48 STUDIES Op48
41.深山(みやま)



─── …はあ…。
八戒はホームでため息をつく。
朝はあまり得意ではない。
だから一限から授業のある日は憂鬱でしかたがない。
……その上この人……。
通勤通学ラッシュであるこの時間、ホームにはかなりの人が溢れている。
ホームにアナウンスが流れ電車が到着する。
しかし、その電車は既に満員状態である。
とてもあとこれだけの人数が乗れるようには見えない……。
しかし、そんな事は余所に…乗せる…のだ。
扉が開き少人数が降りる。
─── …んー…。
その瞬間一気に車内へと押される。
かなりの圧力で押しつぶされるかのように、かなりの人数が車内に押し込められる。
─── 苦しい……。
何時になってもこの満員電車には慣れない。
高校の時は自転車通学だったので、ラッシュを体験したのは大学に入ってからだ。
この先もこんな通学が続くのかと思うとげっそりしてしまう。
しかし自分はまだマシなのかもしれない。
身長181cmの自分はまだ人混みの中でも頭が出ている…。
身長の低い女子高生などもう完全に埋まってしまっている。
─── なんとかならないものですかねえ…。
と思うが、なんとかなるものでもないので仕方がない。
早く自分の降りる駅に着くのを祈るのみだ…。


─── え……?
不意に自分のお尻の辺りに違和感を感じる。
それは人の手だろうか。
まあしかし、これだけ混んでいるで仕方がないだろう。
自分の体も荷物も自分の意志とは別の所にある。
でも……
─── まさか…
しかし、段々その手が意志を持って動き始める。
そっとお尻の辺りをなでられる。
─── これって…”痴漢”ってやつなんでしょうか…
まさか男である自分が痴漢に遭うとは…。
しかし痴漢と分かった所でどうしたら良いのだろうか。
この、満員状態では両手とも動かす事ができないし…。
まさか声をあげて”この人痴漢です”と言うわけにも…。
そうこう考えている間にも男の手の動きはエスカレートしていく。
尻の割れ目を確かめるように手が動く。
─── ん…やだ…
探っていた男の手が突然穴を強く押す。
八戒は思わず出てしまいそうになった声をぐっとこらえる。
─── …どうしよう…
何とかしなければ、そう思った時に電車が駅に止まる。
今の隙に何とか…と思うが、開いたのは自分とは反対側の扉だ。
あっという間に乗る人の流れで閉じている方の扉に押しつけられる。
これではもう身動きがとれない。
しかも先程よりも状態が悪くなっている。
相変わらず男は八戒の真後ろにいる。
それもさっきよりも密着した状態になってしまっているのだ。
自分のいる側の扉が開くのは二駅先…八戒の降りる駅だった。
その駅まではあと10分……あと10分もこんな状態が続くのだ。
─── あ…やだ……
男の手が八戒の前に伸ばされる。
ズボンの上から股間をなでられる。
八戒が必死で声をかみ殺していると、後ろで男が小さく笑ったのが耳に入る。
恥ずかしさで顔が紅くなるのが分かる。
八戒の中心は男の手によって与えられた刺激で熱を帯びてきてしまっていた。
八戒が感じている事が分かると男の手の動きは段々と大胆になっていく。
八戒はただじっと我慢し、時が過ぎるのを待つしかなかった…。



