48 STUDIES
Op48
39.千鳥の曲(ちどりのきょく)
日本の趣を残す一軒の家…。
そこから美しい琴の音色が響く。
その家の門には『琴教室』という札がかけられていた。
その中では一人の青年が琴を弾いていた。
もう、稽古自体は終わっているらしく、他に生徒はいなかった。
「まだ残っていたのか」
その声に青年は琴を弾くのをやめ、声のする方を振り返る。
「あ、三蔵先生。
遅くまですみません」
そう言い、青年は小さく頭を下げる。
どうやらその人物が青年の師であるようだ。
「八戒、こんな時間までどうした」
八戒と呼ばれた青年は三蔵の言葉に俯く。
「……曲が巧く奏でられなくて」
そう言い、指先で軽く弦を弾く。
静かな部屋に弦の澄んだ音が響く。
八戒の奏でる音は技術的にはもう充分完成していた。
しかし、自分ではまだ納得できなかった。
「なにか…音楽に溶け込むことが出来ないんです……」
琴を弾く自分と琴から出る音楽が、何か全く別の物の気がする。
違う世界にいるように思えて仕方なかった。
「来い…」
強引に腕を引かれる。
バランスを崩し、三蔵の胸に抱かれるように倒れ込む。
「あ…三蔵先生…」
三蔵を見上げると八戒の唇に三蔵の唇が合わせられる。
「先生…だめです…こんな所で…」
「お前が音楽に入り込めないのは楽器のことをわかっていないから」
三蔵の言葉に八戒はハッとする。
「楽器のこと…」
「ただ楽器を弾いているのでは楽器のことなど何もわからん」
確かに自分はただ楽器を弾き、決められた音を並べているだけだ。
でも、どうすればよいのだ…。
「一体どうすれば…」
三蔵の手が八戒の着物の帯にかけられる。
帯の結び目を解き、緩めると帯は音を立てて床に落ちる。
「…先生、何を……」
帯の無くなった着物は少し手をかけただけで肩から落ちていく。
そして、八戒の白い肌が露わになる。
八戒の頬が恥ずかしさで薄く色付く。
「お前は今から『琴』だ」
そう言い、八戒の身体を床に横たえる。
「…『琴』ですか?」
八戒は不思議そうに三蔵を見上げる。
三蔵は八戒の前に座ると八戒の肌に指を滑らせる。
「あ…ん……ん…」
八戒は思わず上がってしまった声を唇を咬んでこらえる。
「八戒、楽器が音を出さんでどうする。
……感じたままに声を上げろ」
自分は琴…?感じたままに声を…。
「あ…ん…さんぞ……」
何か…少しわかった気がする。
三蔵の手が滑らかに動き、時折弾くように刺激が与えられる。
その刺激それぞれに感じ方は違う。
…これが楽器の気持ち…?
「あ…あぁ……」
「そうだ、なかなか良いぞ」
三蔵の手が優しく動けば優しい感じに声が出る。
弾くように動けば弾けるような声が出る。
あぁ…これが楽器の気持ち…。
「は…あぁ……ん…」
三蔵が反応を始めた八戒の中心を口に含む。
八戒の口からは今までとはまた違った色をした声が出る。
手の動き、そして口での刺激を強くすると八戒の声もまた同じように激しくなる。
「あ…ん…さんぞ…あ……」
刺激を一段と強くすると八戒は身体をビクッと揺らし、三蔵の口内に精を放つ。
三蔵はそれを静かに飲み干した。
「…八戒、楽器の気持ちは分かったか?」
そう言われ、八戒はまだ荒く息を吐きながら三蔵を見る。
「はい…御指南…ありがとうございました」