GURPS Seeds

各種設定

舞台となる星系と惑星について

 舞台となる惑星は、黄色に輝く主系列星の二番目の惑星です。惑星半径は7009km、1.02Gの重力と1気圧弱の酸素大気を持ち、かつては緑溢れる惑星でしたが、現在は極めて乾燥しています。惑星には液体の水が殆ど存在せず、海のあった場所には大量の塩が残されているだけです。またかつての戦争の影響で地形の起伏は極端に小さく、最も高い山と最も深い谷の高さの差でさえ1000m程度に過ぎません。また低緯度地方では、昼になると水が液体として存在できなくなる程高温になります。自転周期は24.001時間で、恒星を中心とするほぼ真円の軌道を281日掛けて巡ります。
 第二惑星には二つの衛星があります。第一衛星は直径1482kmもある巨大なもので、その表面重力は0.14G、公転周期25日、自転周期も25日で、大気は無く生物の姿はありません。第二衛星は直径50km程度の小さなもので、第二惑星と第一衛星から遠くはなれた軌道を公転しています。
 星系には第二惑星のほかに六つの惑星があります。第一惑星は大気の無い灼熱の世界、第三惑星は殆ど陸の無い海の世界、第四惑星と第五惑星は巨大なガス惑星、第六惑星はやや小ぶりで巨大な輪を持つガス惑星であって、最後の第七惑星は水とメタンとアンモニアの氷に閉ざされた暗黒の世界です。

種族

現行種(強化種)

 現在、第二惑星上において最も繁栄している知的種族です。外見や身体能力は我々地球人類に酷似していますが、若干の相違があります。
 我々との最大の相違点は、彼らははっきりとした超能力を有し、かつその存在をしっかりと自覚的に認識しているということです。ESP、サイコキネシス、テレパシーと言った超能力は自我が芽生える頃からゆっくりと発現し始め、思春期を終える頃(16〜18歳程度)になって完成します。そのパワーには勿論個人差がありますが、種族のほぼ全ての者が何らかの超能力を持っており、複数の超能力を持っていることも珍しくありません。彼らにとって超能力は当たり前の存在であり、それを持たない者の方が珍しい存在であるとされます。
 もう一つの重大な相違点は、彼らは古代種が持っていた恒温性を失っていることです。これは気温が一日中摂氏36度程度である環境では然程不利に働くことはありません。むしろ、食料を節約できるなど有利な側面を多々有しています。これは極めて厳しい環境でも多くの個体が生存できるように古代種が調整した結果なのですが、現行種はその事を知る由もありません。彼らは低気温条件下では行動を極端に制限されます――体温が摂氏25度を下回れば、仮死状態に陥ります。
 現行種はまた、放射線への強い耐性も備えています。これは改良された生理機能によるもので、放射性同位体を優先的に排出したり、細胞の構成物質が損害を受けても致命的な結果を招かないようにする機能の組み合わせです。

古代種

 現在は絶滅したとされている、かつて第二惑星上に高度な文明を築いていた種族です。外見、代謝機能などは我々地球人類とほぼ同一です。仮に生き残りが居たとしても、技術的な支援なしで第二惑星で生きながらえるのは困難でしょう。

種と樹

 古代種最大の遺産である「種」とは、樹木の形状をした極めて高性能の環境操作装置群「樹」を生成し制御する核に当たる装置です。現行種にとっては全くの未知である技術によって膨大なエネルギーを無尽蔵に生成し、これもまた完全に未知の技術の産物である超高性能のナノマシン集合体を用いて「樹」を形成すると共に環境制御を行っています。更に、「種」はまるで人格が備わっているかのように、周囲の人々に優しく語り掛けることがあります。その内容は、平和の大切さを説き、再び広大な宇宙を目指せというものです。
 「種」の調査は、現行種の間で殺人をも上回る最大の禁忌とされています。それどころか、「種」の潜む場所に近づく事自体が既に彼らの倫理にもとるものなのです。尤も、現行種の技術では「種」の姿を見ることは不可能でしょう――幾層にも重ねられた防護措置によって、姿を捉えることはおろか近寄ることさえ困難を極めます。現行種が「種」について持つ知識は、古代種の遺した極僅かな情報の、それも断片でしかありません。
 現在、第二惑星上で七つの「種」が機能しています。

