甘い思い出 Op57
……それはまだ何も失う前…
幸せだった頃……
「ねぇ…悟浄……」
ただ、互いを求めあって…
ずっと二人でいたいって…そう思って……
それだけを求めて…
「僕たち…このまま一つになれたらいいですね」
冷たいシーツの感触と暖かい肌の感触。
縋るように抱きしめて…
不安を断ち切るかのように…
「昔、花喃とも約束したんですよ…」
でも、もう花喃はいない…。
どこにも……
「貴方はどこにも行かないですよね…」
繋いだ手から伝わる暖かさが…いつまでも消えないように…
「貴方は…どこにも行かないですよね」
伝わる暖かさも確かにここにあるのに…この不安は何だろう…
「…悟浄……」
言葉なんていらないんです。
こうして抱きしめ返してくれる…
ただそれだけでいいんです。
「ねぇ、悟浄…愛してますよ…」
ずっとずっと貴方を…。
ずっとずっと貴方だけを…
このままずっと貴方といたい…
貴方がいればそれだけでいい…
愛してます…
ずっと…一生……
だからずっと僕の側にいて下さいね。
「悟浄……」
安らかな寝息が伝わってくる。
「もう…悟浄、寝ちゃったんですか?」
悟浄の寝顔にそっと口付ける。
それだけで幸せです。
どうしようもないくらい…
貴方がここにいるだけで幸せです。
悟浄の胸に顔をうずめて眠る…。
貴方の香りが僕に伝わる。
貴方の体温も…僕に伝わる。
このまま貴方の色に染めてください。
僕と貴方の境が見えなくなるぐらいに。
そうして僕らは一つになる。
「…いい夢が見られそうですね…」
貴方に包まれているから…。
だから今…とても幸せです。
「悟浄…愛してます…」
それは幸せだった頃…
まだ何もかも…失う前……
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