3 Minutes NetWorking
No.16

3MinutesNetWorking

第16回レイヤ2 IEEE802.5とFDDI

■ IEEE802.5とFDDI

ネット助手

博士、聞きそびれたことがあったんですけど。

インター博士

何かね?

ネット助手

イーサネットってどういう意味です?
ネットはともかく、イーサってのは聞きなれない言葉なんですけど。

インター博士

ふむ。もちろんネット、はネットワークだ。
イーサは、「ether」を辞書で引いてみたまえ。

ネット助手

ether:エーテル (古い物理学で光,熱などの媒体とされた仮説上の物質)

インター博士

そう、つまりEthernetとはエーテルネットのことなのだ。

ネット助手

え〜っと…、疑似科学

インター博士

わははは。確かに光や熱を伝える媒体としてのエーテルってのは現代科学では否定されてるよな。
何故こんな名前がついているかというと、想像だが…。

ネット助手

博士の考えでは?

インター博士

これから説明する、IEEE802.5やFDDIは信号の流れが制御されている。各デバイスを順序よく回っていく。
だが、イーサネットは信号が全体に伝わっていくわけだ。

ネット助手

そうですね、ブロードキャストでしたっけ。

インター博士

うむ、その様が、エーテルによって全方位に運ばれていく光のようだ、って事でエーテルネット、イーサネットと名前がついた。
…と思う。

ネット助手

なるほど。

インター博士

あくまでも想像だ。ホントかどうかは知らん。
ともかく、今回はIEEE802.5とFDDIの説明だ。さきほどもいったように、この2つは信号の流れが各デバイスを順序良く回っていく形になる。

ネット助手

IEEE802.5やFDDIはリング型トポロジでしたよね。
ぐるっと信号が回っていくわけですね。

インター博士

うむ、その通り。この方式をトークンパッシングアクセス制御という。
IEEE802.5とFDDIはこのアクセス制御を使う。

ネット助手

とーくんぱっしんぐ?

■ トークンパッシング

インター博士

うむ。トークンという制御フレームを使った方式だ。
図の方が説明が早い。下を見てくれ。

[Figure16-01:トークンパッシング]

インター博士

トークンと呼ばれるモノが来た時だけ送信する権利がある、という方式だな。
もちろん、リングの中を流れるトークンは基本的には1つだけだ。

ネット助手

はわ〜。
トークンという配達人に、データを運んでってもらう形ですか。

インター博士

うむ、なかなかいい例えだ。
トークンという配達人が、各家を御用聞きに回ってるわけだな。「運ぶものはないですか〜?」と。

ネット助手

で、運びたい物がある人は、トークン君にデータを渡すわけですね。

インター博士

受け取ったトークン君は、いつもの配送ルートを守って宛先にデータを届ける。
そこで、受領印を押してもらう。そして配送ルートを一周して、送信元に戻る。

ネット助手

戻ったら、身軽になったので、また御用聞きに回る、と。

インター博士

うむ。
この場合、トークン君は1人しかいないわけだから、同時に物を運べるのは一軒だけということになるな。さて、これはどういう事を表すのだ、ネット君?

ネット助手

え〜っと。同時に送信できるノードは1つだけってことですよね。
…。衝突が発生しない

インター博士

ふむ。
当たりだ、優秀メダルをあげよう。

ネット助手

やりぃ。

インター博士

イーサネットのCSMA/CDのような衝突が発生しない。
CSMA/CDのように、衝突が16回発生したら送信取り消し、などという制限がなく、必ず送信できるということだ。

ネット助手

ふむふむ。

インター博士

さらに、相手が受信したかどうか確実にわかる

ネット助手

受領印を押してもらったトークンが帰ってきますものね。

インター博士

なので、非常に堅固なアクセス制御方式だと言えるだろう。
工場のFA(ファクトリーオートメーション)や、銀行などのネットワークで使用される。

ネット助手

安全第一のネットワークで使われるんですね。

インター博士

そうだ。だが、完璧ではない。
例えば、送信元が、ビジートークンを送り出した後故障したらどうなる?

