48 STUDIES Op48
48.裾野(すその)




「八戒ちゃんv
夕飯後の片付けをしている八戒の所に悟浄が猫撫で声を出して近付く。
100%何か企んでいる顔だ。
「頼み事あるんだけど…」
「嫌です」
『頼み事』の内容も聞かずに即そう言う。
聞くまでもなくロクでもないことだとわかっているからだ。
「話くらい聞いてくれても良いだろ」
「減るから嫌です」
『減るもんじゃなし』と悟浄が言う前に先手を取って八戒が言う。
悟浄は溜息を吐くとその場を離れる。
諦めたかな、と八戒は洗い物を再開した。


洗い物を全て終え、手を拭いているところに悟浄が再び現れる。
何度来ても無駄ですよ…と言おうとしたとき、悟浄の手に何かが握られていることに気が付く。
「まぁまぁ、八戒さん。酒でも飲みながら一つお話しだけでも…」
悟浄の手に握られているのは酒の瓶…。
それも悟浄秘蔵の物ではないか。
八戒は前々から一度のみたいと思っていた。
……こっそり飲んじゃおうかな、と思うくらいに。
「そう言うことなら話は別ですよ
八戒はにっこり笑ってそう言った。


「やっぱりいい味ですね」
八戒は悟浄秘蔵の酒を一口飲むとそう言う。
さすがに秘蔵と言うだけあって予想以上の味にかなり御満悦だ。
「で、話なんだけどさ…」
「もぉ、何でも言ってください
すっかり御機嫌の八戒はさっきとは全く別の態度で言う。
そんな八戒に悟浄は安心して一冊の本を取り出す。
「……待って下さい」
その本には見覚えがある。
カバーがかけてるので表紙は見えないが、そのカバー、大きさからいって…こないだのアレではないか。
「頼むって。どうしてももう一個試したいのがあるんだよ」
八戒の顔の前で手を合わせると拝むようにそう言う。
試したい…というのはSEXの体位のことだろう。
冗談ではない。何故そんなのに付き合わなくてはならない。
「そんなの嫌ですよ」
「頼むって…」
八戒はそっぽを向いてグラスに残った酒を一気に飲み干す。
すっかり機嫌を損なってしまったようだ。
「……八戒、ナポ●オン飲んでみたくねーか?」
「ナポ●オン?」
悟浄の言葉に八戒が反応する。
「そ、手伝ってくれたらナポ●オン買ってやるよ」
「………」
八戒は頭の中で二つを秤に掛ける。
その結果…。
「良いですよ」
ここで断ったところで悟浄は諦めないだろう。
もしかしたら強硬手段に出るかもしれない。
どうせそうなるのだったら少しでも得したい。
八戒は心の中でそう呟いた。


「ちょっと…悟浄…」
「八戒、動くなよ」
悟浄は横向きになった八戒の片足を持ち上げ、自分の足を絡ませる。
そして、そのまま自身を八戒の中に収めていく。
「あ…ごじょ…」
いつもとは違った力のかかり方に八戒が声を上げる。
変に力が入ってしまい、思ったよりも苦しい。
ナポ●オンのためとはいえ、少し早まってしまったかもしれない。
「…よし、入った」
時間をかけて全てを収める。
「ん…や……」
ホット息を吐くがすぐに悟浄が上体を離す。
そして、体の向きを動かし始める。
「……何をするんですか」
八戒が苦しそうに声を上げる。
「何って、このまま向きを変えるんだよ」
「や…」
八戒の中に入っている物がその中で向きを変えようとする。
その不思議な感触に力が入ってしまう。
「八戒…力入れんなって…まわんねぇだろ」
そう言われて力を抜ける物でもない。
「や…も…無理……です…む…り……」


「八戒、大丈夫か?」
悟浄が八戒に水の入ったグラスを手渡す。
八戒はゆっくりと体を起こすとグラスを受け取る。
そして、水を飲むと息を吐く。
「…僕、やっぱりSEXは普通が一番良いと思うんですよ」
少し恨めしそうにそう言う。
「でもさ、たまには変わったのもいーんじゃねぇの?
 長い付き合いになると、厭きたりするじゃん」
そう言って八戒に軽く口付けして『でも、愛は変わらねーけどな』と付け足す。
「…『偶に』ですよ」
恥ずかしそうに目を逸らしながら八戒は小さな声でそう言う。

そうして今日も幸せな夜が過ぎていく…。



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