相手の言葉の途中で回線を切り、指揮官が悪いと部隊は全滅するっつうことがわかんねえのかよ!と男は激昂しどかんと操縦席を叩いた。これだから地球の奴らは頭に来る。頭数と人類発祥の地だかなんだかのプライドでものを言う。結局のところ生き残る残らないの境界線になるのは実力だというのに、それを嫌というほと見た自分に見たことがないものが何を分かったような口を利くのか。これだからお偉方はと吐き捨てて、操縦席に体を投げ出した。
本当ならソファーに寝転んで馬鹿みたいにアルコールを摂取してさっさと寝てしまうのが一番だが、今の状況ではそうもいかない。そんなことをしようものならものの5秒で本気で死ぬ。


どうにか今出来る最大限で体を伸ばして唸っていると今まで沈黙を守っていた優秀な戦闘AIが予想外です、と合成音を発した。
男は首を鳴らしつつ言葉を吐いた。


なにが。

このまま単独行動をすると予想しました。しかし現在、相手の様子見で待機中です。

あのな、今突っ込んだら俺だけじゃなくてあの凄まじい地球の誇る馬鹿に使われてる馬鹿どもも巻き込まれるだろうが。無駄死になんてさせてやるかっつうの。

了解しました。予測行動準備解除します。

なんだよ、予測行動ってのは。

ランナーの次に取るであろう行動と言動を予測して、それにあわせて動けるように前もって準備をしていたということです。

あのな、ADA。お前が人の事どう思ってんだかは大体予想がつくが

お前は馬鹿か、ばっかじゃないのか。もしくは阿呆か。



そう次の台詞を予想していました。なにか?

お前な…!

なにか?

喧嘩売ってるなら買うぞこの野郎。

今の状態であなたが勝利できると思っているのなら考えを改めることをお勧めします。

うるせえお前ば

馬鹿か、ばっかじゃないのか。もしくは阿呆か。

繰り返すな!




操縦席の背を叩こうと手を振り上げればびりびりとしびれるような感覚が体中に響き、相手が本気で自分に喧嘩を売っていることを彼は身をもって知った。ああそうか、やれるものならやってみやがれ無機物が生物に勝てると思うなよ。無機物に生かされている生物は、生物の範疇ですか。黙りやがれプログラム野郎が!









連合宇宙軍の特務艦副長が考えを改め通信が入れる数十分の間、彼と彼女が大変不毛な(しかし約一名の人命がかかっている)争いを繰り広げているとは宇宙広しといえども誰一人として知らなかった。




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