30 Minutes NetWorking
No.SW20

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第20回HSRP(3) preemptとトラッキング

■ スタンバイpreempt

スーパーインター博士

さてHSRPの動作についてはわかったかね?

ハイパーネット助手

デフォルトゲートウェイの冗長化、仮想アドレス、HSRPメッセージ、ってところですね。

スーパーインター博士

なんとも要約しすぎだが、まぁいいだろう。
つまり、仮想アドレスを持つ仮想ルータを設定し、各クライアントはそこをゲートウェイとする、というわけだな。

ハイパーネット助手

で、各ルータはアクティブルータが出すHelloにより、アクティブルータの生存を確認する、と。

スーパーインター博士

うむ。
さて、まず今回の話の1つ目だが、そのアクティブルータとスタンバイルータの関係だ。

ハイパーネット助手

関係? アクティブが主系だから、アクティブが生きているうちはアクティブが。
アクティブがHelloタイマ以上Helloを送信しなかったら、スタンバイがアクティブに、でしたよね。

スーパーインター博士

それは間違っていない。
では、スタンバイがアクティブになった後、旧アクティブがもう一度立ち上がってきたら?

ハイパーネット助手

ん? んんんん?
STPだと、旧ルートブリッジが復帰するんだけど……、HSRPはどうだろ?

スーパーインター博士

HSRPではスタンバイになったアクティブルータは、旧アクティブが復帰してもスタンバイに戻らない。一度変更されたそのまま、ってことだな。

ハイパーネット助手

は〜。OSPFのDRがそんな感じでしたっけ。

スーパーインター博士

これはこれで、「こういう設定だから」と納得してしまえば済む話なのだが。
問題はこういう場合だ。

[FigureSW20-01:旧アクティブルータの復帰問題]

ハイパーネット助手

悪いメトリックを使いつづける
確かに、そうなる可能性はありますね。

スーパーインター博士

もちろん、HSRPグループのルータの配置によってはこうはならないこともある。
では、こうなってしまった場合、どうする?

ハイパーネット助手

それは、もちろん旧アクティブルータにアクティブに戻ってもらうことですよね。

スーパーインター博士

そうだ。
なので、ちゃんとそういうことができる設定がある。スタンバイpreemptだ。

[FigureSW20-02:スタンバイpreempt]

ハイパーネット助手

Coupめっせーじ? Resignめっせーじ?
そういえば、前回そんなのでてきましたっけ。

  • Hello … 生存確認。送信元ルータがアクティブ/スタンバイである、もしくはなることができることを示す
  • Coup … 送信元ルータがアクティブになりたいことを示す
  • Resign … 送信元ルータがこれ以上アクティブでいられないことを示す
ハイパーネット助手

「アクティブになりたい」「アクティブでいられない」……なるほど。

スーパーインター博士

そういうことだ。「preemptで使われる」と前回言ったな。

ハイパーネット助手

もともとスタンバイだったアクティブは、StandBy→Active→Sepak→StandByで、StandByに戻るのですか?

スーパーインター博士

結果的にはそうなるな。アクティブの障害前はスタンバイだったルータだからな。
2番目にプライオリティが高いことは明白だからな。

ハイパーネット助手

……。あれ? でも、上の図だと、2台しかルータがないからいいですけど。
3台以上あった場合、スタンバイがアクティブになった時点で新しいスタンバイが選ばれるんじゃなかったんでしたっけ?

スーパーインター博士

そうだ。

ハイパーネット助手

ん〜。で、もともとスタンバイだったルータがアクティブから降ろされると、またスタンバイに選出される?

スーパーインター博士

うむ。スタンバイはアクティブを除き1番高いプライオリティを持つルータだ、アクティブのように降ろされないわけではない。新しいルータが追加されたら再選出される。

ハイパーネット助手

は〜。

StandByの選出

[FigureSW20-03:StandByの選出]

スーパーインター博士

3台の場合こうなるな。preemptを使わないならば、アクティブは障害がない限り固定。
スタンバイはどの状態でも選出作業がある、と覚えておけばいい。

ハイパーネット助手

なるほど、どんな状態であれアクティブを除いて一番プライオリティが高いルータがスタンバイ、ですね。

■ トランクリンクとHSRP

スーパーインター博士

そういえば、話していなかったが、複数のスイッチでVLANになっていた場合でも、HSRPは使用できる。
例えば、HSRP適用前はこのような状態だとする。

複数スイッチでのVLAN

[FigureSW20-04:複数スイッチでのVLAN]

ハイパーネット助手

ははぁ。VLAN10は左のαを、VLAN11は右のβを使うんですね。
負荷分散してるわけですか。

スーパーインター博士

この状態でISLリンクがダウンすると、どちらかのVLAN全部、もしくはどちらかのスイッチにつながっている側が接続不能になってしまう。

[FigureSW20-05:トランクリンク時の障害]

