Revolution Op.9
ものすごい雷の音で俺は目覚めた。
薄暗い部屋を雷の光が照らす。
「……ここは……?」
その部屋は俺の部屋ではなかった。
どこかの宿の一室…って感じだ。
イマイチ記憶がはっきりしない。
ふと部屋を見回すと、俺が寝ていたベッドの他に3つのベッド。
それぞれに俺と同じぐらいの子供が寝ている。
「いったい何だよ…これ…」
とりあえず、ソイツら起こして事情を聞こうと思った。
このままじゃ頭がコンランする。
「…………」
立ち上がろうと思って気付いた。
俺の着ている服……どうやら大人用らしく、全然サイズにあってない。
「なんだよコレは」
とりあえず俺は上着だけ着ると、一番近くのベッドに寄る。
頭にわっかをつけたチビが、俺の様に大人用の服を着て気持ちよさそうに寝ている。
「オイ、起きろよ!」
ゆすってみるが起きない。
チビの口がかすかに動く。
「…ん?」
俺はチビの口元に耳を近づける。
「……にく…さかな……」
……だめだ。起きたところで役に立たんな…。
俺は諦めて他のベッドへ行く。
今度のヤツは金髪で端麗な顔立ちをしている……。
来ているものは…大きな…ぼーずの服か?コレ……。
とりあえず起こそうと思ったら、目を覚ました。
開かれた瞳は…宝石の様なキレイな紫。
……もしかして、いいトコのおぼっちゃんか?
「…お前……ダレだよ……」
…げ……性格悪そう……。
「…なんだよ。ココどこなんだ?」
「俺だって知しらねえよ。起きたらこんなんだったんだよ」
金髪のぼっちゃんはマジマジと自分の来ているものに目を通す。
「………ま……」
「え?」
なにか聞き取れない程小さな口で一言もらす。
俺は反射的に聞き返した。
「…お前には関係ない……」
……かわいくねー……。
コイツとコミュニケとろうとしたのが間違っていた。
俺はさっさと残りの一つのベッドへ向かう。
サラサラの栗色の髪。整った顔立ち……。
「おい。起きろよ」
とりあえず俺はソイツを揺する。
「…ん……」
ゆっくりと開かれた瞳は…透明感のあるグリーン。
決してハデではないが、惹きつけられる美しさがある。
「……お前、なんでココにいるか分かるか?」
俺、何きんちょーしてんだよ……。
コイツは周りを目だけ動かして確認するとボソっと言う。
「…知らない……」
……かわいげがない……。
なんだかやりずれ〜奴らだよ……。
「とりあえず、なんでこんな所にいるのか協力して解明しようぜ」
俺は気を取り直して発案する。
「俺、悟浄。よろしくな」
…人がせっかく好意をもって接してやってんのに……。
興味ナシってやつですか?ムカツク。
俺の怒りのガンつけに気付いたのか、金髪がやる気なさそうに
「江流だ」
という。
茶髪の方に目をやると、無表情のまま
「……悟能」
と小さな声でいう。
俺、だんだんヤル気なくなっていくぜ………。
「お前ら、少しは笑えねーのかよ……」
…ちなみにサルはまだ寝ている。
結局俺たちは会話もなくここに数時間いる。
外はあいかわらずの雷雨。
これじゃあ、ここから出ることも出来ねぇな。
宿屋(仮)のせまい部屋が雷鳴と雨音に支配されてるみたいだ…。
「オマエの親とか、今ごろ心配してんじゃない?」
俺は江流に尋ねる。
別に知りたかったワケじゃない。
ただ、このイヤな沈黙を壊したかったダケだ。
「…親はいない……」
コイツ…親いないんだ……。
俺の頭の中には一人の女性。
母親という名の…他人。
……親ジャナイ……。
「…でも、帰るべき所はある。俺の…大切な所へ…」
……大切な人…?
ああ、そっか、そうなんだ。
大切な人。
俺は愛されていないけど…アノヒトは俺の…大切な人なんだ。
…アノヒトの所へ帰りたい……。
でもなぜだろう…。
…アノヒトの体が…血が流れている所が…頭に浮かぶんだ……。
「…お前はどうなの?」
頭から離れないその映像(イメージ)を消したくって、それを隠すように、俺は悟能に話を振った。
「…親はいない…帰りたい所も、大切な人もいない」
俺と同い年ぐらいなのに、ソイツのみせた瞳は、ゾッとするぐらいの闇を秘めていた。
それと同じくらいに感じられる………
「笑いたくないなら、無理に笑わなくていい。でも……」
俺は悟能を引き寄せる。
「泣きたいのに、泣くのをガマンするな」
俺の心の中で何かが変わった。
俺は悟能の背中に手をまわすと、ぎゅっと抱きしめる。
「帰る所がないなら俺と暮らそう。俺がお前の大切な人になってやるよ。…だから、俺の胸では泣いていいぞ」
悟能のグリーンの瞳に涙が集まる。
それは一筋の線を描き流れる。
悟能はゆっくりと顔を上げた。
そこで初めてアツイの年相応の笑顔を見た。
窓の外、いつの間にか雨は上がり、陽の光が差し込んだ。
俺が目を覚ますと、部屋は薄暗かった。
はじめは明け方かと思ったが、よく見ると夕方らしい。
部屋を見回すと、他の3人も寝ている。
「…俺ら……どんだけ寝てんだ?」
「……ん……」
八戒が目を覚ましたらしい……ってナンデ同じベットに寝てるワケ?
……なんにもしてねえよな……。
「あれ…もしかして夕方…だったりします?」
まだ眠そうに目をこする。
ベッドをおりるとのびをする。
「…あ、悟浄」
八戒が振り返る。
「…よく覚えてないんですけど……。夢の中であなたに救われたような気がします」
………俺もお前に救われた気がするゼ。
──── Revolution
END
くりこし当選2001のそーサマよりリク、子供な4人、もし出会ったら…。のことでした。
(ちなみに年は8歳ぐらい。悟浄母が死ぬちょい前です)
私コミック派なもんで、実はまだ幼少八戒をみていないんですよね…。
なんか違ってたらスイマセン…。
どうやって出会わせようか迷いました……。で、ふと思いついたのが、「4人とも子供にされて、記憶がーも子供のままなら子供時代に出会ったコトと同じになるじゃん」デス…。
そして書いているうちに、5×8になりました。
しかも悟空がいると話がまとまらなくなりそーなんで寝かしちゃいました。
そーこサマ、いーかーがです♪(森の音楽家のフレーズで)
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