2011年4月10日

 
「しかし、勇気を出しなさい」ヨハネによる福音書16:31~33

 
東日本大震災を受けて日本バプテスト連盟は、北九州で立ち上げられた
NPO「絆プロジェクト北九州-第二のふるさと計画」と連携をはかり、東日本大震災復興に関わります。ホームレス支援として始められたプロジェクトが、大震災で新たに生まれた大規模な課題への応答として拡大していきます。奥田先生は過去のホームレス支援の現場で、「絆」には「傷」が含まれている、ということを学ばされたそうです。支援の場では生身の人間同士がぶつかり傷つき合い苦しみ悩むことが必ず起こる。しかし、誰かが自分のために傷ついてくれる時、逆説的に自分は生きていて良いのだと知ると言います。「人の支援は、一人で支えようとしてもつぶれることを知っている弱い人たちが、それでも『何かをやってみよう』と集まり、チームを作ることで成り立っている」と奥田師は語り、私たちには今「傷つくことを恐れて出会いを避けるか、それとも、顔を見せて相手に寄り添い、傷ついても倒れない仕組みをつくるか」の二つの道があると語ります。しかし、その言葉の中にパウロが言う、「喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣きなさい」(ローマ12:15)という、弱さを内包する人間には不可能な命令を通して神の憐れみが現れることを師は願っておられるのだと私は思います。

 イエス様はご自身の行いの原点が「自分からは何事もできない。父がなさることを見聞きすることを私はする。」(ヨハネ5:1930) と、父なる神への従順にあると語られました。そして、受難に向かう葛藤の中で「今、わたしは心騒ぐ。何と言おうか。『父よ、わたしをこの時から救ってください』と言おうか。しかし、わたしはまさにこの時のために来たのだ。」(ヨハネ12:27)と全てを父なる神に委ねられました。弟子たちの離反、裏切りに傷つきながら、人間としての葛藤と戦いながらイエス様は彼らを愛し抜かれました。(ヨハネ13:1)

 理屈通りにならないこの世にあって、イエス様は逆説を語られます。「はっきり言っておく・・・あなたがたは悲しむが、その悲しみは喜びに変わる。」(1620)。そして、「あなたがたには世で苦難がある。しかし、勇気を出しなさい。わたしは既に世に勝っている。」(23)と、人間の弱さの中に生き、不条理の死を遂げたイエス様ご自身が、世の矛盾や大災害の不条理を既に味わい克服していると語られます。父なる神は、イエス・キリストという「傷」を負った絆をもって私たちと私たちの現実と今もつながってくださっており、この世で無力で弱さの中にある者と共におられます。そのキリストご自身が福音です。