ハイパーネット助手

あ〜、確かにこうなりますね。

スーパーインター博士

ここでHSRPを使うと…。

[FigureSW20-06:トランクリンクとHSRP]

ハイパーネット助手

お〜。すごい。

スーパーインター博士

とまぁ、このようになるわけだ。

ハイパーネット助手

VLANごとにHSRPグループを分けるんですね。

スーパーインター博士

そういうことだな。HSRPグループで1つの仮想IPアドレスを持つから、別のサブネットの場合別の仮想IPアドレス、つまりHSRPグループにする、ということだな。

ハイパーネット助手

なるほどです。

■ インタフェーストラッキング

スーパーインター博士

さて、今回最後の話はこんな場合だ。

[FigureSW20-07:リンク障害による問題]

ハイパーネット助手

んんんん?
障害が発生したのに切り替わってない?

スーパーインター博士

そうなる。

ハイパーネット助手

え? だって、いままでは。

スーパーインター博士

今までは、ルータの障害、だったからな。今回のように、一部のリンクのみという話ではない。
さらに、HSRPグループのサブネットではないインタフェースの障害だ。

ハイパーネット助手

HSRPグループのサブネットって?

スーパーインター博士

仮想IPアドレスと同じネットワークアドレスを持つネットワークだ。
Helloはこのネットワーク内で伝達される。

ハイパーネット助手

で、そっち側は無事だから、Helloはいつも通り送られつづける、というわけなんですか?

スーパーインター博士

そういうことだな。しかし、デフォルトゲートウェイとして動作するからには、他サブネットへのパスを持っていなければ意味がない。だが、LAN側が無事なため結局アクティブ側を使ってしまう、ということになってしまう。

ハイパーネット助手

う〜ん、自分からアクティブを降りればいいですよね。

スーパーインター博士

なかなかいいアイデアだ。
それが、インタフェーストラッキングだ。

ハイパーネット助手

とらっきんぐ?
とらんきんぐ? あれ?

スーパーインター博士

トランキングはVLANだな。今回は「トラッキング」だ。
インタフェースの状態を「追跡する」、いやちょっと意訳気味に訳すとインタフェースの状態を「監視する」といっていいだろう。

[FigureSW20-08:インタフェーストラッキング]

ハイパーネット助手

プライオリティを下げる

スーパーインター博士

そうだ。プライオリティを下げることにより、自身がアクティブにふさわしくないと言ってるわけだな。

ハイパーネット助手

でも、これってpreemptを使ってないと駄目ってことですか?

スーパーインター博士

そうだ。preemptと併用する必要がある。
つまり、スタンバイルータになるルータにもpreemptを設定しておく必要がある、ということだ。

ハイパーネット助手

ん〜ん〜、さっきの説明だと、preemptはなるべくそのルータをデフォルトゲートウェイにするためにあるようでしたけど。

スーパーインター博士

そうだな。さきほどのメトリックの問題のように、そのルータが正常な間はアクティブにする、という場合に使う。
さらに、そのアクティブルータが他のインタフェースをトラッキングしてる場合、スタンバイもpreemptにする必要がある、というわけだ。

ハイパーネット助手

は〜。
とりあえず、トラッキングとpreemptはセット、ってことですね。

スーパーインター博士

まぁ、そう覚えておくのが妥当だろう。
また、トラッキングをしているアクティブルータのトラッキング対象インタフェースが復旧した場合、プライオリティは元に戻る

ハイパーネット助手

元に戻る? 元に戻るとどうなるんです?

スーパーインター博士

そのルータが、preemptを使っているならば、またアクティブに戻るわけだな。
トラッキングとはインタフェースの状態に合わせてプライオリティを変化させる仕組み、というわけだ。

ハイパーネット助手

ははぁ、上手く考えられてますねぇ。

スーパーインター博士

さて、HSRPはとりあえずコレで終了だ。
次回からはまた別の話をしよう。

ハイパーネット助手

はい。

スーパーインター博士

というわけで、また次回。

ハイパーネット助手

いぇっさ〜。
30分間ネットワーキングでした〜♪

インタフェーストラッキング
[Interface Tracking]
Trackは「足跡を追う」「追跡する」。
ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • 通常、アクティブになったルータは障害が発生しない限りそのままアクティブである。
  • preemptを使うと、そのルータが最もプライオリティが高い場合、必ずアクティブになる。
  • トランクリンクを使用して、VLANでもHSRPを動作させることができる。
  • トラッキングを使用すると、特定のインタフェースのダウン時に冗長化することができる。
    • トラッキング対象インタフェースがダウンするとプライオリティが下がる。
    • スタンバイ側でpreemptを使用している必要がある。

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管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp