3 Minutes NetWorking
No.29

3Minutes NetWorking

第29回レイヤ3 デフォルトゲートウェイ

■ ブロードキャストドメイン

インター博士

前回から、ルータの話をしている。

ネット助手

はい。最適ルートを選択してくれる、ネットワーキングデバイスでしたね。

インター博士

うむ。インターネットワークで、宛先に届けるためのルートを決定するデバイスだ。
ルートを決定できないと、どのルートで届けてよいかわからないため、ネットワーク間の接続ができない。

ネット助手

ルータを中継しないとネットワーク間でのデータ転送はできないってことですね。

インター博士

うむ。それがルータの機能だ。
しかし、ルータには他にも重要な役割がある。

ネット助手

インターネットワークでのルーティングだけでも重要そうなのに、まだあるんですか?

インター博士

ブロードキャストを他ネットワークに送り出さないという役割だ。

ネット助手

ブロードキャストを他のネットワークに送り出さない?
それって重要なんですか?

インター博士

うむ。
例えば最大のネットワークであるインターネットに接続されているウチの大学のLAN内で、ネット君がDHCPDISCOVERを送り出したとする。

ネット助手

DHCPDISCOVERっていうと、DHCPサーバを探すためにブロードキャストするDHCPメッセージでしたよね。

インター博士

うむ。DHCPDISCOVERはブロードキャストなため、LAN内のすべてのホストに届く。
もちろん、大学のLANとインターネットを接続するルータにも届く。

ネット助手

届きますね。

インター博士

そうすると、「全員宛」のブロードキャストため、ルータは他のネットワークまでそのDHCPDISCOVERを送りつける。

ネット助手

ははぁ。

インター博士

結果、ネット君が送ったDHCPDISCOVERはインターネットを駆け巡り、遠くモーリタニアまでも届いてしまう。▼ link

ネット助手

…、何処ですかモーリタニアって?

インター博士

ともかく、ネット君だけでなく世界中の人々が送ったブロードキャスト・パケットはインターネットすべてに伝わり、回線をパンクさせてしまう

ネット助手

そうなりますね。
だからルータは、ブロードキャストを他ネットワークに送り出さないってことなんですね。

インター博士

うむ。
ブロードキャストが届く範囲のことを、ブロードキャストドメインというが、ルータはブロードキャストドメインを分けることができるのだよ。

ネット助手

ぶろーどきゃすとどめいん?
え〜っと、前にでてきた衝突ドメインってのに似てますね。

インター博士

うむ。考え方は同じだ。
衝突の影響が及ぶ範囲が、衝突ドメイン。
ブロードキャスト・パケットが及ぶ範囲が、ブロードキャストドメイン。

ブロードキャストドメイン

[Figure29-01:ブロードキャストドメイン]

インター博士

図のように、衝突ドメインはブリッジ・スイッチが区分けしブロードキャストドメインはルータが区分けする

ネット助手

ハブはどちらにも影響を及ぼさないですね。

■ ARPとルータ

インター博士

ルータは、ブロードキャストを他に転送しない、はいいとして。
これはこれで困ったことが起きてしまう。

ネット助手

困ったこと?

インター博士

うむ。
4つのアドレスを思い出してもらおう。
さて、宛先のMACアドレスを知る方法はなんだった?

ネット助手

え〜っと。ARPです。

インター博士

そう、ARPだ。
問題は、このARPがブロードキャストという点だ。

ネット助手

ARPはブロードキャスト。
ということは、ルータはARPを他のネットワークに流さない

インター博士

そうだ。
こうなる。

[Figure29-02:ARPとルータ]

インター博士

ルータがブロードキャストを他のネットワークに流さないので、ARPは宛先まで届かない。宛先まで届かないと、もちろん宛先MACアドレスがわからないことになる。

ネット助手

そうなると。
4つのアドレスがそろわないから、データ送信ができないってことになりますよね。

インター博士

そうだ。
つまり異なるネットワークへはデータ転送ができないことになってしまう。

ネット助手

はわ〜。
ネットワークを接続するのがルータの役割なのに、ルータがARPを止めてしまうせいでネットワーク間のデータ転送ができないなんて。

インター博士

そういうことだ。
なので、インターネットワークでは、デフォルトゲートウェイというものが必要となる。

ネット助手

でふぉるとげーとうぇい?

