光のお話
山のお話とは、ちょっと違うけど、写真を撮る際に一番重要なものは、何だと思いま
すか? もちろん、フィルムの種類や露出なんかも重要ですよ。でも、それはすべて、
「光」があってこそですよね。
一言で「光」と言っても、太陽からの直接光、天空光、あるいは地面、雪面、樹木、
水面による散乱光などいろいろな光があります。これらが混ざり合って、すばらしい
自然の風景を作り出しています。
特に、青空と白い雲、朝焼け、夕焼けなどは、Nature Photo にとって重要な要素で
すよね。また、偏光フィルターを使うと、空の青を濃く鮮やかに見せることができる
ことをみなさんはご存知だと思います。
そこで、ちょっとだけ、光のお話をしてみたいと思います。


どうして、お空は青いの?

 「どうして、お空は青いの?」なんて疑問を子供の頃に持ったことはありませんか?

 これは、大気分子によって散乱される光の量(光の強さ)が、光の波長によって異な
 ることに関係があります。
 大気分子による光の散乱は、「レイリー散乱」と呼ばれる散乱パターンに依存し、
 ほぼ等方散乱(どの方向にも同じ量だけ散乱される)です。
 また、波長の短い青い色の光は、波長の長い赤い色の光に比べて、5倍も効率よく
 散乱されます。
 つまり、このことは、青い光ほどたくさん色々な方向へ分散されるということにな
 り、結果として空は青く見えるのです。

 山登りをされる方は、おわかりかもしれませんが、空は山の上では鮮やかな青に見
 えますよね。これは、標高が1500mぐらいまでは、エアロゾルと呼ばれる水滴
 やほこりなどが多く、青い色以外の光も効率よく散乱されてしまうため、白っぽく
 見えてしまうのです。これに対して、高山では、下界よりエアロゾルの量が少ない
 ので、鮮やかに見えるのです。

 次に、偏光フィルターを使うと、空の色を濃く写すことができるのはどうしてでしょ
 うか?
 太陽が自分の横方向にある場合、前方の空に対して最も偏光フィルターの効果があ
 ることをご存知の方も多いと思います。
 上記のレイリー散乱は、その散乱角によって偏光量が大きく異なります。散乱角が
 0度と180度では偏光量が0ですが、散乱角90度では100%偏光します。
 また、天空光の90%ぐらいは、1回散乱で、多重散乱の割合はそれほど多くあり
 ません。
 つまり、天空光の主成分が1回散乱による散乱光だと考えると、太陽が自分の横方
 向にある場合、前方の空から来る光は、ほとんど偏光しているということになりま
 す。このため、この偏光成分を偏光フィルターを使ってカットすると、当然空は暗
 く(濃く)見えるのです。


夕焼けは、どうして赤いの?

 夕焼けが赤い理由は、昼間の空が青い理由を理解していれば、簡単にわかります。
 太陽の高度が低くなると、太陽から直接届く光は、高度が高い時に比べて大気を
 通過する距離がずっと長くなります。
 このため、散乱効率の良い青い色の光は、他の方向へ散乱されてしまい、自分の
 目に到達する頃には、ほとんど赤色の光しか残らず、結果として赤く見えるので
 す。



上に書いたようなことは、写真を撮るのに特に必要な知識ということでもないので
すが、ちょっと思い出しながら、山の写真を撮ってみるのもいいかもしれませんね。

自然の風景って、色々な光が混ざり合ってできた造形なんですよね。
つまり、「Nature Photo」って、やっぱり自然の光を使って撮る写真のことだと思
うんです。色フィルターや、偏光フィルターを使って、光の種類を意図的に選択し
た写真は、果たして Nature Photo と言えるでしょうか?
あなたは、どうのようにお考えですか?

戻る