日本語の「省略語」も、非日本人にとっては悪夢だという。

…………。

どれか1種類にしやがれよ? と、感じるそうである。無理もない。単に日本語の勉強が不充分なだけであるがw。

さて。とある書(蔵書一覧所収)によれば、「気色(きしょく)悪い」という方言が省略され、「きしょい」という省略形が使用され、さらには「きしょっ!」という用法まで流布しつつある、という。

「気の色って、どんなの?」
と聞く手合いは、実は日本語の勉強が不充分である。ちゃんと、きっちり、日本語を勉強すれば、下記の古語が今日に生きながらえたと類推できるはずである。
「気色(けしき)」……ようするに今日の「きぶん」「きもち」。「みけしきすぐれぬごようす」といえば、要するに病気っぽく気分悪そうにしている、ということ。
ちなみに、もっときちんと古語も勉強すれば「気色悪し(けしきあし)」で、「気分悪い」という語が現在に遺ったということがわかるはず。
つまり、本来「気色悪い」といえば、「こちらが病気っぽく気分悪くなりそうな感じのストレッサーである」という意味だったのである。なお、その研究によれば、「きしょい」のイメージはプラスに転じつつあり、マイナスイメージの語は「きしょっ!」と省略形で言うようになっているという。
冗談交じりに、「そのうち『き』と省略されるかもしれない」と筆を滑らしているが。
私にいわせると、日本標準語(ただし俗語)では、すでに1音節で省略されているものが複数あると考えられる(しかも、場合により、母音が発音されず、ロシヤ語の軟子音風の発音になることもある)。
コジツケではあるが、いくつか紹介しよう。

まず一つ目は「ちっ」である。そう、舌打ちの音である。この語(?)は、この直後に紹介する語(?)と並んで、欧米人に通じかねない呪詛となりうるので用いる際には注意を要する。
顔をしかめて「チッ」と舌打ちする日本人は、果たして純粋に、舌打ちのみをしているのであろうか。

(人間界の知恵も礼儀もない)畜生
の「畜生」の語を「ちっ」1語(?)に凝縮してはいないか?持論を補強するにも反論を探すにも、難しそうだw

次に紹介するのは、「ちっ」を歯擦音化した「しっ」の語(?)である。この語は、きわめて注意を要する。というのは、「しっ」は、まぎれもなく、英語の呪詛「シット」に聞こえるのである。早合点した欧米人が「日本の英語教育は歪んでいる」と某新聞社に投書したぐらいの危険性を有する。ちなみに、同様に、日本語が充分に欧米人に通じるものとして「あぶない!」がある。自動車に轢かれそうになっているひとに「あぶない!」と怒鳴ってみよう。「Have an eye」と聞こえる。きっと危機を脱して、「サンキュー」と言ってくれるに相違ない。

さて、最後に紹介するのは、「ケッ」である。唾を吐くマネの擬音であるが……。「けったくそ悪い」という(標準語化しつつある)方言の省略と考えられないか? 「きしょっ!」と「けったくそ悪い」は統合され、「ケッ」に落ち着く(すでに?)と考えられるのであるが。

以上、とりあえずは、主観である。より客観的な、薀蓄らしいグチで、このページを締めくくるとしよう。

ページの先頭に、いくつか日本の省略語を紹介した。大体、二音節である。日本人は、長ったらしい外来語を無理やり二音節、もしくは二音節+二音節の組み合わせで4音節にするのが大好きな輩と考えられる。 よく利用するのが「コンビニ(エンスストア)」である。そして物を買うのであるが。

「お客さまは神さまです」
という格言(?)は、タテマエに過ぎない。コンビニには、王さまが、デン、と居座っている。それは、金銭の出納を司る、王さまの複数形、レジである。
  1. もちろん正しくは「レジスター」である。
  2. 「王さま」の複数形をレジというのも(どうでもよいが)不正確のそしりを免れない。

さて、コンビニを出ると、空には、飛行のための機械が飛んでいるかもしれない。子供ならば、騒ぐかもしれない。
「ヘリだぁ!」
外縁がどうしたというのだろう?
職人なドイツ人が、20世紀に、学者魂を発揮してギリシャ語で「歪んだ(ヘリコ)」「翼(プテロス)」なる垂直上昇可能な飛行機械を開発した。今日には「ヘリコプター」と伝わるシロモノである。
さて、「ヘリコプター」は、「日本語2音節化の法則」に従い、当然のごとく「ヘリ」と省略されたのである。
いや、某SF作家(日本人)は作中で、無理やり「ヘリコ」と省略している。……しかし、違和感は拭えない。
今日、「ヘリ」と私自身が口から発音するなり文書に書くなりする都度、暗澹たる絶望感に襲われるのである。
「ヘリ」だとぉ? 外縁がいったい、どうした?