「樹」について

 「種」から生じた樹木状の巨大な構造物が「樹」です。黒褐色のゴツゴツした幹と枝に、鮮やかな緑色をした常緑の葉が生い茂る様は普通の植物と変わりありません。
 「樹」は、「種」の真上に伸びる最も大きな「本樹」と、そこから入り組みながら放射状に伸びる「根」から生えた「分樹」に分かれます。「本樹」は例外なく巨大で、最低のものでも800m、最大のものでは1000mを超えるものがあります。一方で「分樹」は普通の木々と同じ大きさであり、500mほどの間隔で「本樹」から伸びる「根」の上に生えています。

「樹」の機能

 「樹」の主な機能は、周辺の気温調節と大気組成の調整です。変温動物である現行種が活発に活動できるのは「樹」が気温を36〜38度に維持しているからですし、二酸化炭素の固定と酸素の供給を行ないながら空気中の汚染物質を捕捉し分解することで、惑星上の動物は安全な大気を呼吸することができるのです。

「根」について

 「種」から伸びる「根」は、太さ1mmから1mの白色管状の物体です。「根」は単に「樹」へとエネルギーを供給し制御を行なうための構造物ではなく、これも「樹」と同様の環境制御装置として機能しています。
 「根」の機能は、土壌の改質と水の供給です。周辺の土壌に植物が必要とする養分を供給し、同時に汚染物質を回収して分解することで土壌を植物の生育に適した状態に整えると同時に、表面から水を放出して水分を供給し続けます。
 また、しばしば「根」の一部は地表に露出し、そこから大量の水を放出することで沼を作ります。これは現行種にとって貴重な水源となります。更にこの水の中には高濃度の重水素が含まれており、核燃料として不可欠の存在でもあります。

各種設定

資源

化石燃料

 現在は砂漠に覆われている第二惑星ですが、かつては緑の植物に覆われていました。従って、それらが土壌の中で化学的に変化することにより生じる化石燃料が大量に存在します。更に、入植者が化石燃料に頼らずとも生活を送れるだけの技術水準にあったため豊富に残っており、地殻が過去の戦争により大きく削られていることを考えると採掘も容易になっているかもしれません。
 現代地球と同様に、石炭は鉄鋼の生産に用いられ、石油は火力発電を始めとするエネルギー生産や化学繊維などの材料源に用いられます。然しエネルギー生産の主力は核発電や太陽光発電によって代替されています。

鉱物資源

 化石燃料と比べて、鉱物資源は前文明の採掘が行われていたこともあって埋蔵量が少なくなっています。然し今の所世界全体として見れば、不自由するほど少ないという訳ではありませんし、前文明の「ガラクタ」を再利用することによっても鉱物資源は供給されます。もしも資源の問題が起こるとすれば、それは一重に分配の問題であって埋蔵量の問題ではありません。
 最も消費量が多いのは鉄を生産するための鉄鉱石であり、次にアルミニウムのためのボーキサイト、銅のための赤銅鉱と続きます。軽い材料としてのマグネシウムやチタンなどの生産も盛んです。

核燃料

 核分裂反応に用いられるウラン235はウラン鉱石から抽出されます。ウラン鉱石は惑星上に豊富とは言えませんがそれなりの量で存在しており、現在も細々と採掘が続けられています。
 重水素-重水素核融合反応に用いられる重水素は、「種」から放出される大量の水のなかに物質量で1.2%含まれており、これを濃縮して反応に用いています。また、最近は第一伴星から採掘したヘリウム3を用いて重水素-ヘリウム3核融合反応を行う反応炉も建設されています。

エネルギー生産

核融合

 現行種たちの生活に使われる電気エネルギーの殆どは核融合炉で発電されています。その方式は殆どの場合重水素-重水素反応ですが、試験的に重水素-ヘリウム3反応を用いた反応炉も運用されています。

太陽光発電

 核融合発電と比べれば小規模ですが、砂漠地帯、或いは宇宙空間に巨大な太陽電池を運び、発電する方法も採られています。効率が悪い、最大出力が低い、更に機能しなくなった部品の処理が面倒であるなどの欠点はありますが、環境問題となっている放射性廃棄物を出さないという点において優れています。

