過ぎ去った幸福  Op53

 

それはずっと降り続いていた雨が止んだ日の事だった。

雨の日の間、ずっと何かを思い詰めていた八戒がゆっくりと口を開いた。
−−−今日ここを出ていきます……お世話になりました……。
突然言われたその言葉が……俺には理解できなかった。
呆然としている俺の前で八戒は小さく頭を下げ……出ていった。
俺は動くこともできず、ただ見えなくなるまでその後ろ姿を見ていた。


俺はその時後を追うべきだったのだろうか……。
余りに突然の事で何もできなかった。
アイツは何を考え、悩み……そしてこんな行動にでたのだろうか……。
ただあんな一言を残して……。


八戒が家を出てから数日たった……。
俺はただ毎日何をするわけでもなくぼんやりとアイツの事を考えていた。
食事をする気にもならず、ただ灰皿から吸い殻が溢れ続けた。

居なくなってから気づく……。
居る間は気づかなかったのに……。
俺の心の中で八戒がそこまで重要な位置を占めていたなんて……。
そこまで八戒を求めていたなんて……。
でも俺は追わない……。
アイツが自分の意志で出ていったのだから……。


それでも心の中では求め続けるのだろう。
もう戻らない日々を。
幸せだった頃を思い描いて……。
アイツが戻ることを夢みて……。
祈ることだけをして……。
いつか戻るようにと……。

過ぎ去った幸福を………

 

 


意味があまりない程短い一本です。
八戒ポエム(笑)はOpシリーズでやってるけど他の人物ポエムはやってないんでやってみました。
ネタは謝徳会(しゃとくえ:宗教行事)中に闇管が与えてくれました。
ちなみにタイトルはメンデルスゾーン無言歌集からです。
2年の後期試験で無理して弾きましたv
難しかったけど好きです〜

予告(笑)
この先、暗いネタが続きます。
理由は久々に長編ダークを書こうとしたら久々すぎてなかなか書けない……。
いきなり長編はいかんだろう……とおもったので。
何本か短編で準備運動です。
腕がなれたらまた『ギャグ』とか『甘』とか書きますね〜


 

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