私は、よく、社内文書に「修整」と書くことがあった。「修正」ではなく。
おお、今日のキーボードでは、変換前にヒントを表示してくれる。

である。
こうなると、もう、私の心の叫びは、容易に類推可能であろうと思われるが、
ソーシャルハッキングの資料提供(笑)的なエピソードを紹介しておく。

むかしむかし、私のいた会社のとある部署には、「頼りない部長」なる人物がいた。
なぜ「頼りない」かというと、社内の下々は言うに及ばず、
社外の顧客先にまで「頼りない部長」という評価が定着していたからである。それはともかく。

どーでもよい社内文書を読んでいた「頼りない部長」氏、オイラの書き散らしたヤツを見咎めて、自席に手招きする。で、曰く。

シュウセイという言葉は、ない。
(゜д゜#)ハァ?
「修整という言葉はないぞ」
と言い、彼の手持ちのポケット辞書を示したのである。彼の辞書に、「修正」はあるが「修整」はなかったのである。

バカヤロー、
そんなケチな辞書に載っているはずがあるか!
そんな腐った議論によれば、「ラレーション」も「デファクト・スタンダード」という言葉も「ない」ではないか!
オレの親父の英和辞典は、戦後直後に祖父からもらったもので、
「コンピュータの語すら掲載されていない」んだぞ、
テメエの使っている「コンピュータ」という言葉も「ない」とでも言うつもりか?
……と喉まで出掛かって、言わなかった。その社内文書は、とりあえず急いでいたからである。泣く泣く、私は、一括変換で、「修正」に置き換えたのである。
「オレは、お前らの言うように案を正したくはない。そもそもお前らを『正しくなく、間違えている』とすら考えている、だからこそ肖像写真をゴマカス意味で『修整』を使っていたのに、なぁ」
と考えながら。
この時の妥協は、高くついた。「修正」の語を使うときに、「頼りない当時部長」に対する反感を思い出し、都度、文章を書く指が止まるのである。なお、「当時部長」と書いたのは、その後、彼は「部長」ではなく「副部長」になったからである(さもありなんw)。

そこで、私は、彼の向こうをはり、小さな辞書を買ったのである。「修正」「修整」の両方掲載されている、表ページの6万語辞書を。
本来私は、もう少し大きめの辞書を使うのであるが、「頼りない副部長」に対抗するがため、買ったのである。

ちゃんと「修整」という言葉は、あるではないですか
と言いたいがために。

さて、どこかで、私は自分のことを「人材派遣業(もどき)」をしている、と書いた。ということは、あちらこちらの「お客さま(しかもクチイレ稼業の手も借りようと考えることのできる比較的大手)」を渡り歩いた、と言ってもよい。今日はA市、明日はB市という仕事になると、持ち歩く荷物(辞書等)は小さいほうが望ましい。
ということで、私の机は、「いつ異動になってもよいよう」カバン一つで脱出オサラバできる体制になっている。……なっていない? いや、そのゴミ本は(オイラのゴミのような仕事とゴミといっしょに)周りに押し付けて去ることを想定している。

とある部署に異動したときのこと。オイラの大先輩氏(本人は青年と主張するが、老人と言っても過言ではない)が六万語辞書を見た。

今日び、それはないだろう。
そんなものを使わず、インターネットのオンライン辞書を使うだろう?
しかし、この辞書は重宝するのである。
世の中の(クチイレ稼業の手を借りようという)カイシャには、イロイロなものがある。
コンピュータ? んなもの、テメェで用意しやがれ。回線もLANも一切使わせないぞ
という会社、
社内のメールアカウントを取りました(と自社開発のメーラで送ってきたものを自社開発の掲示板で見る)ので、随意に使ってください
という会社、果ては
PCは貸してやろう。でも、そのLAN、外部と隔絶した(閉じた環境)だから、プロクシ設定してもインターネットは見ることできないよ?
という会社まで。つまり、個人で使う分はともかく、作業場が、必ずしもインターネット使える環境とは限らないのである(どうかすると、「携帯電話の持込も禁止」という所すらあったりする)。

ということで、事務所の私の机には、必ず、薄い国語辞典を忍ばせていたのである。