─── やっと着いた……
電車の扉が開くと同時に八戒は電車から降りる。
そしてそのまま急ぎ足で改札を出る。
本来ならこの後乗り換えなのだが、八戒は乗り換える電車の方ではなくトイレへと向かう。
いくら何でもこのまま次の電車に乗るわけにはいかない。
そうするには、あまりにも熱を高められすぎてしまったのだ……。
朝のラッシュの時間だからか、男子トイレの中は無人だった。
八戒はほっと息をつくと個室へと入る。
そして扉を閉めようとした時……何者かの手がそれを阻んだ。
「!?」
そのまま閉めかけられた扉が開かれる。
男は個室の中へと入ると後ろ手で扉を閉め鍵を閉める。
「よう!」
「…貴方誰なんですか」
いきなり個室に入って来るなんて…。
何を考えているのだろう。
「俺?沙悟浄って言うんだ」
男はそう名乗ると笑う。
普通に笑っているように見えるのに、何かとても嫌な感じがした。
「一体…何の用ですか…」
声が震えているのが分かる。
何故かとても怖かった。
「いや、熱が溜まっちゃって大変なんじゃないかなと思って、手伝ってやろうかなってさ」
「…や…!」
その言葉で気づく。
この沙悟浄という男は、ずっと自分に痴漢をしていた男なのだと…。
「へー、猪八戒っていうんだ。イイ名前じゃん」
いつの間にか悟浄は八戒の鞄から取り出した学生証を持っている。
「返して下さい!」
学生証を取り返そうとのばした手を悟浄に捕まえられる。
八戒は慌てて手を引こうとする。
しかし悟浄が強い力で八戒を引き寄せる。
「や…離して下さい…」
「逃げんなよ」
「ん…んんー」
突然悟浄の唇で口をふさがれる。
抗議の声を上げようと開いていた口は悟浄の舌の侵入を簡単に許してしまう。
悟浄の舌は器用に八戒の口内を犯していく。
「…く…やめ…」
八戒は悟浄に掴まれている手を強く引く。
突然今まで強い力で引かれていた腕が放される。
八戒は反動で蓋の閉まっている洋式の便座に尻もちをつく。
「いた…」
「おとなしくしてろよ」
悟浄は片手で八戒を押さえつけると、もう片手で八戒のズボンと下着を下ろす。
そして八戒のモノを直に掴む。
「んん…」
唇を噛み必死で声を抑える。
「我慢するなよ。感じるんだろ?」
悟浄の手が強く八戒のモノに刺激を与える。
八戒は首を横に振る。
しかし八戒の意志とは別に熱は容赦なく高められていく。
「ほら、イイんならイっちまえよ」
「…ん…いや…」
こんな所で見知らぬ男にイかされるなんて絶対に嫌だ。
イってしまいそうになるのをぐっと堪える。
「へえ、がんばるじゃん」
そんな八戒の様子を見て悟浄は小さく笑う。
そして今度は八戒のモノを口に含む。
手で根本を刺激され先端を吸われると八戒は身を震わせ悟浄の口内に精を放つ。
「は…あ…」
八戒はぐったりと苦しそうに息をつく。
悟浄は今度は八戒のまだ閉じられている蕾に唇を寄せる。
「や…何…?」
舌先で入り口を割ると、先程八戒が放ったモノを流しこむ。
今までに感じた事のない感触に八戒が声を上げる。
「まさか、これで終わりだなんて思ってないよね?八戒ちゃん」
「やだ…やめて下さい…」
おびえる八戒を押さえつけると、その蕾に指を一本差し込む。
塗り込められた精液のおかげか、八戒のソコは悟浄の指をすんなりと受け入れる。
「や…いた…」
しかし指一本でも八戒にはかなりの苦痛になるらしく身を固くする。
「力抜けよ。よけーに痛いだけだぜ」
悟浄の言葉も耳に届いていないのか、八戒は瞳に涙を浮かべ悟浄の背中にきつく爪を立てる。
その時、外に人の足音が響く。
どうやら誰かトイレに入ってきたようだ。
しかし八戒はその事に気がついてはいない。
「外に人いるぜ。
今声上げたらここでお前が何してんのかバレバレだな」
八戒の耳元で悟浄が小さく囁く。
その言葉に八戒の体がビクっと揺れる。
それと同時に指をもう一本八戒のソコに押し込める。
そして声の上がりそうになる八戒の唇を口でふさぐ。
扉一枚向こうに人がいるという事が八戒をより緊張させる。
先程よりも心音が速くなっているのが分かる。
今ここで声を上げてしまったら…。
気づかれてしまったらどうすれば良いのか……。
八戒は必死に声を抑えながら男が出ていくのをじっと待つ。
「行ったみたいだな」
やがて再び足音がして男が出ていったのだと分かる。
八戒はほっと胸をなで下ろす。
「まあ、でも何時また人が来るかわかんねえから一応な」
悟浄はそう言うと八戒の口に丸めたハンドタオルを詰め込む。
「ん…んー…」
「静かにしてろよ。また人が来るかもしんねえぞ」
そう言われると八戒の抵抗が止む。
八戒のその様子に悟浄は小さく笑うと、八戒の上体を便座の上に倒し、代わりに足を持ち上げる。
「ん…んん…」
この後何をされるか気づき八戒が再び抵抗する。
「力抜いてろよ」
持ち上げた八戒の両足を肩に掛けると今まで指を入れていた場所に悟浄自身をあてがう。
「ん…んー」
自分の中に押し進んでくる激痛に、口をふさがれていても喉から苦痛の声が漏れる。
しかし、その声は誰の耳にも届かなかった…。



「…なんでこんな事をしたんですか…」
まだ虚ろな目で八戒がそう言う。
自分の衣服は悟浄の手によって元に戻されたが、まだ体は言うことをきかず動かす事ができなかった。
「何で?そりゃ好きだから。一目惚れってやつ。
俺、気に入ったモノは絶対に手にいれなきゃ気が済まねえからさ」
そう言って八戒の唇に軽くキスをすると個室をでる。

─── また明日、同じ電車でな……


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