48 STUDIES Op48
7.絞り芙蓉(しぼりふよう)



……たった一つの行いが……運命を変える……。
なんでそんな事をしてしまったかと考えても時は決して戻らない……。


なんでそんな事を……と原因をあげたらキリがない。
その日は雨が降っていたとか……
ちょっと酔いすぎていたとか……
機嫌がわるかったとか……
理由にならないイイワケ……
本当になんであんな事をしてしまったのだろうか……


その日俺が帰ってきたのは随分と夜が更けてからだった。
その時八戒はまだ起きていた。
雨の日だから……
「おかえりなさい、悟浄」
それまで思い詰めたような暗い顔をしていたのに、ぱっと笑顔を作る。
本当の自分を隠すための笑顔。
自分の本心に誰も近づけないための笑顔。
それは……拒絶……?
誰にも立ち入らせない……。
それが気にさわる……。
普段ならそのまま見て見ぬ振りをしたかもいれない。
だがその時は、かなり酒が入っていたし機嫌が悪かった……。
そんな八戒の笑顔が気にくわなかった。
もう何年も一緒に暮らしているのに……。
それなのに八戒は自分にすら心を許さないのだ……。
笑顔という壁でやんわりとはね除けられる……。
─── ムカツク……。
「悟浄?どうかしたんですか?」
─── 壁をぶち破って本心にふれてみたい。
「悟浄……?」
気がつけば八戒に口づけていた……。
軽いキスではない。
片手を背中に回し、もう片手で八戒の顎を掴む。
無理矢理口を開かせ、しつこい程に口内を犯す。
呼吸を遮られ、八戒が苦しそうに身を捩るがしっかりと押さえ込み決して逃がさない。
段々といつまでも逃げようと抵抗を示す八戒に怒りを感じ始める。
……自分は拒絶されているのだと。
「……お前は……俺の事嫌いなのか……?」
俺はこんなにもお前に惹かれているのに……。
怒りとも欲望とも言い切れない感情がこみ上げてくる。
……心が暴走する……。
「……悟浄……何を……」
まだ荒く息をつく八戒をテーブルに押しつける。
その衝撃でコーヒーの入ったカップが倒れ中身がこぼれる。
でももうそんな小さな事は気にならなかった。
……もう八戒しか見えない……。


「…や……もう……やめてください……」
そんな八戒の悲痛な声ももう俺の耳には届かない……。
俺は狂ったように何度も八戒の唇を奪う……。
半ば破るようにして八戒の服をぬがせる。
段々と涙混じりの声になっても、それでもそんな制止の声を無視し続けた。
八戒の肌はシルクのようになめらかで気持ちが良かった。
俺は無心にその肌を味わい続けた。
やがて八戒の抵抗がぴたりと止んだ。
「……八戒……」
名前を呼んでも反応がない。
その顔をのぞき込む……。
……何も映さないうつろな瞳……。
何も見ず……何も感じない……。
─── 俺を感じろよ……
乱暴に八戒をテーブルにうつぶせに押しつける。
慣らしてもいない、堅く閉じた蕾に己のものを押し当てる。
「……!やっ……やめて……」
急に八戒が暴れ出す。
そんな八戒を力で押しつけその身を進める。
しかし八戒が抵抗するのでなかなか入らない。
一度八戒から体を離すとテーブルの側にあった椅子に腰を下ろす。
自分にかけられていた力が消えてほっとしている八戒の腰を掴み、勢い良く自分の上へと降ろす。
「……や……あああ……」
八戒が力を抜いていた事と重力によって俺のモノが半分ぐらい八戒の中に収まる。
かなりの痛みに八戒の体が震える……。
それでも俺はかまわずにすべてを八戒の中へと収めた。
そして無理矢理体を揺らす。
八戒の秘所から流れる血液が結合部を伝って俺の体に流れてくる……。
……そんな事どうでもよかった……。
「やめ……い……ああ……」
悲鳴とも嬌声ともとれない叫び声が部屋に響く。
力が入らないのか八戒の体がぐったりと傾く……。
俺はそっと八戒の体に腕をまわす。
俺の手が八戒にふれると八戒の体がピクっと揺れた。
俺はそのまま左手を八戒の胸に、もう片手を中心へと移動させ同時に刺激を加えてやる。
「ん……ああ……やだ……」
「……なあ八戒……俺の名前、呼べよ……」
俺は八戒の耳元でささやく。
「…や……ん……んんん」
「……呼べよ!」

いつになっても八戒の口から俺の名前が出ることはなかった。
俺はそのまま八戒を荒々しく抱いた。
そして……気を失った八戒を自分のベッドに連れていき、一晩中ずっと抱きしめて眠った……。



俺が目を覚ました時、八戒はまだ眠っていた。
俺はそっと八戒を抱き寄せる。
その感覚で八戒が目を覚ます。
「おはよう、八戒」
軽く八戒に口づける。
「……!!」
その瞬間激しく体を突き飛ばされる。
八戒はシーツで体を隠しながら俺から距離を置く。
「……八戒……どうしたんだよ……」
俺に向けられる冷たい視線……。
……ケイベツ……?
「……信じられない……」
ゆっくりと開かれた唇から漏れる……小さなつぶやき……

そのまま八戒は出て行き……二度と戻らなかった……。

たった一度の激情に……すべてを失った……。
後悔しても時は戻らない……。
それでも激しい後悔だけが、いつまでも俺の心に渦巻いた……。

 

 

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