ネット助手

そうですね…。ん〜、ビジートークンは宛先に届いて、受領印を押してもらって、送信元に帰ってくる。
帰ってきても故障して送信元がないから…。

インター博士

フリートークンに戻らない
そうすると、永久に他の誰も送信できなくなってしまう。

ネット助手

フリートークンがないと送信できないからですね。

インター博士

そのような事がないように、監視するノードを置いておく。

ネット助手

なるほど。

■ トークンリング/IEEE802.5

インター博士

さて、このトークンパッシングを使うIEEE802.5だが。
IEEE802.3がもともとXerox、intel、DECの3社が作り出したDIX-Ethernetを標準化したように、実はもとの規格が存在する。

ネット助手

そうなんですか?

インター博士

うむ。トークンリングという規格で、IBMが1970年代に開発したものだ。▼ link
イーサネットとIEEE802.3がほとんど変わらないように、トークンリングとIEEE802.5もほとんど変わらない。

ネット助手

へぇ、IBMッスか。

インター博士

トークンリング/IEEE802.5は、LANの仕様として、先ほど話したトークンパッシング同軸もしくはツイストペアケーブルリング・スター型トポロジを使う

ネット助手

スター型?スター型だと、中央にハブがあるんですよね?
ハブは来た信号をみんな流してしまいますけど、どうやってトークンを順序よく循環させるんです?

インター博士

うむ、ハブを使うのは確かにハブを使うのだが。
トークンリング用の特殊なMSAUというハブを使う。 下図のような形になる。

MSAU

[Figure16-02:MSAU]

インター博士

半透明の青い部分がMSAUだ。
まあ論理的にはリング型で繋げている形になるな。

ネット助手

ははぁ。ところで博士、なんでイーサネットのほうが主流なんです?
トークンリングのトークンパッシングの方が衝突がなくて優れていると思うのですけど?

インター博士

ふむ、それはな。CSMA/CDの方が制御が簡単なせいで機器が安くつくからなのだよ。
前も話したが、「使ってなかったら送る。駄目だったらもう1回」というなんとも明確な制御方式だからな。

ネット助手

配達人にまかせとけ、のトークンパッシングも十分簡単に思えますけど。

インター博士

だが、先ほども話した、監視役が必要だったりするわけだ。
あとは4Mbpsもしくは16Mbpsというデータ転送速度が問題なのかもしれんな。

ネット助手

ははぁ。スピードに費用ですか。
そりゃ負けてもしょうがないかもなぁ。

■ FDDI

インター博士

さて、もう1つのトークン・パッシング方式のLAN仕様が、ファイバ分配データ・インターフェイス、FDDIだ。
これは二重リング型トポロジ、光ファイバを使うのが特徴だ。

ネット助手

ん〜っと、光ファイバを使ったIEEE802.5って感じなんですか?

インター博士

そうだな、その発想はあながち間違ってはいない。
違うところはまず、光ファイバなのでデータ通信速度が速いこと。

ネット助手

光ファイバですものね、そりゃ速いですよね。

インター博士

100Mbpsで、最長20KmのLANを作り出せる。
さらにIEEE802.5と大きく違うのは、二重リング型トポロジであるというところだ。 下の図を見て欲しい。

二重リングトポロジ・FDDI

[Figure16-03:二重リングトポロジ・FDDI]

インター博士

前も話したが、二重リングのうち1つは予備として使わない。
使う方をプライマリ・リング、予備の方はセカンダリ・リングという。この2つのリングは、逆向きに信号が流れる。

ネット助手

ぷらいまりとせかんだりですか。

インター博士

うむ。
これらのリングに接続されるのは、DASSASだ。これも図で説明しよう。

FDDI:DASとSAS

[Figure16-04:FDDI:DASとSAS]

インター博士

DASは両方のリングに接続された機器のことだ。プライマリのinとout、セカンダリのinとoutの4つの接続点を有する機器だな。
この機器は障害を検知して、セカンダリの使用を決める監視役も務める。

ネット助手

ははぁ、DASっていう専用の機器なんですね?