化石燃料

 ごく一部の後進地域では、未だに火力発電を行っている所があります。排出されるガスに含まれる二酸化炭素による温暖化や、窒素および硫黄酸化物による大気汚染などの問題を抱えていますが、維持が容易であるため中々駆逐されないで残っており、社会問題となっています。

エネルギー輸送

電気エネルギー

 現代地球と同様に、この星においても生産されたエネルギーの殆どは電気エネルギーの形で輸送されます。その殆どは地中に埋設された送電線を経由して行われ、特に開発の進んだ地域では強い磁場に耐える超伝導送電線が用いられています。

化学エネルギー

 得られた電気エネルギーを一度大容量の蓄電池に蓄えたり、燃料電池を用いて適宜少量のエネルギーを取り出したりすることも多々あります。携帯する電子機器を動かすためにはこれ以外の方法はありません。

運動エネルギー

 事実上摩擦ゼロの然るべき材料を用いることにより、はずみ車のようなものを高速回転させることによって運動エネルギーの形で大量のエネルギーを保存する電池が(研究途上ではありますが)存在します。

環境問題

放射性廃棄物

 核反応の結果生じる放射能を持つ廃棄物は様々な形で再利用されますが、それでも処理しきれないものは封印を施した上で地中深くに埋めることになっています。然しこれは飽くまでも正規の方法であり、かなりの量の放射性廃棄物が居住地域の外に無造作に打ち捨てられています。その量は放射線に強い現行種にとっても健康上の問題が生じるのに十分な量であって、郊外のスラムに住む市民にとっては文字通りの意味で頭の痛い状況を生み出しています。

温暖化

 温暖化によって赤道下にある「種」の維持機能に負荷が掛かり、居住環境が悪化する問題が指摘されています。実際、この50年で赤道下における快適居住面積は10%も減少しており、そこに住む人々を核として火力発電や過剰な化石燃料の使用、また強力な温室効果のある物質の使用制限などを求める運動が起きています。

大気汚染

水質汚濁

社会問題

交通機関と物資輸送

国家

企業

科学と技術

 超高度に技術化された社会は、知識探求の場にも重大な影響を及ぼしています。この星には、最早「科学者」は存在していません。居るのは応用科学の専門家に、工学的な知識と実践的技術を身につけた技術者だけです。「金にならない」研究があらゆる研究施設から排除され続けた結果、物理学や生物学などの伝統的な自然科学「だけを」研究する人材と施設が次々と消え去り、学会も解体され、更にはそうした研究が行われていたという事が歴史の中に埋もれてしまったのです。このことは自然科学に限らず、社会科学や人文科学においても共通する現象です。この星において何かしらの研究を行うのであれば、それが如何なる金銭的利益をもたらすかについて、科学的知識の乏しい官僚にも理解でき、かつ説得力を持った論述を行う必要があるのです。
 この事は社会において重大な不利益をもたらすものであると抗議する「科学愛好家」の声は現在でも根強く残っていますが、企業や国家の圧力によって先細りに追い込まれています。
 「科学者」が居なくなったからといって、科学的知識の探求が行われなくなった訳ではありません。これは単に学者達が極めて応用科学的な活動を主軸に据えざるを得ない環境にあるというだけであって、純粋科学的な研究も常に平行して行われています。

物理科学、特に超物理学

 物理学は量子論と相対論を基礎に据え、その上に様々な諸分野を積み上げる形で高度に進歩していますが、こと超能力に関連する超物理学となるとその原理的な基礎の部分では貧弱な記述しか存在しません。その一方で、超能力の引き起こす現象の性質や結果、副次現象に関しては高度な研究が数多くあります。

化学と材料

 分析化学、及び合成化学の両方面において化学は高度に発達しています。理論化学においても、計算機の進歩と物理化学の展開によって物質の様々な振る舞いをかなり正確に予言することに成功しています。
 材料工学は若干の閉塞感を抱えながらも発展し続けています。100年前には想像の産物でしかなかった超伝導送電線の実用化と、核融合炉を構成する各特殊材料の開発がその最大の成果と言われています。

