30 Minutes NetWorking
No.SW05

30Minutes NetWorking

BCMSN

第5回VLAN(2) トランク/ISL

■ 複数のスイッチのVLAN

スーパーインター博士

ネット君。前回からVLANの話をしているわけだが。

ハイパーネット助手

スイッチでブロードキャストドメインを分割する技術でしたよね。

スーパーインター博士

そうだ。基本的にはポート単位でブロードキャストドメイン(VLAN)を決定し、同じVLANに所属するポートのみ同一のネットワーク(セグメント)とするわけだ。

ハイパーネット助手

でした。

スーパーインター博士

さて。それはいいとして、1台のスイッチでVLANを分割するといっても、ポートの数には限りがある。多くのホストを接続しながらも、それらをいくつかのVLANに分割したい場合はどうする?

多くのホストのVLAN化

[FigureSW05-01:多くのホストのVLAN化]

ハイパーネット助手

もっとポートの多いスイッチを買う?

スーパーインター博士

なるほど。論理的だ。

ハイパーネット助手

えへへ。

スーパーインター博士

しかし、世の中には100ポートも200ポートもあるスイッチがあるわけない。
そういう場合はどうするのだ?

ハイパーネット助手

諦めて、なんとかなる台数にする。

スーパーインター博士

なるほど。単純かつ明快だ。
だがな、ネット君?

ハイパーネット助手

はい?

スーパーインター博士

いくら君が忘れっぽいとはいえ、思考するということを忘れるとはどういうことだ?

ハイパーネット助手

う、うぅぅぅぅ。

スーパーインター博士

ともかくだ。複数のスイッチでVLANを組むことができればいいわけだな。

複数のスイッチでVLAN化

[FigureSW05-02:複数のスイッチでVLAN化]

スーパーインター博士

これで1台のスイッチのポート数よりも多いホストに対し、VLANを作ることが可能になったわけだ。

ハイパーネット助手

なるほどです。

スーパーインター博士

だが、問題がある。
ネット君。とあるVLANのデータは同じVLAN内にしか流れないのだったな。

ハイパーネット助手

そうですよね。VLAN1のホストから出たデータは、VLAN1に所属するポートからしか流れないですよね。
それがブロードキャストドメインを分割するってことでしょ?

スーパーインター博士

確かにその通り。ということは、スイッチを複数台繋げる場合、上の図を正確に書くとこうなるわけだな?

[FigureSW05-03:複数のスイッチでVLAN化・2]

スーパーインター博士

ホストAからのデータはVLAN1に所属するから、SW-AのVLAN1のポートから出て、SW-BのVLAN1のポートが受け取り、ホストBに届く。こうなるわけだ。

ハイパーネット助手

そう、なりますね。スイッチとスイッチを繋ぐのが1本だけだった場合、どのVLANのデータが流れるのかわかりませんからね。

スーパーインター博士

そうだ。だからVLANの数だけ接続するケーブルが必要になる。
だが、無駄だろ?

ハイパーネット助手

無駄といえば、確かに無駄ですけど…。

スーパーインター博士

なので、通常は1つケーブルには1つのVLANのデータしか流れないところ、スイッチ間を結ぶケーブルだけは、複数のVLANのデータが流れるようにする

[FigureSW05-04:複数のスイッチでVLAN化・トランク]

スーパーインター博士

そうすれば、複数のスイッチを繋いでもすべてのVLANのデータが1本ですむようになる。
このように複数のVLANのデータを運ぶ接続をトランクリンクという。

ハイパーネット助手

とらんく。

スーパーインター博士

逆にホストとの接続、つまり1つのVLANのデータしか運ばない接続をアクセスリンクと呼ぶ。

ハイパーネット助手

あくせすりんく。とらんくりんく。

■ トランクリンク

スーパーインター博士

さてさて。複数のスイッチを使ったVLAN構造で、その複数のスイッチを繋ぐのがトランクリンクだ。
トランクリンクには複数のVLANのデータが流れる。ここまではいいな?

