Back in Time 2
「……という訳で、ここは戦国時代。あたしたちは四魂のかけらを集め、妖怪奈落を追って旅をしているの」
一行はを連れて楓の家に行き、かごめが説明役になった。
「はあ……」
はあやふやな返事をし、楓の淹れてくれたお茶を飲んだ。
「それでね、ちゃん、その制服の右ポケットに入ってるもの見せてもらえるかな?」
落ち着いてみると、かごめには、確かにから四魂のかけらの気配が感じられたのだ。
「これ?」
は、折りたたみ式の携帯を取り出した。
「ううん、それじゃなくて」
「……これ?」
は、小さな皮袋を取り出した。
「そう、それ。中を見せてもらっていい?」
はしぶしぶ中身を取り出した。それは、六角錐の水晶に黒い皮ひもがついたペンダントだった。
「これだわ。水晶の中に、閉じ込められるようにしてかけらが入ってる」
「取り出せますか?」
弥勒の問いに答えるように、かごめはそっと水晶に手を伸ばした。しかし、四魂のかけらは水晶の中から出てこなかった。
「……だめみたい」
「じゃあ、その水晶を叩き割って……」
「だめ!!」
の迫力に、犬夜叉はたじたじとなった。彼女と目をあわさないように、そっぽをむいて呟いた。
「……じゃあ、どーすんだよ」
「その水晶を、われわれに譲っていただくわけにはいきませんか?」
弥勒の頼みに、は赤くなりながら俯いた。
「これは、大切なものだから……」
それ以上は、どんなに話し合っても平行線だった。
話し合いが長引くうちに、いつの間にか夜になっていた。もう遅いからということで、その夜は皆で楓の家に泊まることになった。
皆の寝息を確かめると、は静かに起き上がり、小屋の外に出た。
この時代の夜の世界は、の見慣れた街の灯りはもちろん無く、月の光に踊る影がまるで物の怪のように見えた。
(か、かなり怖いかも……)
は、ポケットの中の水晶を握り締めた。このまま、ここにいるわけにはいかない。きっと、この水晶を誰かに奪われてしまう。
昼間の記憶と勘を頼りに、は骨喰いの井戸に向かって歩き出した。
「ちくしょー、あいつ、勝手に行きやがって!」
犬夜叉たちがのいないことに気づくのに、そう時間はかからなかった。
「急いで探しましょう! 四魂のかけらを狙った妖怪が現れるかもしれない」
弥勒の言葉に、犬夜叉は眉間にしわを寄せながら、の匂いを確かめた。
「井戸のほうだ!」
犬夜叉はかごめを背負い、走り出した。そのあとを、弥勒と珊瑚、七宝が続いた。
(やっとあったわ!)
は、ようやく井戸にたどり着いた。慣れない夜道――しかも舗装などされていない、草や石ころだらけの道では何度も転び、膝からは血が滲んでいた。
井戸に手をかけると、はホッと息をついた。だが、その安心感はすぐに破られた。
「待ちやがれ〜!」
今来た道を振り返ると、すごい形相の犬夜叉が走ってくるところだった。
「な、何で追っかけてくるのよ〜!」
「てめえこそ、何で逃げる!」
「犬は嫌いなのよ!!」
は闇に沈む井戸の底を見て一瞬躊躇したが、追ってくる犬夜叉から逃れようと、井戸に飛び込んだ。
「あ、待て!」
犬夜叉も、かごめを背負ったまま、続けて井戸に飛び込んだ。
昼間の経験で井戸はかなり深いと覚悟していたは、思いもかけずすぐに井戸の底に着地していた。
「……あれ?」
の横に、犬夜叉とかごめが飛び降りてきた。しかし、2人はそのまま空間に溶けるように、消えてしまった。の目には、驚いていた2人の表情が残像になって残った。
井戸の底は、月の光も届かない真の闇だった。
(こ、怖い……)
その時、上のほうから声がした。
「誰もいないね。犬夜叉たちも、かごめちゃんの国に行っちゃったのかな?」
「そのようですな」
珊瑚と弥勒だった。その声を聞くと、は逃げようとしていたことも忘れて叫んだ。
「ねえ、ここから出して!」
「帰れねえ?!」
あのあと、すぐに戻ってきた犬夜叉は、事情を聞くと素っ頓狂な声をあげた。は赤い顔をして、こくんと頷いた。
「どーなってんだよ?」
「あたしに訊かれても……」
かごめも戸惑ったように、を見た。いつも自由に井戸を行き来していたかごめは、まさかが現代へ帰れなくなるとは思ってもいなかった。しかし、ここへ連れてきてしまったのは、自分の責任なのだ。
「とにかく、が自分の国へ帰れない以上、それに私たちに四魂のかけらを譲る気にもなれない以上は、われわれと一緒に行動したほうがよいでしょうな。四魂のかけらを狙って、妖怪が現れないとも限りませんし」
弥勒の言葉に、皆は頷いた。
「それでいいかい? ちゃん」
珊瑚の言葉に、は無言で頷いた。
一行は、楓の家に向かって歩き出した。
(もお、サイテー……)
は、流れた涙を誰にも気づかれないうちに、手の甲ですばやく拭った。
「ごめんね、ちゃん。あたしのせいで……」
いつの間にか、かごめが隣に並んで歩いていた。は、あわてて首を横に振った。
「かごめちゃんのせいじゃないよ。それに、あの時はああしないと、あの妖怪に殺されていたから……」
は、強いて笑みを作った。泣いたって、どうにもならないのは、もうわかっていたから。それなら笑って立ち向かおう。この困った運命にも、大嫌いな犬にも。――それから、大好きな先生によく似た法師さまにも。
弥勒さまドリーム、いかがでしょうか?
一応こちらは軽めの話で進めていこうと思っています。
でも本来暗いドロドロ系の話を書くのが好きなので、
上手くいかなかったりして……(- .-)ヾポリポリ
とりあえず、ヒロインちゃんをよろしく見守ってやってください。_(._.)_ ペコリン