生命科学、生命工学、医療、薬剤

 生命の諸機能は極めて詳細かつ正確に理解されるようになっています。未知の生体物質が次々に明るみに出され、各臓器の新たな機能が解明されると共に、生態系の中における各々の生物に対する位置付けも着実に確かさを増しています。一方で、精神機能に対する脳科学的なアプローチは満足できる成功を収めているとは言えません。超能力と精神の関係についても、生命科学の見地からすれば謎に覆い隠されているのが現状です。
 生命科学の進展に伴って、生命工学や医療は飛躍的な進展を見せています。自由自在に内臓や成体をクローニングする事は驚くべきことでも何でもありませんし、肉体を人工物に置換するサイバネティクスも成熟に近づいています。感染症との壮絶なレースでは汎用免疫技術により圧倒的な優位を確保しつつありますし、多種多様な薬剤は良かれ悪かれ生活に様々な形で入り込んでいます。
 然し、かれらの技術を以ってしても不老不死は後天的に与えることができません。ヒーリング能力者が自らの能力によって不老化することはありますが、それとても限界があります。現在の現行種の平均寿命は200年と言った所です。

精神科学、特に超心理学

 超心理学は未だに物理学的な裏づけを得ることなく、言わばその原理についてはブラックボックスのまま研究を続けざるを得ない境遇に甘んじています。然しこの世界には、惑星の住人全てが明確な形で発現する超能力について自覚的である、という現実の我々の世界と全く異なる「事実」が存在します。従って超心理学はその基礎や存在意義を疑われることの無い完全に確立された一つの分野であって、神秘学的な研究とは一線を画す方法論と知識の体系となっています。

解読学

 第二惑星には、前文明の膨大な遺産が遺されています。その中には明確な意味のある文章として残るデータも含まれており、その中からあらゆる手を尽くして有意味な情報を汲み取る方法論の集大成が解読学です。
 古代種の使っていた文字は現行種にも受け継がれているものの、歴史を過ぎる中でその文法や単語はかなり変化しており、別の言語として扱うに足ります。従って〈古代語〉を修得していない者は〈解読学〉を学ぶことはできません。
 解読学は単なる古代文献の解読技術ではありません。現文明におけるあらゆる工学的な知識を総合的に把握した上で、現在の技術に取り込める知識を探しだしたり、現在の技術を持って再現することのできる技術の奇跡を見つけ出すことのその本質があります。現行種が僅か1400年で技術レベル9に到達できたのは、この解読作業のお陰です。

超能力

現行種の超能力の強さ

 第二惑星の現行種たちが持つ超能力は、宇宙全体の視野から見ればそれ程強力ではありません。念動力は精々軽い人間を一人持ち上げるのが精々ですし、瞬間移動も1km転移できれば種族の中でトップクラスの力を持っていることになります(然も、此処に挙げた例はいずれも体力を限界まで使って能力を強化した場合の話です)。ゲーム的には、彼らの超能力のパワーは12レベルまでに制限されています。これは種族全体に共通する制限であり、これを越えて高いパワーを獲得しようとすれば非常に特殊な背景を設定しなければならないでしょう。

超能力の教育

 殆どの国家では、通常の義務教育とは別に、能力系統別の超能力訓練カリキュラムを採用しています。これは各人が自分の超能力をしっかりと認識し、社会的に正しい方法と目的に則って行使することができるように、理論的な側面と具体的な使い方を教育するものです。

超能力の社会的側面

テレポーテーション

 [自己転移][他者転移]は短距離の移動、それも障害物を挟んでいる場合に極めて有効です。然し、立ち入りが禁止されている場所にこうした能力を使って侵入すれば罰せられるでしょうし、転移によって侵入したことが[痕跡感知]などにより確定した場合にはより重い罪に問われる可能性もあります。転移にファンブルしてそうした場所に迷い込んでしまった場合には、非常に面倒なことになるでしょう。
 また、爆発物や毒ガスなどの危険物を一方的に送りつけるという行為も考えられます。対処が難しいことと、犯人を突き止めることが非常に難しいことのために、こうした行為は例え被害が軽微であっても極めて重く罰せられます。

