おちこんだりもしたけれど、私はげんきです

今日という今日は怒ったわよ!返しなさい!と彼女はその身軽そうな姿のどこに隠し持っていたのか凶悪な刃の光る手斧を振り上げた。
うっかりいつものように軽口を叩いてしまったのは先日悪魔の親玉を倒した"世界を救った男"である。"なりゆき"と"ノリ"で世界を救ってしまった、が正しいが周囲どころか本人自体世界が危機に瀕していたことすら知らない。彼の思考からすればただただ悪い奴らをぶっ飛ばしていただけである。詳しく言えばMで紳士だったりSで変態だったりかなりキちゃっているバンドメンバーだったりゴリラだったりが目の前に立ちふさがったのでぶちのめしただけである。



「大体どうすんだよ俺からゴッドハンド奪ったら。お前がやんの悪魔退治」

「うん、それもいいじゃない?」



明るい返事と共に決して軽そうには見えない手斧がぶうんと風を切った。獲物の先には神の両手を持った彼その人である。その光をはじく鋭い金属をスウェーで危機一髪よけながら彼は軽口を叩くことをやめない。



「そんな日が来るなんて俺は悪魔に同情するね。この世の終わりだろ」



はじめからあの三馬鹿トリオやっつけられただろうお前という言葉を無理やり飲み込み、消化不良になるんじゃないかという顔で彼が言うと、彼女はそれを当然のように返した。彼女にとってすべては当然で必然。ああ空は青いですね。太陽は毎日昇りますね。あなたは本当に頭が悪いですね。



「良く分かってるじゃないの」



人生の曲がり角について本気を出して考え出した彼の肩を手斧の柄でとんとんと励ますように叩きながら彼女は言った。あなたに世界が救えたんだもの、私だって世界のひとつやふたつ終わらすことくらい楽勝よ。


ああそうですか、そうですね、そうですとも!頼むからその手斧を振り下ろさないで下さいお願いですからと彼は祈りの言葉を吐き出しつつ"自分が本気を出して喧嘩できない唯一の相手"という意味では彼女が世界で一番なのだということを噛み締めた。(一番おっかないまたは一番強い、または一番理屈が通じないという意味で!)






ゴッドハンド大好きです。
PS2のゲームでは5本の指に入ります。