48 STUDIES
Op48
43.抱き上げ(だきあげ)
『手伝って欲しい仕事があるから来て欲しい』
三蔵にそう言われたのは突然のことだった。
八戒は突然そう言われたことで驚いたが、三蔵は心の恩人であるわけだし、そう言われればそうそう断るわけにもいかない。
悟浄にそのことを伝えると簡単に身支度を整え、寺院へと向かった。
八戒は寺院に着いてから更に驚いた。
自分に頼むくらいだから、てっきり書類等の事務関係だと思った。
しかし、三蔵は今から近くの街へ行くと言う。
どうやら何か事件が起こったようである。
「一体何が起こったのですか?」
八戒が三蔵にそう聞いても三蔵は何も言わない。
八戒にとっては謎ばかりである。
一体なんだというのだろうか。
街に着いてからも謎は深まるばかりだった。
……あっという間に事件が解決したからだ。
別に自分は何もしていない。
事件自体、何も難しいことはなかったのだ。
これなら悟空が付いてきても別にかまわないだろう。
それどころか、三蔵一人でも一向に構わないだろう。
三蔵は何故ここに自分を連れてきたのだろう。
結局その日は遅くなったのでその街に泊まることになった。
「三蔵、どうして今回僕を呼んだんですか?」
宿の一室で八戒は三蔵にそう言う。
はっきり言って、今回自分は全く必要ない。
何故わざわざ自分を呼んだのだろう。
三蔵は八戒の質問には答えず、ベッドの縁に腰をかけ煙草に火をつける。
「ねー、三蔵…」
八戒は三蔵の近くによる。
三蔵は八戒を見上げると煙草を灰皿に押し付ける。
「聞きたいか?」
そう言うと八戒の腕を掴み引き寄せ、そのままベッドに組み敷く。
「…な、何……」
慌てて起きあがろうとするが、三蔵の両手が八戒の肩を押さえつける。
三蔵の紫の瞳が八戒を見下ろす。
月の光が窓から射し込む。
三蔵の髪が月の光を受け、金色に光る。
それはとても綺麗で…そして怖かった。
天使のようにも悪魔のようにも見える。
そんな美しさだった。
三蔵の姿に釘付けになる。
自分の置かれている状態を忘れてしまうくらいに。
ゆっくりと三蔵の顔が近付く。
自分の唇に当たる柔らかな感触に八戒は我に返る。
「ん…や……」
今、自分は何をしている…?今、自分は何をされている…?「…やぁ…んん……」
喰い付くように何度も唇が合わせられる。
苦しい…息が出来ない…。
一体どうしたというのだ。
何故自分は今、こんなことになっているのだろうか。
「三蔵…何を……」
ようやく解放された唇で荒く息を吐きながらそう言う。
三蔵の強い瞳が自分を射抜く。
ただ見られているだけなのに身体が動かない。
「ここまでしてもわからないか?」
三蔵の唇が今度は八戒の首筋に落とされる。
少しずつ自分の熱を煽るようにして下へと動いていく。
それと同時に三蔵の手は八戒の太股のあたりから肌の表面をなぞるようにして上へと移動していく。
「あ…やめ…」
やがて三蔵の手と唇は八戒の胸元でぶつかり合う。
「は…あ……」
三蔵の手が胸の飾りに触れる度に八戒に痺れるような快感が生まれる。
そして、三蔵の下がそこを舐め上げるたびに意識が遠くなっていく。
───
自分は何をしているのだろう…。
だんだん何も考えられなくなる。
それでも必死に力の入らない手で三蔵を押し返そうとする。
「や…やめて……ん…」
それまで胸を嬲っていた手が八戒の下肢へと伸ばされる。
直接中心を握り込まれれば八戒の抵抗が止まる。
「…は…あぁ…あ…」
今までの愛撫でかなり反応を示していたソコは三蔵の作り出す刺激に簡単に達してしまう。
「…は…三蔵…や……」
抵抗しようとするのだが、三蔵に刺激を与えられるたびに何も考えられなくなってしまう。
「…あっ……」
突然八戒の身体がうつぶせへと裏返される。
高く持ち上げられた八戒の尻に、何か冷たい液体が塗り込められる。
その冷たい感触に八戒は一瞬意識がはっきりするが、すぐに与えられる痛みに思考が拡散する。
「いた…や……」
「力を抜け」
シーツを掴んだ手に力が籠もる。
力を抜けといわれて抜けるものでもない。
八戒の中に収まった三蔵の指は八戒の内部を掻き回すように動く。
一本から二本へと指が増やされる。
八戒はじっとシーツを握りしめたままただその時が過ぎるのを待つ。
「………」
ある程度内部が解されると三蔵の指が引き抜かれる。
───
逃げなきゃ…。
意識ははっきりしない…。
それでも頭の中でそうシグナルが鳴る。
起きあがることは出来ない。
それでも少しでも逃げようと、力の入らない手をベッドに付き、少しずつ前に進む。
「……あ…」
逃げようとする八戒の両足が持ち上げられる。
そして、今まで三蔵の指が収まっていたところに熱を持ったモノが押しあてられる。
「や…いや……あぁぁ…」
結局…自分はあのためだけに呼ばれたのだろうか。
自分は三蔵にとって何なのだろう。
そう考えたところで答えが出るわけでもない。
八戒は手に持った手紙を見て溜息を吐く。
それは三蔵からの手紙…。
前と同じ、『仕事を手伝え』という内容だ。
「これってやっぱりそうなんでしょうかね…」
小さく呟く。
でも、何を考えても変わるわけでもない。
自分は彼に従うしかないのだから。
……あの強い瞳には逆らえないのだから。