神子は、どうして欲しいんですかと男に問いかけた。
男は神子に縋り、一緒に逃げてくれと呟いた。




途端唸るは神子がいつの間に手にしていた大きな柄杓。



「あ、い、いたっ!いたい!いたいいたい!」

「あなたはまたそうやって現実逃避しようとするっ!何考えてるんですかバカ!本当にバカ!それにそんな大事なこと何でもっと早く言ってくれないんですかバカ!!」

「う、うん俺バカだから…うわっいっすっすみませんごめんなさ」

「そんなに悩んでいたなら…!そんなに辛いことがあったなら言ってくれればいいのに…!!おかげで何回運命書き換えたと思ってるんですか!!」

「え、ご、ごめんね?………運命書き換えってなんのこ…ああっご、ごめんなさいごめんなさい!」

「おかげさまで私の能力限界値ですよ!?今ならあの小憎らしい頼朝だって一撃で切り伏せられます!なんなら今殺ってきましょうか!?」

「その前に俺が死んじゃいます…!」

「逃げるなんて考える暇があったら頼朝の腹に一発ドロップキックくれてやるくらいのこと考えてて下さい!」

「え、あ、う、うん」

「返事は一回!」

「は、はい!」









あのさあまさおみくん。どろっぷきっくってなに?と突然尋ねられた天の蒼龍は、またどこで覚えたんだそんなこと、と笑おうとして失敗した。え、なんでそんな真面目な顔してるんだお前。何があったか知らないが、思いつめたような顔をしているこの男はあまり見たことがない。よほどのことだと思う。
彼も目の前の男にあわせ、真面目な顔をして答えてやった。



「譲が望美にいつも食らわされてるやつだよ」



地の白虎は首を傾げて、もう一度、尋ねる。



「飛び上がって手を交差させて突っ込んでくアレ?」

「それはフライングクロスチョップ」

「いろいろあるんだねえ」



ところで正臣君、もしその技のやり方知ってたら伝授してくれない?お礼に夕飯ご馳走するから、とやはり真剣な眼差しで教えを乞われ、現代日本からやってきた青年は望美のやつ、景時をレスラーにでもするつもりなのかと心配をするに至った。
とりあえず練習台にするなら譲にしろよ、あいつは食らい慣れてるからと思いつつ。







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発掘されました。
1と2は地の朱雀枠が好きだったんですがここに来てまさかの地の白虎。