テレパシー

 種族の成員が全てテレパスではないこの世界では、相手の許可無く[思考感知]や[思考転送]を行うのは極めて失礼な行為に当たります。特に[思考感知]は知らないうちに自分の個人的な情報を知られてしまうため、大変に嫌がられます。会話は[思考転送]を互いに行うことで成立するのが普通でしょう。[思考感知]が倫理的に許されるのは、親子や恋人、或いは作戦中の軍人など特殊な関係や状況にある場合に限られます。
 逆に、技能レベルの低い[精神遮蔽]を常に張っている者は何らかの特別な立場にある者であると思われたり、或いは何か怪しい意図を持っているのではないかと思われてしまう可能性もあります。テレパシー・シールドを常時作動させている者も同様です。これは、企業の重役や諜報員、それに裏社会の人間など秘密を知られることが致命的である立場の人間が[精神遮蔽]やテレパシー・シールドを重んじるために生じた社会的な認識です。
 [精神攻撃][精神痛撃][精神操作]と言った攻撃的な行為が倫理的に許されないことは明白でしょう。然しながら、犯行が行われるプロセスを全く視認することができないため、また被害者の証言だけに頼りすぎると冤罪が増えてしまうため、こうした攻撃を行った者を特定するのは一般的に難しいとされます。尤も、[超能力感知]を持つ者がそばにいたり、超能力の使用を感知する機械が備えられている環境においてはこうした問題は生じません。

サイコキネシス

 特に社会的な問題を生じるような能力はありません。然し、[浮遊]で衝突事故を起こしたり、[加熱][冷却]を用いて物体や他者を傷つけるようなことをすれば、勿論法により然るべき罰せられます。

エレクトロキネシス

 電子機器が社会の中に深く浸透している高度技術社会において、エレクトロキネシスは極めて強力な能力です。[一時停止]は交通機関や発電施設などで使われれば大惨事となるでしょうし、[光使い]で透明になった犯罪者は光学的な防犯システムの多くを容易くすり抜けてしまいます。こうした重大な結果を招きやすい側面を持つため、エレクトロキネシスのパワーを持つ子供は特に重点的に教育を施されます。

サイキック・ヴァンパイア

 全ての技能が極めて敵対的なものであるサイキック・ヴァンパイアは、基本的に行使しないようにと教育されることが多く、そのため高度な訓練を受けることのできる人数が少ないので、犯罪に用いられることも稀です。時折生じる事件が悪質でサディスティックなものが多いこともあり、世間一般のサイキック・ヴァンパイアに対するイメージは良くありません。

ヒーリング

 ヒーリングのパワーを持つ癒し手は、社会の中でもそれなりに特別な存在です。治療や診断に能力を応用すれば(少なくとも治療と診断に関しては)極めて有能な医師になるでしょうし、日常生活でも頼られる存在になるかもしれません。攻撃的な能力ではないこともあり、サイキック・ヴァンパイアとは対照的に世間一般から非常に歓迎される能力になっています。
 然しながら、彼らの特異性はその不老性にあります。自分自身の超能力によって老化を抑え、寿命を極端に延長することができるのです。こうした「長老」の言動は、高度技術社会においても一定の重みを持っています。

ESP

 ESPの各技能、特に[透視][透聴][透覚]は倫理的に望ましくない行為に濫用される恐れがあります。自分自身が楽しむだけならまだしも、誰かに迷惑を掛けてしまえば然るべき罰に処されます。
 [来歴探査]や[目標探知]は捜査活動に極めて有用です。警察組織や軍事組織の人間にはESP能力者が数多くいることでしょうし、日常生活でも活用することができるでしょう。然しこれもまた、個人の私生活を脅かす存在であることに変わりありません。
 [未来予知]はもしかしたら重大な危険から身を守るのに役立つかもしれませんが、人々が予知に頼って生活をするほど当てになるパワーで行われる訳ではありません。現代の占いに毛が生えた程度の認識です。

アンチサイ

 超能力による様々な行為に直接対処することの出来るアンチサイ能力者は、極めて重大な意味を持つ存在です。様々な超能力機器が開発されてはいますが、超能力に対して最も有効な対処法は同じく超能力であるというのが現状であり、従って超能力を用いた犯罪の対象となり易い場所にはアンチサイ能力者が配置される事も考えられるでしょう。

サイバネティクス

第二惑星におけるサイバネティクスの実際

 肉体を機械により置換するというアプローチは医療や軍事において大きな成功を収めていますが、一方で思考や記憶と言った脳の情報処理活動に関わるサイバーウェアは殆ど開発されていません。これは、技術レベル9の世界の科学と技術を以ってしても生きている脳の情報処理活動を正確に把握し、適切な機械を用いてその機能を代替ないし支援することは難しいためです――このことは、「脳は脳を解明できるか」という極めて興味深い問いを喚起するものです。そうした"精神的"サイバーウェアの試作品は存在するかもしれませんが、高い故障率や大きな副作用を伴うでしょう。そして、そうしたものの多くは極めて違法な(つまり、合法レベルのかなり低い)扱いを受けているはずです。
 実用化されているサイバーウェアの多くは四肢、ないし感覚器の代替品です。腕、手、脚、目、鼻、耳、舌、そして分泌腺を含む各種の内臓に至るまで、あらゆる人体の"部品"は機械によって置換することが可能です。そ病気で肉体が立ち行かなくなったと思えば、クローンの内臓と取り替えるよりも機械に置き換えてしまった方が優れている場合も少なくないでしょう。

どのようなサイバーウェアが存在するか

アーム

 四肢のうち、腕を機械で代替するものです。この機械の腕は運動神経および感覚神経と直結されることにより、殆どの作業において生身の腕と変わらない感覚で扱うことができます。ゲーム上、不利な特徴や限定によってCPを獲得した場合を除いて、アームであるために生じる不利な修正はありません。また、腕は二本ありますが、アームを必ず二本同時に導入する必要はありません。利き腕だけを機械に置換するということも可能です。
 アームは自動的にハンドを含みます。アームとは別にハンドを購入する必要はありませんが、ハンドの性能だけを変更することはできます。
 アームにより、次の特徴を後天的に取得することができます。
 「腕の体力」「腕の敏捷力」

ハンド

 手を機械で代替するものです。性能に関する記述はアームのそれに準じます。
 ハンドにより、次の特徴を後天的に取得することができます。
 「手先が器用」「手先の体力」

レッグ

 四肢のうち、脚部を機械で代替するものです。アームと同様、神経系と接続されることで生身の脚と殆ど変わらない感覚で扱うことができます。片方の脚だけを機械化することも可能ですが、本来の肉体を超えた能力を持たせようと思う場合には、行動する時バランスを取るために両脚同時に機械化を行う必要があります。逆に、本来の脚の機能を代替しさえすれば良いという場合はことのことを気にする必要は全くありません。
 レッグにより、次の特徴を後天的に取得することができます。
 「追加基本移動力」

アイ

 感覚器の中で、目を機械で代替するものです。レッグと同様に本来二つ一組で機能する器官であるため、効率よく性能を高めようと思えば二つ一組で機械化を施すべきでしょう。然しレッグと比べると、一方の性能のみが突出していても問題は小さいとも言えます。
 アイにより、次の特徴を後天的に取得することができます。
 「鋭敏視覚」「広視界」「赤外線視覚」「紫外線視覚」「望遠視覚」「拡大視覚」「感覚保護/視覚」「暗視」「データ表示」「眼球防護幕」「ソナー視覚」

イアー

 感覚器の中で、耳を機械で代替するものです。アイと同様、生身の性能を超えた能力を効率よく使おうと思えば二つ一組で機械化しなければなりませんが、必ずしも必須ではありません。
 イアーにより、次の特徴を後天的に取得することができます。
 「鋭敏聴覚」「指向性聴覚」「低周波聴覚」「超音波聴覚」

スキン

 皮膚を人工物で代替するものです。肌触りや外見は生身の皮膚と区別することができません。アームやレッグの表面はスキンで覆われていると考えます。
 スキンにより、次の特徴を後天的に取得することができます。
 「防護点」「音を立てない」「気密」

オルガン

 インターナル・オルガン、つまり内臓を人工物ないし半人工物で代替するものです。これらは天然の臓器と区別を付けられないほど完璧に動作します。
 然るべきオルガンを導入することにより、次の特徴を後天的に取得することができます。
 「濾過装置」「(一時的な)呼吸停止」「恒温化」

ゲームデータ

種族基本セット

 基本的にPCは現行種で作成してください。惑星上でのみプレイする場合は通常通りに作成することになりますが、もしも他の星間国家の住人と接触するようなキャンペーンを行う場合には次の基本セットを用います。

基本セット:現行種  50CP