思う。
彼女は茶を入れなおされた湯飲みに手を伸ばし、ああエスカデ、私は庇いはしないわよ。最終的には自業自得なんだものと結論付けた。一緒に暮らし始めてのあなたに関しては多少フォローはできるけど、それまでのあまりにも暴れまわった行動が今の誤解を生んでるんですからね。
一応かの男が(薄っぺらいとはいえども)家を建て、食事を作り、掃除をしている現状を省み、奈落送りになる前には止めなくちゃ、と腰元のヌンチャクに目をやった。







最終的にはヒステリックランで収拾つけます。
子供2人はダナエに物凄く懐けばいいと思います。「あの人はしょうがない」と3人に放置されるエスカデ。そしてなんだかんだいってこまめに働くエスカデ。
…擬似家族って素敵ですなあ(遠い目で)