インター博士

いや、FDDIへの接続可能なデバイスのことだ。
別に普通のコンピュータでもいい。

ネット助手

なんだ、そうなんですか。
で、コンセントレータってなんです?さっきは出てきませんでしたけど。

インター博士

うむ。簡単に言うと、ハブのことだ。
ハブの機能の1つである、メディアの集線をする装置という意味で使われる。

ネット助手

ハブの機能の1つ…、あぁハブには増幅って機能もありましたっけ。

インター博士

そうだ。イーサネットに使われるハブにはそういう機能もある。
コンセントレータは、複数のSASと接続される。SASはプライマリ・リングとしか接続されない

ネット助手

っていうことは、プライマリ・リングに何か起きたら繋がらなくなるんですね。

インター博士

そうとは限らない。以下のようにコンセントレータが繋がっているポイントが直接障害が起きない限り、大丈夫と言えば大丈夫だ。

[Figure16-05:二重リングでの障害発生]

ネット助手

あ〜、なるほど。切り替えポイントになるわけですか、DASって。
折り返して必ずリングになるようにするんですね。

インター博士

そうだ。FDDIの特徴といえば、まずは二重リングによる高い信頼性だ。
これはトークン・パッシング制御方式の、確実に届けることと組み合わさって、非常に高い信頼性を誇ることになる。

ネット助手

リングが1つ切れても、もう1つでなんとかなるってことですね。
で、トークン・パッシングだから、必ず送信できるし、相手に届いたかどうかもわかる、と。

インター博士

そうだ。
かつ、光ファイバの高データ転送速度

ネット助手

うわ、なんか無敵ですね。

インター博士

そうなる。ただし、値段の方も無敵だがな。
光ファイバが高い上、DAS、コンセントレータなどの接続機器も高い。

ネット助手

あららら。

インター博士

なのでまあ、普通のLANにはあまり使わないな。データ転送速度だけなら、ファストイーサネットや、ギガビットイーサネットもある。
さらにイーサネット用のネットワーキング・デバイスが、衝突の発生を減らすことも行うしな。

ネット助手

ははぁ。

インター博士

なので、どちらかといえば、イーサネットをしっかり覚えておくことの方が重要だ。
正直言って、IEEE802.5やFDDIはあまり触ることがないであろうからな。

ネット助手

あぅ。
じゃあ今回はいったい何のために…。

インター博士

やれやれ。ネット君。君には知的好奇心というものが足りないようだな。
知的好奇心がないのは、人間とは言えんというのが私の持論だ。

ネット助手

うぐっ…。

インター博士

まぁ、いいだろう。これから人間になればいいだけの話だ

ネット助手

はやく人間になりた〜い

インター博士

古いな、ネット君。君はいつの生まれだ?
ともかく、次回はネットワーキング・デバイスの説明だ。まずは、ブリッジから行う。

ネット助手

了解。
3分間ネットワーキングでした〜♪

疑似科学
「トンデモ本の世界」とかで紹介されてる、怪しげな科学。
相対性理論は間違ってるとか、宇宙はエーテルにみちているとか、そういうの。
トークンパッシング
[token passing]
tokenはしるし、証拠などの意味。
送信権を持つ「しるし」が、各ノードを通過[pass]していくという制御方式。
1つだけ
Early Token Release機能を使えば、同時に複数存在することができます。
ただし、フリートークンはやはり1つだけです。
データを送信したノードは、新たなフリートークンを先ほどのトークンの後を追いかけるように1つリング上に送り出します。
この場合、1周してきたビジートークンは消されてフリートークンとして再送信されません。
これにより、リングを循環しているフリートークンは1つだけになります。
優秀メダル
キャプテントーマス手作り。
監視するノード
アクティブ・モニタといいます
トークンリング
[Token Ring]
IBM
[International Business Machines]
IBM社。
コンピュータの老舗。世界最大のコンピュータメーカ。
MSAU
[MultiStation Access Unit]
マルチステーションアクセスユニット。
プライマリ
[primal]
最初の、主要な、という意味。
よく使われる言葉なので覚えておくと役に立つことが多い。
プライマリIDEとか、プライマリドメインコントローラ、とか。
DAS
[Dual Attachment Station]
デュアル・アタッチメント・ステーション。
クラスAステーションとも呼ぶ
SAS
[Single attachment station ]
シングル・アタッチメント・ステーション。
クラスBステーションとも呼ぶ
コンセントレータ
[concentrator]
集線装置。複数の回線を1つにまとめる。
ネット助手ネット君の今日のポイント
  • IEEE802.5とFDDIはトークン・パッシング制御方式を使う。
    • トークンという制御データを使う。
    • 衝突が発生しない。
    • 宛先に届いたかどうか確認できる。
  • IEEE802.5はリング・スター型トポロジで、同軸かツイストペアを使う。
  • FDDIは二重リング型トポロジで、光ファイバを使う。

3 Minutes NetWorking No.16

管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp