48 STUDIES
Op48
45.松葉くずし(まつばくずし)
「やり直しです」
その日も沙悟浄は機嫌が悪かった。
本日で3回目の提出だった書類が再び戻ってきたのだ。
やっぱり自分は会社員には向かない
───
と思う。
高校を赤座布団をいっぱい貰いつつなんとか卒業。
そして働きに出たくないので無理矢理大学に進学。
ギリギリの単位をギリギリの点で取り、女は食えるだけ食う。
卒業後は3年ほど気ままにフリーター生活を送ってみたりした。
しかし、いい加減年も年になり、親に無理矢理コネを使ってそこそこよい会社に入れられた。
だが、良い会社に入ったところで馬鹿は馬鹿。
働こうにも頭が着いていかない。
はっきり言ってもう働く気も失せている。
それに対して、先程笑顔で書類を返してきた悟浄と同い年の部長
───
名を猪八戒という。
枯葉有名進学校をトップで卒業。
有名な大学へ入り、更に大学院へ進み。
周りに望まれこの会社に入り1年であっという間に部長だ…。
悟浄とは根本的に頭の造りが違うのだろう。
「しっかしなぁ……」
頭の造りが違うとはいえ、同い年の奴に偉そうにされるのは癪に触る。
「もっと年上の奴は年下なんかに命令されて悔しくないわけ?」
悟浄は隣の机の独角(悟浄と兄弟にあらず)にそう言う。
「まぁ、部長はいい人だから年配の人からも信頼されてるしな」
確かにあの人当たりの良い笑顔で言われればなぁ…とは思うが、それでも気の済まない分もある。
「酒で潰してみるってのどうだ?」
ハナっから仕事で勝負する気はない…。
「……部長は『枠』だぞ」
「わく……?」
「その心は(ざるの)網すらない」
「………」
その表現は兎も角…そこまで酒に強いならその作戦は諦めるしかない。
潰すつもりで潰されてはこの先一生頭が上がらなくなってしまう。
「なんかいい手はねーかな」
「…働けよ……」
「やり直しです」
4回目の提出となった書類が笑顔と共に戻される。
まあたいして直してなかったが。
「どこがワリーんすか?」
「んー…どこというか、全体的にですかね」
笑顔でそういうこの目の前にいる若き部長……やはりここは一発一泡蒸かせてやりたい。
しかしかどうしたらよいものだろう。
「そろそろ期限が近いのできちんとやってくれないと困るんですけど」
「へーい…」
それが出来れば苦労はないんだけどねー、と心の中で付け足す。
「あ…」
書類を悟浄の手に渡そうとした八戒が床に置かれていた段ボール箱に躓きバランスを崩す。
倒れそうになった八戒の身体を悟浄が咄嗟に支える。
「ゃ…ん……」
咄嗟だったため、悟浄の手が八戒の尻の辺りを掴む形になってしまう。
その瞬間、八戒の口から声が漏れる。
「あ…すみません……」
八戒は顔を真っ赤にして悟浄から離れる。
これは……。
悟浄はにんまりと笑う。
そうだ、自分には誰にも負けない特技があったではないか。
「部長、この書類残業して直したいんですけど付き合って頂けませんか?」
「…いいですよ」
やっとやる気を出してくれたと思い八戒が笑顔で答える。
しかしこの時、悟浄の頭の中ではとんでもない計画が立てられていた
───。
今の時期は特に大きな仕事もなく残業する者もいなかった。
オフィスでは悟浄と八戒の二人きりであった。
悟浄は『これは好都合』とにんまり笑う。
先程、偶然に八戒に触れた時に気が付いた。
八戒はかなり感じやすい方だろう。
そして自分は、バカだがこっちのテクに関してはかなり自信がある。
今までに抱いた女の数は星の数である。
まあ、男は抱いたこと無いが…。
ここまでくれば男だろうが和姦だろうが強姦だろうがどんとこい、といった感じである。
まあ別に最後までやらなくても良いだろう。
とりあえず自分のテクで八戒を負かせてしまえばそれで良し!である。
「…ですから、ここはこうして………」
悟浄がこんな事を考えているとは知らない八戒は一つ一つを丁寧に説明していく。
確かに八戒の指導は優しくわかりやすい。
これなら皆、彼に着いていくだろう。
自分のために一生懸命仕事を手伝う八戒を見て、本当にこの人にそんなことをしてしまってもいいのだろうかと考える。
…優しい、いい人ではないか……。
「分かりますか?」
「…ああ……」
しかし、ここで引き下がっては男が廃る。
そう、考えようによってはかなりおいしいシチュエーションではないか。
ここまで来たらやるしかないのだ。
「これで完成ですね。お疲れ様です」
社内にすっかり人の気配も無くなった頃、やっと書類が完成した。
といっても、ほとんど八戒が作ったといっても間違いではないが……。
「ありがとうございました……」
ここまでは作戦通り。
問題はこの先だ。
「ご迷惑かけたお詫びといっちゃなんですが」
「…え……?」
悟浄は八戒の腰に手をまわすと勢いよく引き寄せる。
もちろん軽いキスなんかではない、女殺しと言われてきた悟浄のお得意で強烈なディープキスである。
これで落ちなかった者はいないと言われるぐらいだ。
唇を話すと二人の間を唾液が糸を張る……。
八戒は酸素を求めて荒く息を付く。
その頬は赤く染まり瞳はうるんでいる。
八戒のその姿をみて、悟浄は心の中でこの作戦の成功を確信する。
「俺のテクで気持ちよくして差し上げますよ、部長」
もう一度唇を奪うと空いているデスクに八戒の上体を倒す。
そして上着のボタンを一つずつ外していく。
気が動転しているのか八戒は全く抵抗しない。
上着の前を完全にはだけさせるとその白い肌に唇を落とす。
「あ…ん……やだ………」
胸を舐められ思わず上がってしまった声に我に返り、悟浄の胸を両手で押す。
悟浄はその手を後ろで一つにまとめ上げるとネクタイで縛る。
「部長は嘘つきだな。嫌じゃないだろ。乳首こんなにたてておいてよ」
悟浄はそう言って八戒の胸の突起を指先ではじく。
八戒は恥ずかしさのあまりか泣きそうになっている。
これも作戦のうちである。
こういう貞淑なタイプは言葉で嬲るのも効果的である。
「ほら、下ももうこんなんじゃん」
八戒の股間に手を伸ばすと、ズボンの上からやんわりと握る。
「ゃ……あぁ………」
八戒のソレはもうすっかりと形を変えている。
悟浄は八戒のベルトを抜き取り、ズボンと下着をおろす。
「部長…いや、八戒……可愛いよ」
八戒が恥ずかしそうに目を背ける。
「や…やめてください……」
悟浄は八戒のモノをそっと口に含み愛撫する。
それまでとは比べものにならない程の刺激に八戒の口から止められなくなった嬌声が次々に漏れる。
悟浄は指に八戒の先走りの液体を絡めると後ろへと忍ばせる。
「ゃ…てダメです……そこは…んん……」
まだそう言う意味では一度も使われた事のないだろう八戒の蕾は、硬く閉じられていたが、それでも少しずつ悟浄の指を飲み込んでいく。
「仕事に関しては部長に敵わないけれどコッチに関しては俺の方が……」
舌と唇による前の刺激と共に内部に収めた指をなぞり上げるように動かす。
「ぁ…ん……やぁ……」
悟浄が先端を強く吸い上げると八戒は身体を震わせ悟浄の口内へと精を放った。
力が抜けたのか、そのままずるずると床に座り込む。
まだ荒く息を付く八戒の足を掴み、引き寄せる。
「…や……何………?」
「何って『イイ事』に決まってるでしょ」
八戒の足を引き上げ、自分の足を絡めると先程まで指をいれていた所に己のモノを押し進める。
「いた…ゃ……」
指とは比べものにならない程の大きさに八戒が苦痛の声を漏らす。
悟浄は時間をかけて全てを収める。
「や…やめて……」
全てを収めるとそのまま悟浄が立ち上がる。
立ち上がった悟浄に対して八戒は足をも地上げられ頭は床に押しつけられた状態だ。
悟浄が八戒を完全に見下ろす形になる。
悟浄が八戒を見て笑う……。
「ずっと…こうしてアンタを見下ろしたかった……」
「…あ……おはようございます…」
翌日、悟浄を見た八戒は、顔を紅くさせて恥ずかしそうに顔を逸らす。
その姿に悟浄は胸の奥が熱くなるのを感じる。
あれは一晩限りのつもりだった。
彼よりも優位に立ちたかった
───
それだけだったのに……。
すっかりと『とりこ』にされてしまったのは自分の方らしい……。