Kinderszenen Op.7
とある街。
八戒はいつものように買い出しに行った。
「お兄ちゃん、これあげる」
その声に下を見ると、5歳くらいの男の子が八戒に青色のアメを差し出していた。
「僕はいいですから」
八戒はにっこり微笑み男の子の頭をなでる。
「あげるの〜」
それでも尚アメを差し出す男の子。
「ありがとうございます」
というと、八戒はアメを受け取り食べる。
その瞬間、八戒の視界が揺らぐ。
まさかこのアメ、と思いアメを吐き出す。
地面にヒザをつき、かすむ目で男の子を捜したがその姿を見つけることは出来なかった。
「…ということがあったんですけど……」
と、3人に事情を説明する八戒。
…しかしその姿は……。
「アメを途中で吐き出したんでこれぐらいですんだみたいなんですけど…」
…身長は155p程…年の頃は12・3といった少年の姿をしていた。
「…どうしましょう……」
「みつけたぞ、三蔵一行。今日こそはお前達の命……」
そう言いながら登場した紅孩児(一行)のセリフがそこで止まる。
その視界の先には悟空よりも小さい…八戒の姿…。
「…今日の所は一旦引く…。しかし次に会った時は…」
関わりにならないよう、この場から逃げようとする紅孩児の服を悟浄が掴み引き留める。
「そのまま帰るなよ…」
「…俺達を関わらせるな…」
紅孩児の頬を一筋の汗が伝う。
「もう十分関わっている。どうせなら最後まで関わっていけ」
「…というわけなんです」
簡単に説明する八戒。
話を聞いた紅孩児が少し考えて口を開く。
「恐らくそれはメルモの飴だな…」
「メルモの飴…ですか…?」
「その昔、東方の島の少女が赤と青の飴を使い、その身の年齢を自在に変えた…という話がある。有名な話だが、まさか実在するとはな…」
八戒は小さなビニールに入れた食べかけの青色のアメを見る。
「…ということは赤色のアメを食べれば元に戻るのですか?」
「薬の効果も少ししか出てませんし、これぐらいでしたら解毒剤作れますよ」
いつもと違い八戒の頭上から八百鼡が言う。
「どれぐらいで出来る?」
まさか敵に助けてもらうなんて…と思いつつ三蔵が言う。
「そうですね〜3日ですね」
しかたがなく3日、その街に泊まることになった。
部屋は生憎3日間ともシングルが3つしかとれなかった。
予想通り、悟浄と三蔵と悟空が1人部屋がいいと、もめはじめる。
八戒はふぅとため息をつく。
「ちょうど3日間ですから、僕が1日ずつ部屋を変わります…」
♪1日目。悟浄の部屋♪
「今日は僕ソファーで寝ましょうか?」
八戒はシャツだけをパジャマ代わりに着ている。
小さくなっているのでちょうどTシャツがおしりのあたりまでくる。
「俺がソファーで寝るって」
そういいつつ悟浄の視線が定まらない。
肩幅があわず、ずり落ちそうな肩。
シャツの下の白い足。
裸エプロンと同じぐらい男のロマンである素肌に彼氏のシャツ状態である。
「一緒に寝ましょうか?」
いつもの整った笑顔ではなく、まだあどけない笑顔。
悟浄は自分の顔が赤くなるのがわかった。
明け方、悟浄が目を覚ますと、八戒は悟浄の胸に抱きしめられるように眠っていた。
女と寝る時の癖で、自然に抱き寄せてしまったらしい。
八戒はまだかわいらしい寝息を立てて眠っていた。
おもわずその寝顔に見入ってしまう。
ゆっくりと顔を近づける。
お互いの唇があと少しで合わされる…という瞬間、八戒が寝返りをうつ。
悟浄は。はっと我にかえる。
「…やっべえな…ショタじゃロリよりシャレにならないぜ…」
♪2日目。悟空の部屋♪
「もう寝ましょうか」
いつものように八戒が言う。
悟空にとって小さい八戒は弟のように思えた。
自分より小さい存在が嬉しかった。
いつもはすぐに寝てしまう悟空だが、なかなか寝付けない。
寝ている八階の髪からほのかにシャンプーの香りがする。
12・3歳という子供と大人の中間の姿。
可愛らしさと綺麗さが混ざり合った色気が感じられる。
ドキドキと胸が高鳴った…。
悟空は初めて眠れない夜を体験した。
♪3日目。三蔵の部屋♪
その夜は雨が降っていた。
「やっと明日元に戻れますね…」
「ああ…」
三蔵はいつものようにコーヒーを飲みながら新聞を読んでいた。
「…僕、先に休ませていただきますね」
おやすみなさい、と言ってベッドに入る。
それから半時ほどたった頃、ふと三蔵がベッドに目をやると、布団がかすかに揺れていた。
「…八戒……?」
三蔵が布団をめくると八戒は丸まって泣いていた。
「…三蔵……すいません…」
いつもは抑えられている感情が、子供の身のため抑えられない。
三蔵は八戒を抱きしめると、泣きやむまで髪をずっと撫でてやった。
八戒が子供になってから3日。
八百鼡の作った解毒剤によって八戒は元の姿に戻った。
その八戒の姿をみて三人がため息をつく。
───────
俺…ショタじゃないよな……。
END
最近スランプです。何書いてるかわかんねぇよ…。
まあ今回の話は三人がショタ心と戦う…といった物のハズ…だった……。
タイトルは子供の情景のドイツ語です。
ノベルOp1〜20に戻る