インター博士

うむ。他ネットワークとの接続点に位置するデバイスだ。
ゲートウェイという名前が意味するとおり、要は出入り口だな。

ネット助手

ははぁ。
牛さん柄のパソコンブランドのことかと思いましたよ。▼ link

インター博士

ああ。初めて買ったパソコンは、牛さんブランドだったな。懐かしい。
ともかく、ネットワークの出入り口だ。

ネット助手

ネットワークの出入り口?

■ デフォルトゲートウェイ

インター博士

他のネットワークへデータ転送を希望するホストは、一度デフォルトゲートウェイにデータを送り、他ネットワークへ転送してもらう

ネット助手

他ネットワークへ転送するために、データを送る…。
それって、ルータの動作のところで出てきませんでした?

インター博士

よしよし、よく覚えていたな。
その通り、デフォルトゲートウェイは主にルータがその役割を果たす

ネット助手

主に?

インター博士

プロキシサーバなども、デフォルトゲートウェイになることもある。

ネット助手

ぷろきしさーば?

インター博士

うむ。それは先の回で説明しよう。
ともかく、デフォルトゲートウェイの役割、つまりルータの動作はこうなる。

[Figure29-03:デフォルトゲートウェイ] 

ネット助手

ははぁ。
送信するホストは、デフォルトゲートウェイにパケットを送るってのはこういう意味なんですか。

インター博士

そうだ。
ずいぶん前にも話したが、MACアドレスは直接接続されている宛先に使うのだ。

ネット助手

そういえば、第13回でそういう話をしてましたね。

インター博士

うむ。
なので、ホストは宛先が同じネットワーク内ならば、宛先に違うネットワークならば、デフォルトゲートウェイにARPを送信する

ネット助手

へへぇ。
ちなみにホストはデフォルトゲートウェイのIPアドレスをどうやって知るんです?

インター博士

手動で設定するか、DHCPサーバに教えてもらう
手動で設定する場合は、以下の画面で行う。

デフォルトゲートウェイの設定

[Figure29-04:デフォルトゲートウェイの設定] 

ネット助手

前にでてきた、手動でIPアドレスを設定する場所と同じ所ですね。

インター博士

うむ。
確認したい場合も、同じ様に「ipconfig /all」を使う。

デフォルトゲートウェイの確認

[Figure29-05:デフォルトゲートウェイの確認] 

ネット助手

本当だ。ちゃんと「Default Gateway」っていう項目がある。

■ デフォルトゲートウェイ・実験編

インター博士

異なるネットワークへ接続するためには、デフォルトゲートウェイが設定されてないと駄目ということがわかってもらえたと思う。

ネット助手

デフォルトゲートウェイにARPを送って、MACアドレスを教えてもらって、ってことですよね。

インター博士

うむ。
では実際にデフォルトゲートウェイが設定されていない場合どうなるか試してみよう。

ネット助手

わわわ。
3分間ネットワーキング初の実践だ

インター博士

まず、ホストを以下のように設定した。

TCP/IP設定 デフォルトゲートウェイなし

[Figure29-06:TCP/IP設定 デフォルトゲートウェイなし]

インター博士

デフォルトゲートウェイの欄を空欄にし、デフォルトゲートウェイを未設定にする。

ネット助手

はい。

インター博士

そして、pingというものを使う。
これは先の回で説明するが、相手とデータ転送が可能かどうか調べるコマンドだ。

ネット助手

ふむふむ。

インター博士

まずは同じネットワーク内にpingを行ってみる。

ping表示画面 LAN内

[Figure29-07:ping表示画面 LAN内]

インター博士

「Ping statistics for 192.168.0.1:」192.168.0.1にPingを行いました。
「Pakets:sent = 4」。4つパケットを送りました。
「Recived = 4」。4つパケットを受け取りました。

ネット助手

ということは?

