2009年6月14日

「生きている石により」 ペトロの手紙U 1:3〜9

 夜の暗い海上で荒波を受けて航海する船にとって、灯台の灯は朝が来るまでの希望の光です。暗い中で自分の位置を失い、不安になった時、どんなに小さくても光が見えることは救いです。ペトロの手紙は、同労の友、使徒パウロの殉教を知った上でペトロが、自身の死を予期しつつ迫害によって離散し仮住まいとなり、深刻な試練の中にあった信徒たちに宛てて書いた励ましの手紙と言われています。

 「泣きながら夜をすごす人にも喜びの歌と共に朝を迎えさせてくださる。」(詩篇30:6)これはダビデによる神殿奉献賛歌ですが、重病の人が癒された時の喜びの歌とも解釈されています。明けぬ夜はないと言いますが、深い暗闇の中にいる者にとっては朝が来ることは信じがたいことです。色々な問題に直面しながら、私たちが失望やあきらめ、やけになって自暴自棄にならないために必要なものは人間に由来しない神様由来の「生きている希望」です。そして、それによる日々の生活です。

 「神は豊かな憐れみにより、わたしたちを新たに生まれさせ、死者の中からのイエス・キリストの復活によって、生き生きとした希望を与え、また、あなたがたのために天に蓄えられている、朽ちず、汚れず、しぼまない財産を受け継ぐ者としてくださいました。」(1ペトロ1:3)これは、キリストにあって新生した者の賛歌です。「生きている希望」それは、キリスト・イエスにより実現された「復活」であり、終わりの日に必ず授与される莫大な財産、救いという永遠の命です。先の見えない試練の中で、ペトロはただその約束に立つこと、キリストを信じる者はこの世では旅人であり寄留者(2:11)であること、自分の立っている位置を福音によって知ることを勧めます。キリストは、信じない人にとっては、人から捨てられ十字架に死んだ石、しかし神の憐れみにより信じる者にとっては尊い生きた石、家を建てる時の隅の親石(基礎、基準)です。「堂々人生」という保険プランがありますが、魂の救いを保障し、この世では旅人として、堂々とした人生を送るためにキリストは復活して下さいました。

 「あなたがたの思い煩いを、いっさい神にゆだねなさい。神があなたがたのことを心配してくださるからです。」(5:7)これは、人ができること、人がすべきこと、人にはできないことを識別させてくれる言葉です。試練と共にあり、「疲れた者、重荷を負う者はだれでもわたしのもとに来なさい。」と召されるイエス様を私は信じます。