ハイパーネット助手

複数のVLANのデータが流れるから、スイッチ間は1本でいいって話ですよね。

スーパーインター博士

トランクリンクを使えば、無駄なくスイッチ間を結ぶことができるわけだが。
これには問題がある。トランクリンクを流れるデータがどのVLANのデータかがわからないと困る、という点だ。

宛先のVLANは?

[FigureSW05-05:宛先のVLANは?]

スーパーインター博士

上の図のブロードキャストはどのアクセスリンクに流れる?

ハイパーネット助手

え? え〜っと…。ホストBが接続されているアクセスリンク?

スーパーインター博士

何故だ? どこにそんな情報がある?

ハイパーネット助手

だって、ホストAがVLAN1だから…。

スーパーインター博士

それは確かにそうだ。つまり、SW-BはホストAがVLAN1だという情報を持っていなければならないわけだな。結果、VLANを構成するすべてのスイッチはすべてのホストがどのVLANに所属するかという情報を共有しなければならないわけだ。

ハイパーネット助手

そう…なるかな?

スーパーインター博士

そうなるのだ。確かにそういう手もあるが、もっと現実的な手段をとろう。
つまり、トランクリンクを流れるフレームに所属するVLANの情報があればいい

荷札(タグ)をつける

[FigureSW05-06:荷札(タグ)をつける]

スーパーインター博士

フレームにVLANをあらわす識別情報をつける。これをタグという。

ハイパーネット助手

たぐ。このフレームはVLAN1ですよっていう荷札ですね。

スーパーインター博士

そういうことだな。
このタグはトランクリンクを流れる時だけつけられる

[FigureSW05-07:タグとトランクリンク]

ハイパーネット助手

へ〜。ホストは特にVLANに所属しているから何かするってわけではないんですね。

スーパーインター博士

そうだ。ホストはVLANを意識することなく、ごく普通にフレームをやりとりする。
特にVLANを使うから何かソフトを入れるとか、ハードを追加するとかそういう必要はないわけだな。

ハイパーネット助手

なるほど。

■ ISL

スーパーインター博士

そして、タグをつけると簡単に言うが、もちろんタグをつけるためのルールがある。
それは、以下の4種類だ。

  • ISL(Inter-Switch Link) … Cisco独自のカプセル化プロトコル
  • IEEE802.1Q … IEEE標準のタギングプロトコル
  • LANE(LAN Emulation) … ATMを使ってVLANデータを運ぶIEEE標準
  • IEEE802.10 … FDDIを使ってVLANデータを運ぶIEEE標準
スーパーインター博士

まぁ、正確に言うと下2つはタグをつけるプロトコルではないのだが。VLANを識別するためのプロトコルとして名前をあげた。
この中でBCMSN的に必須なのは、ISLIEEE802.1Qだ。

ハイパーネット助手

Cisco独自のカプセル化プロトコルと、IEEE標準のタギングプロトコル
カプセル化とタギング? なんで「タグをつける」のに言い方が違うんですか?

スーパーインター博士

それはもちろん、「カプセル化する」と「フレームタギングする」という違いがあるからだよ。

ハイパーネット助手

スーパーインター博士

うむ、それについてはISLの説明の後にIEEE802.1Qを説明する時に話そう。
まず、ISLについて説明しよう。

ハイパーネット助手

いんたーすいっちりんく。
スイッチ間のリンクって意味ですね。

スーパーインター博士

そうだな。そのまんまトランクリンクのことを指す名前なわけだ。
ISLはさっきの説明にあった通り、Cisco独自のトランク用カプセル化プロトコルだ。

ハイパーネット助手

トランク用のカプセル化プロトコル?

スーパーインター博士

うむ。ISLはスイッチ間のトランクリンクを流れる時、ISLフレームという形でデータを流す。
ISLフレームの形はこうだ。

ISLフレーム

[FigureSW05-08:ISLフレーム]

ハイパーネット助手

イーサネットフレームの前にISLヘッダ。後ろにFCS?

