「なあゼシカさん」

「はいはい、なにかしら?」

「ゼシカって不細工専門?」

「…はい?」

「一緒に旅し始めて結構経つと思うんだけど、小指の先ほどなびかないのは何か原因があると思ってさ。だってゼシカちゃんひとりだけだぜ?俺をこんなに独り占めできてる幸せものは」

「一緒に旅し始めて結構経つから小指のつめの先ほどなびかないっていう選択肢は思いつかないわけ」

「ちょっとひどくなってねえ?それ」

「あんたって、顔はいいほうなんでしょ?」

「それ、俺が返事しなくちゃだめなわけ?」

「だから挨拶交わすとか、一度会ってはいさようなら、なら外見にだまされてああ素敵、格好いいわククールさま素敵ってなるんでしょうけど」

「…んだ、そりゃ」

「修道院の中にいた女の人が言ってたの。でも、一緒にいるとさすがに本性ばれるわけじゃない」

「本性というと、俺の知的で素晴らしい立ち振る舞いのこと?」

「女好きで軽薄でイカサマで変に潔癖症な立ち振る舞いのことじゃないかしら」

「お厳しいことで」

「だから、時間がうんぬんって問題じゃありません」

「初めて出会ったそのときから俺は運命感じちゃってるんだけどなあ」

「初めて会ったときってなにかあったっけ…?」

「ちょっと待ってゼシカさん。そこまで忘れる普通?そこまで昔の話じゃないだろ?」

「ああ、あんたがうまく言い逃れるために私に指輪を渡した、あの出会いのこと?」

「そういう思い出し方はよくないな」

「あんたあのとき、私の胸しか見てなかったそうね」

「あっスシのやつばらしやがったな」

「胸に運命を感じたとおっしゃるのね?」

「いやそれは半分くらいしか真実じゃなくて。いや確かに魅力的ではあるけど」

「これだけ原因があってまだあんたになびくなんて、ラグサットと結婚するくらい無茶苦茶な話よ」

「やっぱり不細工専門じゃねえか」

「あんたとヤンガスだったらヤンガスのほうが100万倍くらいおつきあいしたいけど?なにか?」

「マジかよ!俺は君だけを守る騎士になるって誓った男だぜー?」

「君"も"守る"かもしれない"騎士になるのいい間違いだってことは承知してるわ」

「うまいこというなあ」

「いいじゃない、世の中半分女の人なんだからその中で私とか、ほかの一人や二人なびかないところであんたには問題ないわよ、ね?あんた色男なんでしょ?大丈夫、素敵な出会いはきっとあるわ」

「ねえゼシカさん」

「はいはい、なにかしら?」

「もしかして、今俺のこと慰めてる?」