なによ、オバサンのくせに!と少女は噛み付いた。それが負けず嫌いから来る負け惜しみであることは彼女は承知の上で、しかし噛み付かずにはいられなかった。ほんの数百年…いやもっとかもしれないが、ちょっと年上だからといって何をあんなに落ち着いていられるのか。一応こっちは現役OZであり、しかもその現役OZが本気出して対峙しているのであるからもう少し慌てふためいたりしろっていうの。あの猪突猛進馬鹿はともかく、同じ女としてこの落ち着きっぷりはなんなのよ!
彼女は怒りをほとばしらせて言葉にならない咆哮を放ったが、そんな様子に少したじろいだのは"出来損ない"の少年だけ。彼女よりずっと年上の、元OZの二人はそんな彼女の様子を面白そうに眺め、顔を見合わせ


よりによって笑った。





おーおー、若いねえ。アルミラのことをオバサン呼ばわりするなんて威勢のいいこった。

若いというのは無鉄砲でいいな。私も始めて呼ばれてなかなか新鮮だ。

じゃあなんで俺のことおっさん呼びしねえんだろうなあ。

彼女のまわりは男性年長者で固められているからな。お前はまだ若い方なんだろう。

おお、なるほどな。まー確かにガルムのおっさんに比べたら俺も若い方だよなあ。

私にもあんな頃があったのだろうな。

お前があんなふうに誰かに突っかかるなんて想像つかねえぜ。見てみたかったな。

ああいう純粋に噛み付くということは出来なくなってしまったな。自分に素直に怒り、自分に素直に泣く。生物として当然の権利だ。

俺がお前の代わりにやってるじゃねえか。

頼んだ覚えはないが、礼は言っておこうか。




見た目は若者だが、数千年を生きる二人はああ自分達にもああいう時代があったなあ。しみじみと首を振り



若いねえ。

若いなあ。



優しい視線を彼女に向けた。
まさか噛み付いたら優しく返されるとは思っていなかった彼女は大いにうろたえた。
ちょ、ちょっとなによ!なんなのよあんた達!なんでそんな眩しそうな目でこっち見んのよ!何で嬉しそうなのよ!ちょっと年上だと思って…え、み、見ないでよ!見ないでってばぁああああ!!





いたたまれずその場から飛ぶように駆け出す彼女を見て、あっけに取られていた少年がはっと我を取り戻す。ああ行ってしまった。戦わずに済んだのはいいもののこんな勝ち方っていいのか。…まあ、いいか。余計な怪我をお互いしなくて済んだということで。
少年はそれにしても、と戦友達を振り返る。そして言った。





…ねえ、二人とも。

おう。
どうした。

…あんまりからかったらかわいそうじゃないかな。





二人は顔を再び見合わせ、見計らったかのように





なにが?





声をそろえた。









敵にまわしたら恐ろしいコンビネーションアタックだ!戻る