今日も今日とて町中の樽破壊に勤しんでいた青年が一仕事終えて宿に戻ると、そこには赤い服を着た青年一人しかいなかった。
ほかの仲間たちはまたいつぞやのように酔っ払って寝てるのかと尋ねてみれば、
ゼシカは宿の庭で新しい鞭の特訓中、ヤンガスはトロデ王の代わりに馬姫様のお相手にいったらしい。

「王様の代わり?ってことは王様宿にいらっしゃるの?珍しいなあ!」

「ゼシカの特訓に張り切ってご指導中だぜ」

ほれ、あそこだ、と指差すほうを見やれば確かに一生懸命に鞭を振り回す彼女の姿とすぐ横でトロデ王が肩の力を抜くだの手首をひねるだのわいわいと楽しそうにアドバイスをする姿。
あのおっさん武器なんか使ったことないだろうになあ、いやああ見えて王様昔は結構な猛者で、嘘だろ などという中身の薄い会話を繰り返しながら二人は庭の様子を見ていた。


彼女は一生懸命鞭を振るっている。







と同時にゆれる白い耳。










「…なあスシ」

「あいよう」

「防御力もへっぽこだってのに、あの装備は、どうよ」

「いやあゼシカが家にいたころはこんなに着られなかったから新鮮!って喜んで着てるんだもの脱がせられないでしょ?」

「十歩譲ってビスチェ部分はいい。耳と編みタイツはどうにかなんだろ。」

「っていうかそういう女性の服脱がすとかは君のお仕事でしょうククール」

「冗談。鞭もたせたゼシカに近づくほど俺も命知らずじゃねえよ」








そんなことを言っているそばから響く中年男の

本気でぶつけるつもりでやってみいとは言ったが本当にぶつけるやつがあるかっ

などという叫び声が聞こえれば、ますます近づく気にはなれない。
そんな姿をぼんやりと眺めつつ、彼は嘆息する。




ふわふわと揺れる耳。
ふわふわと揺れる尻尾。
でもってふわふわとゆれる、まあ言わずもがなの彼女自身の持ち前の装備。



大変目に優しい。癒される










はず、なのだが。
ここまで揃っていてそそられないはずはないのだが。










彼の複雑な思いを酌んでか酌まないでか、目の前の青年はまあ最近財布にも余裕があるしと口を開いた。


「やっぱりそろそろ、装備新調しなくちゃねえ」

「俺はそいつをオススメするね」

「昔トロデーンの城にいたとき図書室で見たんだけど世の中には魔法のビキニって装備があるらしいんだよね、次はそれかな」

「お前結局狙ってるんじゃないかよ!」

「いや姫様がゼシカの着るところをぜひ見たいわ!絶対に似合うもの!っておっしゃってて」

「お前ら二人で変態だよ!」



とりあえず、今錬金釜で光のドレス作ってるからそれまで辛抱してくださいよと言われ、こいつ俺の何をひっそり知っているのかと心配をしつつ。
なんでもいいから早くあの錬金完了の目の覚めるように間抜けな音が聞こえないかと彼は耳を澄ますのであった。