666



魔界という場所は話に聞いていた通り薄暗く、しかし怪しげな光が揺らめき、瘴気が溢れ周囲は悪魔が溢れていた。でもって目の前に倒すべき相手がいた。それに向かって駆けた。その瞬間後頭部に重い一撃。

気がつけば目を開けるのにも苦労するほどの眩しい光。
なんだ、なんなんだ。俺は死んだのか?弟の前であんなに格好つけた手前魔界に落ちたら即死亡とはなさけないだろういくらなんでも。
彼が大の字で倒れたままつらつらと考えていると、起きたわね、と顔を覗き込まれる。その顔は、え、なんでいるんですか。その顔は弟の事務所に飾ってある写真立てにある顔と同じ。ご丁寧なことに服装も同じ。まさか。

彼女は思わず正座してしまった彼にごつんと一撃をくれたあと


こらっバージル!あなたって子は!


腰に手を当て、叱り飛ばした。
間違いない。悪魔も恐れる母の姿であった。
彼女は目の前に堂々とした態度で立ち、一人で魔界に遊びにいっちゃだめって言ったでしょう!と吐き出した。
いや、それはいいのだが、なんでいるんですか。



もうどうしていつも一人で突っ走っちゃうの。ダンテみたいにうまいこと力抜いて生きたほうがいいわよう。無茶してこんなところまで来ちゃうし!母さん心配で出てきちゃったわよもう!

いや、その

それに兄弟喧嘩ばっかりして!ペンダントはひとりひとつずつって言ったでしょ!人のものまで欲しがっちゃいけないわバージル。

いや、ええと

大体ねえお父さんみたいになりたいっていう気持ちはしょうがないとは思うけど、良く考えてみて?お父さんよ?本当になりたい?喧嘩して負けて土下座して謝るお父さんよ?



お父さんよ?

………

はい、じゃあお父さん交代よ。

なあエヴァ。わたしはそんなに駄目な父親だろうか。

私は大好きよ。

なら問題ない。いいかバージル。力ばっかりあってもいいことはないぞ。魔界は面白くないし食べ物はまずいし美人はいない。ないないづくしだぞ。お父さんだってなあ初めはもうやりたい放題楽しくやったもんだがやっぱりいつか飽きるぞ。悪魔達ときたらどいつもこいつもおんなじ様なことしかしたがらないし。魔王はまったくこっちの言うことを聞かないくせに勝手な主張ばかりするわからんちんで、無駄に力だけはあるから始末が悪いし。とにかくバージル、人の世界に戻って楽しくやりなさい。あっちでも悪魔は刈れるし、あっちのほうが出会いがあるぞ。父さんもあっちに出て行ってお母さんに出会えたからね。

まあそのせいで早死にしちゃったけどね。

いいんだよ、長く細く生きるよりも太く短いほうが幸せなんだから。




自分が魔界を裏切ったことも世界を救ったことも、うっかり人間に一目惚れしたことのほうが重要なのか、父よ。いやそれよりなにより死にかけの子供の前でいちゃつかないでください。本気で死にそうです。いや、もう死んでるのか?
反応に困ったのでとりあえず視線をそらしてみればお説教終了!もうちょっと生き延びなさい!と脳天に二撃目を食らわされはっと気がつくと見知らぬ街中で倒れていた。
結局どうしろというのか両親よ。…その前にここはどこですか。





3のエンディング 酷い妄想
うまいこと生き残ってうまいこと生きてたおとうちゃんに説教されればいいです
戻る