風が吹いていた。
地上は遠かった。
足元を支え力強く羽ばたく神の鳥は、唯真っ直ぐに目的に向かって飛んでいる。
前には武器のチェックに余念がないヤンガスとゼシカがわいわいと何かを言い合っている。





彼は心を決め、何も考えていなさそうな顔で隣にうすぼんやりと座っている戦友に声をかけた。
今しかチャンスはない。






「…なあ、スシ。聞いてもいいか」

「あいよう」

「なんで、あれ?」

「あれってなにですか」

「なんで最後の最後で、あれ?」



あれってなに?と青年の視線を追う。
追うほどの距離はなかった。顔を上げればすぐそこには目にもまぶしい純白。



青年は満足げにうなずいて見せた。



「ああ見えて滅茶苦茶性能いいからそんな心配しなくても平気だって。いつだかの魔法のビキニより露出度低いし。しかしそうかと思えばあの白いストッキングが眩しく見る者全てを刺激します逸品です。身にまとえばあなたも歩く芸術品です」

「あーあーエセ錬金術師のお前があれに素晴らしい情熱を注いでるってこたぁよーっく分かったよ」

「…………」

「なんだよその目」

「僕製作の芸術品に何が不満なのか、お兄さんに言ってみな」

「俺のほうが年上だろうが」

「僕ァこう見えて年齢不詳なんだよ。で、何が不満なの。君、バニーさんとか踊り子さんとか大好きじゃなかったっけ?」

「大好きだが、それがどうした」

「同じような格好でしょ。セクシー路線」

「ぜんぜん違えよ。っつか今世界の敵と戦おうとしているシチュエーションにセクシーさはいらねえよ!」

「うん、わかった」

「なにが」

「危ないビスチェで手をうと」

「もっと悪くなってる」



文句があるなら自分で何とかなさい!と彼に言われると
何で俺が、だとか
別にどうでもいいけどな、だとかをむにゃむにゃと口の中で言いながら、彼はしぶしぶ前にちょこんと座る彼女の肩を叩く。
そんな背中を見守りながら、彼は吹き出しそうになるのをどうにかこらえつつ、ああ、旅は人を変えるものだなあとしみじみと思った。




「さぁて、がんばって世界を救おうかヤンガス」

「その意気でがす!」



















なあ、ゼシカ。ちょっといいか。

なにどうした…げっなにその真剣な顔。

俺の顔見て悲鳴を上げるならもっと黄色い悲鳴を上げてくれよ…。まあいいや。ほら、コレ着ろコレ。

ええ?まあ、なんだっていいけどドラゴンローブ私が着たら、ククールどうするの?

俺はまあ、適当にはぐれメタルの鎧でも…

あ、交換ってこと?私のこれ着る?

見たいのか。お前は俺のその姿を本当に見たいのか!?

うん、どっちかって言えば凄く見たいわ。