インター博士

送った数だけ返事が返ってきている。
つまり、データ転送が可能という意味になる。

ネット助手

同じネットワーク内だから、デフォルトゲートウェイが設定されてなくても大丈夫ってことですね。

インター博士

次に異なるネットワーク、そうだな「Roads to Node」があるWebサーバの61.193.0.66にpingを行ってみよう。

ping表示画面 ネットワーク外

[Figure29-08:ping表示画面 ネットワーク外]

ネット助手

え〜っとなんですか、これ。
ですてねいしょん ほすと あんりーちゃぶる?

インター博士

宛先のホストには届きません」と言ってるのだよ。
4つ送ったのに、「Recived = 0 , Lost = 4」すべて失われて返事が返ってこない。

ネット助手

つまり、データ転送ができないという意味ですね?

インター博士

そうだ。
デフォルトゲートウェイが設定されていないため、異なるネットワークには届かないのだ。

ネット助手

なるほど。

インター博士

確認のため、デフォルトゲートウェイが設定されている状態でも試してみよう。

TCP/IP設定 デフォルトゲートウェイ設定

[Figure29-09:TCP/IP設定 デフォルトゲートウェイ設定]

インター博士

デフォルトゲートウェイを設定しなおした。
先ほど同様、61.193.0.66にpingを行ってみよう。

ping表示画面

[Figure29-10:ping表示画面 ネットワーク外ゲートウェイあり]

インター博士

この通り、データ転送が可能になった。

ネット助手

は〜。

インター博士

これが、デフォルトゲートウェイ=ルータの役割だ。
異なるネットワークへの送信にはデフォルトゲートウェイが必須だとよくわかってもらえたと思う。

ネット助手

目の前で実験されるとさすがにわかりますね。

インター博士

うむ。
次回もルータの話をする。

ネット助手

了解。
3分間ネットワーキングでした〜♪

モーリタニア
アフリカ西岸に位置する3/4をサハラ砂漠が占める国。
首都はヌアクショット。
ブロードキャストドメイン
[broadcast domain]
デフォルトゲートウェイ
[default gateway]
ネットワークの出入り口になるデバイス。
主にルータがその役割を果たすが、Proxyサーバなどでもよい。
牛さん柄の…
PCのブランドのGatewayのこと。何故か牛さん柄がトレードマーク。
ちなみに、まだ牛さん柄のマウスパッドを愛用してます。
プロキシサーバ
[proxy server]
他ネットワークへのデータのやり取りを代行する代理サーバ。
詳しくは先の回で。
左の図の中で、
Destは宛先[Destinaion]。
Srcは送信元[Source]です。
画像
左の画像はWindows2000の画像です。
コントロールパネル→ネットワークとダイアルアップ接続→ローカルエリア接続のプロパティ→インターネットプロトコル(TCP/IP)のプロパティ。
Windows9x系の場合は、コントロールパネル→ネットワークコンピュータのプロパティで同様のものが表示されます。
画像
Windows9x系の場合は、スタート→ファイル名を指定して実行→winipcfg.exeです。
ping
ピン」と読みます。
詳しくは先の回で。
ネット助手ネット君の今日のポイント
  • ルータはブロードキャストを他のネットワークに流さない。
  • ブロードキャストが届く範囲をブロードキャストドメインという。
  • デフォルトゲートウェイはネットワークの接続点になるデバイスである。
  • 各ホストは、異なるネットワークへデータを転送したい場合、デフォルトゲートウェイにパケットを送る形をとる。
  • その時はデフォルトゲートウェイにARPを送信し、デフォルトゲートウェイのMACアドレスを宛先MACアドレスにする。

3 Minutes NetWorking No.29

管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp