「わたしね、考えたんだけど!たまにはアーヴァインから行動を起こすべきじゃないかなって思ったの!」

「…ホッチキスとってくれ」

「あいよ」


学園祭準備に盛り上がるバラムガーデンの食堂に突然やってきた世界の魔女は脈絡など欠片もなく発言した。
その発言に疑問を抱きつつも司令官と今や優秀なSeeDであるバラムの暴れん坊が必死に薄紙で出来た花を大量生産するその手は止まることはない。なぜなら忙しいのである。学園祭も間際に控えた今、一分一秒だって惜しい。

なにせあのガーデン史上最強の実行委員長と噂されるトラビアガーデンからの転校生は妥協という言葉を嫌った。楽しいことのためなら己の限界まで努力せよ、と学内放送で言ったとか言わないとか、それにかの問題児(某風紀委員長)がいたく感動したとかしないとか、とにかく妥協は許されないのである。


アーヴァインが足りない道具借りてくる!と部屋を後にした瞬間、魔法のように突然現れた世界の魔女にはそんな切羽詰った雰囲気も通じないのだが。




しかしかの魔女の騎士は手馴れたもの、手伝うなら話を聞くからと材料を渡し、とりあえず魔女の機嫌を損ねずこちら側に引き込むことに成功した。戦友は心の中で拍手をする。魔女の騎士って凄え。




「あのね、今セルフィって凄く忙しいでしょ?こんなときこそちょっとアクションを起こして気遣ってあげたりすれば、二人の仲進展間違いなしだと思わない!?」

「気遣うねえ」

「こっちも凄く忙しいんだがな」

「っていうかリノア、なんでこいつらをそこまで応援してるんだ?そんなことしなくったって別に仲良いだろ」

「だって話を聞いてると進展が遅すぎるんだもんやきもきするでしょ!友達として!!」

「いや」

「あんまり」

「友達に対する優しさが足りないでしょー!」


あの二人見てやきもきしない!?もうあんなに仲良しなのに告白さえしてないとかいうんだよアーヴァインってば!学園祭なんて凄いチャンスじゃない!どうにか学園祭前にきっかけを作って、で、本番当日に一気に急展開!!を狙ってるのわたしは!



握りこぶしを作り熱く語る彼女に二人は呆気にとられたが、そういえば、と思い出す。
このリノアが恋に悩んでいたときに後押ししたのはほかでもない凸凹コンビ、あの二人であった。
その相手であるスコールはすっかり忘れていたのだが、彼女的には恩を感じているのかもしれない。ただそういう話が好きなだけという説もあるが。




じゃあそういうことで決まりねと彼女は宣言した。なにがどうそういうことで、決定したのかは魔女の騎士とバラムの暴れん坊には分からなかったが、とりあえず逆らわずに肯きをもって答えておいた。君子危きに近寄らず。



あれ、リノア手伝ってくれてるの?ありがとーとその腕いっぱいに薄紙の束を抱えて部屋に帰ってきた青年の今後を、二人は心から祈った。何も知らない笑顔が眩しい。


ああもうなんでもいいですけど、幸せになれますように。







逆らったら凄まじいことになる。戻る