広報ふくやま2003年12月に掲載された記事

反論及び矛盾点へ
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本記事は、福山市水道局のホームページにもう少し詳しいものが掲載されている。

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反論および矛盾点


広報ふくやま「河口堰 常時開放はできません」に反論する
河口堰が水質悪化の原因です
                           村田民雄
 2003年12月号の福山市広報に載った「河口堰 常時開放はできません!」に対して、私は水質の具体的データを使って反論する。なぜなら、「広報ふくやま」は、BODデータという指標のみを使った極めておそまつなものだから。
●クロロフィルaが示す河口堰の弊害 〜その実体とメカニズム〜
 さて、広報の水質についての結論は、「水質の悪化は、河口堰には関係なく、高屋川や瀬戸川が汚いため、それが河口部分に溜まっているにすぎない」というもの。そして、「河口堰を開放しても水質問題の根本的な解決にはならない」と結論づけている。その指標として使っているものがBOD(生物化学的酸素要求量)。
 水質を表す指標は数多くあるにも関わらず、この一般的な指標のみを使うことで、「分かりやすくごまかそう」とする意図が見える。なぜなら、河口堰の水質悪化で問題になるのは、実はアオコの発生と密接な関係にあるクロロフィルaだからだ。
 クロロフィルaという指標で見ると、全国の河口堰で最も高い値を示しているのは、何と芦田川河口堰なのだ。その調査結果は、「河口堰」(西條八束ほか共著・講談社刊)に、発生メカニズムと併せて詳しく載っている。
「河口堰」(西條八束ほか共著・講談社刊)
全国の河口堰のプランクトン現存量

 そのメカニズムは、次のように説明されている。
 「河口堰ができることにより、水が停滞する。停滞の時間が長くなれば、川の中の窒素やリンなどの栄養分を使ってプランクトンが増殖する時間も長びく。その結果、プランクトンの発生量は非常に大きなものとなる。プランクトンは有機物の塊である。」
 「川の水がよどむと、上流のリン濃度の低いダム湖のプランクトン発生よりも、下流部の河口堰での水質障害がより大きな問題となる可能性が高い。」

 ところで、私の手元に福山市水道局発行の「水質試験報告書」がある。その中には、さまざまな指標で水質分析した結果が載っている。そこで、クロロフィルaについて、河口から2km、4km、8kmおよび瀬戸川との合流点などをグラフ化してみると、水質悪化に河口堰が関係していることがはっきりと表れる。

●市も議会で認めた「河口堰が水質悪化の原因」
 実は、この事実を市当局も認めている。そのことをお伝えしよう。
 私が福山市議であったとき、予算特別委員会(1999年9月22日)で河口堰問題を取り上げたが、私の質問に対して、当時の松井助役(建設省出身)は次のように答えている(議事録より)。
 「河口堰に関する水質上の問題_について、(村田)委員の方からいろいろ御指摘があったと思いますが、御指摘のとおり従来流水だったところをせきとめて、池みたいなものをつくりましたので、先ほどから水道局が説明していますとおり、それによって藻類等の発生ができやすくなると。そういう条件は不可避的ノそういう条件になっております。したがいまして、環境長官の御発言、私はよく存じませんが、滞留をすることによってそういう汚染要因が加わるというのは事実でございます。それは芦田川河口堰にかかわらず、あらゆるところでそれは指摘されているところでございます。・・・
 このように公の場で、河口堰と水質悪化の関係を認めていながら、今になって「河口堰を開放しても水質問題の根本的な解決になりません」とは、市民を愚弄するものに他ならない。


 
 
経済発展、効率重視だけを優先させて良いのか?
福山と近隣の市民は、今の芦田川を故郷のシンボルとして誇れるでしょうか。
河口堰が出来て22年、干潟の喪失、瀬戸内海の漁獲量の減少など失ったものも多いはず。
それらを顧みずして、経済発展のみに着目して良いのか。
経済発展のみにとらわれるのは、20世紀の古い考え方である。
21世紀は、経済発展と環境の調和がとれた都市づくりが望まれている。
そして河口堰は、川本来が持っている生物の多様性を破壊し続けている。
つまり、河口堰の存在が、日本が1992年に批准した生物多様性条約に違反する。
もっとも、河口堰が完成した年が1981年で、条約の批准はそれよりも後であるので、条約違反とはストレートには言えない。
しかし、日本が生物多様性条約を批准した以上、生物多様性を阻害している建築物の見直しを図るべきである。
下の「生物多様性残す価値観を」は、2003年10月19日の朝日新聞の「オピニオン」に、ある大学教授が投稿した記事のタイトルである。
21世紀はこの言葉がキーワードになると思う。なぜなら、多様な生物を育む環境は、人間にとっても健康的で多くの恩恵を与えてくれるからである。

この記事に対する反論
@全般
「河口堰常時開放できません」という記事を広報に掲載したということは、「河口堰開放」の運動している当会の存在を意識していると言える。つまり、当会の要望が行政に届いていることになる。

A「河口堰常時開放できません!」というタイトル
本ページは、「河口堰常時開放できません」というタイトルになっています。
しない」という表現ならば、永久に開放は無理と受け取れるが、「できない」という表現は「条件が整えば開放は可能」であると解釈できる。
また、「できない」と言う表現は やる気がない条件を整える知恵が出ない、と解釈できる。

B工業製品出荷額
2000年の工業製品出荷額は1兆3千6万億円で、1965年の20倍で、その伸びた原因は工業用水を工業生産に応じて供給したからであると書かれてある。
一方、河口堰から水を供給している最大の事業所であるJFE福山製鉄所の粗鋼生産量は1980年以降ほぼ横ばいである。
つまり、JFEの粗鋼生産量は工業用水の供給量には比例して増えていない。
よって、工業製品出荷額が20倍に増えたのは、工業用水の確保ができたからとはストレートには言えない
当時の生活水準、物価水準に比べて現在のそれが20倍に上がったのではないか。 
さらに、下の図からJFE福山製鉄所の粗鋼生産量は1973年がピークである。
河口堰が完成したのは1981年である。つまり、河口堰からの取水がなくても2千2百万トンの鉄が生産可能である。



JFEの技法より

CBOD
河口堰のBODが高いのは、「芦田川に流れ込む支流の川が汚れている」からと書かれてある。
支流のBODは、高屋川が5.9、瀬戸川が4.7である。確かに高い。
一方、河口堰の観測地点である小水呑(こみのみ)橋で、6.8になっている。
つまり、河口堰付近では、水がせき止められることで、水質がさらに悪化していると言える。
河口堰に近い所はもっと水質が悪く、BODが高いはず。
河口堰の水質の悪さを支流の水質の悪さにして本当に良いのか?

D河口堰を開放すると上流の出原浄水場に海水が入り込む
出原浄水場は河口堰から約10kmも上流にあるが、海水がその地点まで潮汐により到達する可能性を否定できないが、この地点での芦田川の水位は非常に低く、少し高い潮止めの堰を設ければ、簡単に海水の浸入は防げるはず。
さらに、出原浄水場は、1965年(昭和40年)に完成している。一方、河口堰が完成したのは、1981年である。
つまり、河口堰が完成する前から出原浄水場は稼動していた。ということは、河口堰がなくても塩害はなかったことになる。
塩害の影響を受けなかったのは、出原浄水場が芦田川の伏流水を水源にしているからではないか。
伏流水とは、川床や河川敷の下を流れている水、これに対して、地表を流れている表流水)

出原浄水場について
所在地  福山市北本庄五丁目1-2 
水 源  芦田川伏流水
面 積  約35,000m2 
配水能力  日量 40,000m3(中津原浄水場の配水能力に対して約8分の1以下) 


出原浄水場の位置(赤字の十文字)
河口堰は箕島町という文字の真横あたり

E河口堰は水がたまりやすいダム
2002年秋の渇水時に、河口堰が渇水の影響を受けなかったのは、八田原ダムと三川ダムから多量に放水し、下流に水をためたからではないか?
上流からの水の供給量が減っているのにもかかわらず、河口堰の貯水量が減らないのは、河口堰から日量10万トンの取水をしていないからでは?
それとも河口堰に伏流水があるのか?
2002年秋の八田原ダムと三川ダムの貯水量が減ったのは、無駄な放水をしたのでは?
下のグラフの八田原ダムと三川ダムの貯水量の減り方が不自然である。

F河口堰の日量の供給量、8万3千m3(8万3千トン)
河口堰の日量の供給量は8万3千トンと書かれてある。
平成13年3月1日の衆議院予算委員会第八分科会で、日量は6万7千トンと報告されている。
わずか2年の間で日量が1万6千トンも増えたとは思えない。

G八田原ダムの常時満水位の設定
上の図2の八田原ダムの4月から6月のダム貯水量が2千3百万トンに保たれている。
有効貯水容量5千7百万トンに対して、40%が常時満水位となっている。
この常時満水位、いわゆる常満の設定値をわずか0.5%上げただけで、28万5千トンの水が確保できることになる。
つまり、2日分の工業用水を確保できることになる。
水道局の人は、こんな算数もできないのでしょうか?
河口湖の水量、500万トンを上乗せしても、常時満水位2,800万トン 洪水調節容量は2,900万トンもある、気象衛星の発達した現在、満水位の弾力的運用は可能である


 八田原ダムのホームページより

H提案
  (1) 芦田川ルネッサンスネットワークの望みは、子供たちが水に親しみ、遊べる公園をつくることだ。
  (2)「芦田川河口堰全面開放検討委員会」の設置
      産業界のための工業用水を確保しながら、自然の営みを取り戻すための、「芦田川河口堰全面開放検討委員会」設置を福山市に強く要求する。

jI河口堰によって失っているもの
 ○ 干潟は宝の山――お金に換算して再確認。
 干潟10平方kmは10万人分の下水処理施設並の浄化能力がある。A
    下水処理施設を造れば建設費だけでなく、その維持管理費もかかる。
    干潟は魚の餌場でもあり、水産物の漁獲量を増やす。
      ↓
    川の再生は、治水と環境再生だけではなく、財政救済策にもなる。
    川〜河口の生み出す生産物や効能は
           年に100万円〜250万円/1ha (面積 約3千坪) B

 ※ A日本水産資源保護協会・平成13年9月の月報より。
      愛知一色干潟の研究報告から)
 ※ B(ヘンク・サエージ教授;
    河川工学 政府開発官庁内の生態学者としてオランダ交通、
    公共事業、水管理省水管理局長、オランダ政府北海水管理局長など歴任。
    ライクシュタット州水管理局主任アドバイザー)の試算。