スーパーインター博士

そう、つまりイーサネットフレームをさらにカプセル化するわけだな。
だから、ISLはカプセル化プロトコルと呼ばれるわけだ。

ハイパーネット助手

は〜…。
そういえば、VLANのタグはどこいったんです?

スーパーインター博士

それはISLヘッダの中だ。
ISLヘッダは26バイトで中身はこうなっている。

名前ビット説明
DA宛先アドレス400x01.00.0c.00.00(マルチキャスト)
TYPEフレームタイプ40x0(イーサネット)
USERユーザ定義ビット4TYPEの拡張に使う。またはスイッチ通過時の優先度
SA送信元アドレス48トランクリンクの送信元ポートのMACアドレス
LENフレーム長16DA、TYPE、USER、SA、LEN、FCSを除いたフレーム長
SNAP/LLCSNAP240xAAAA03
HSASA上位ビット24SAの上位24ビット。0x00.00.0x(CiscoのOUI)
VLAN IDVLAN番号15VLANの番号
BPDU/CDPBPDU/CDPインジケータ1フレームの中身がBPDU、CDPか判別。
IDXインデックス16フレームの送信元ポートの番号。診断用
RESReserved16トークンリング、FDDIの時に使う

[TableSW05-01:ISLヘッダ]

ハイパーネット助手

この「VLAN ID」がVLANのタグなんですね。

スーパーインター博士

このISLヘッダと、FCSがイーサネットフレームに追加されるわけだな。
よって、最小94バイト、最大1548バイト、ということになる。

ハイパーネット助手

へ〜。……。
そういえば、イーサネットフレームにもFCSってなかったでしたっけ? ISLもFCSありますよね?

スーパーインター博士

ISLは完全にイーサネットフレームをカプセル化する。イーサネットのFCSもまるごと中にあることになる。
ISLのFCSはそれとは別につけるものだ。

ハイパーネット助手

ははぁ。結果的に2つFCSがつくんですね。

スーパーインター博士

そうなる。
さて、ISLの特徴はフレームサイズが大きくなることだな。

ハイパーネット助手

通常にイーサフレームよりも、え〜っと30バイト増えるわけですよね。

スーパーインター博士

その分、トラフィックというか実効スループットが低下するわけだな。
ただし、ヘッダをつける・はずすという作業だけなのでスイッチにかかる負荷が少ない

ハイパーネット助手

ははぁ。

スーパーインター博士

まぁ、これはIEEE802.1Qとの比較の話で話そう。
そしてISL最大の特徴は、やはりCisco独自ってところだな。

ハイパーネット助手

つまり、Cisco製以外のスイッチでは通用しないってことですよね。

スーパーインター博士

その通り。
ちなみにISLのカプセル化してしまう方法を外部タギング処理という場合もある。

ハイパーネット助手

外部タギング……。イーサネットフレームの外に追加する形だからですか?

スーパーインター博士

そういうことだ。

ハイパーネット助手

なるほどです。

スーパーインター博士

さて、今回はここまでにしておこう。
次はIEEE802.1Qのフレームタギングについて説明する。

ハイパーネット助手

了解です。
30分間ネットワーキングでした〜♪

トランクリンク
[Trunk Link]
もしくは単にトランク。
アクセスリンク
[Access Link]
タグ
[Tag]
もしくは「VLANタグ」。
Tagは荷札・付箋の意味。
タギングプロトコル
[Tagging Protocol]
直訳すると「荷札つけプロトコル」
フレームタギング
[Frame Tagging]
ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • 複数のスイッチでVLANを構成することができる。
  • スイッチ間でVLANのデータを流すリンクがトランクリンク。
  • ホストとスイッチ間のリンクがアクセスリンク。
  • トランクリンクではどのVLANのデータかを示すためにタグをつける。
  • タグをつけるプロトコルにはISLとIEEE802.1Qがある。
    • ISLはイーサネットフレームをさらにカプセル化してISLフレームにする
    • ISLヘッダとFCSで計30バイトサイズが増大する
    • VLANタグはISLヘッダ内にある
    • ISLはCisco独自プロトコル

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管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp