巻頭言 

「子犬とパン」 マルコによる福音書7章 2430

本日の聖書箇所は、新共同訳では「シリヤ・フェニキアの女の信仰」という小見出しが付いているところです。7章27節に「イエスは言われた。『まず子供に充分食べさせねばならない。子供たちのパンを取って、子犬にやってはいけない』とあります。この言葉は‘子供をユダヤ人’とし、‘子犬を異邦人’と解して、「異邦人であるフェニキア人を後回しにして、ユダヤ人を優先しようとした」と言う解釈が一般的です。その理由は、同じエピソード(併行個所)がマタイ福音書15章24節にあり、そこでは「イエスは『わたしは、イスラエルの家の失われた羊のところにしか遣わされていない』」とお答えになった。」と書いてあるからです。イスラエルの家の失われた羊とは離散のユダヤ人と言う意味です。

イエスさまはユダヤ人でありましたが、本当に異邦人を後回しにしてユダヤ人を優先されたお方でしょうか?私はこの解釈にずっと疑問を持っていましたが、ある時、岩波訳聖書の注釈をみつけました。それによるとこのイエスさまの言葉は当時のこの地方の諺であり「子供の必要としているものを犬に与えてはいけない」つまり「人が必要としているものを無駄にしてはいけない」の意味であるとのことです。マルコ福音書では一章から、ここ七章までイエスさまはガリラヤの伝道で多くの人に囲まれ大忙しであり、食事の暇もない状況であったことが書かれています。イエスさまがこの時必要としていたものは「休息、お祈り」であったのではないかと考えました。本日はこの岩波訳により、メッセージをさせていただきます。近頃、私は幾つかのバプテスト教会に足を運ぶ機会を与えられましたが、どこの教会でも牧師先生は大忙しです。精神的、霊的に常に満たされて牧会活動をされるため、休息、瞑想、お祈りの時間を持っていただくことが大切と思っています。

東京バプテスト神学校 神学生 金香泰誠

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2015年8月23日  (過去メッセージのリンク)
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