48 STUDIES Op48
36.帆かけ茶臼(ほかけちゃうす)
家の中で家事全般は八戒の仕事である。
きちんとそう決めたわけではないが、暗黙といった感じである。
「あれ?」
夕方、八戒が風呂を沸かそうと浴室に行くと、もう風呂は沸かされていた。
しかも掃除までしてある。
この家には八戒と悟浄しかいないのだから、八戒が掃除したのでなければ悟浄が、ということになる。
まさか、小人さんが…などというメルヘンなことも考えられない。
「めずらしいですね」
普段は八戒が悟浄に風呂掃除をして欲しいと頼んでもなんだかんだと理由を付けて逃げているのに。
それなのに今日は何も言っていないのに掃除をして湯まではってあるとは…。
三年ほど一緒に暮らしたものとしての推測は…。
その1.何か悪いことをしたので八戒に媚びている。
その2.何か良からぬことを考えている。
おそらくどちらかだろう。
もしも、その1だとするなら…。
そう考えて八戒は周りを見回す。
たとえば、何か八戒の大切な物を壊した…。
前にこれをやったときは、確か自らすすんで部屋の掃除をしていた。
「んーと…」
大切にしているカップ・本などは見たところ無事のようだ。
あとは、冷蔵庫に入っている物、それも夕飯の準備にいるような物を食べてしまった…。
あの時はすすんで買い物に行った。
冷蔵庫を開けてみるが、特に変わりはない。
「そうするとー…」
あとは何があったかなぁ、と考えていると悟浄がドタドタと音を立てて部屋に入ってくる。
「八戒ー、いっしょに風呂に入ろーぜゥ」
「…今回は、その2か……」
八戒はそう呟いて頭を抱えた。
「ねー、一緒に入ろう」
そう言いながら、悟浄は八戒の後ろをカルガモの子供のようについてまわる。
「何で狭いお風呂に男二人で入らなくちゃならないんですか」
八戒はそう言ってあしらうが、悟浄も食い下がる。
「えー。いーぢゃん、いーぢゃん」
「嫌です」
きっぱりとそう言ってもまだめげない。
夕食の支度をする八戒の後ろでずっと『入ろう』コールを繰り返す。
どうせ悟浄の言う『一緒に風呂に入る』というのはただ風呂に入るだけではないだろう。
おそらく『そして風呂で×××』まで1セットなのだ。
全く何を考えているのだろうか。
「入ろうったら入ろー」
悟浄は厭きることなく『入ろう』コールを続ける。
…はっきり言って料理の邪魔である。
「もー、静かにしてください!」
思わず包丁を持ったまま悟浄の方を振り返る。
包丁の刃先が悟浄の顔の寸前に来る。
悟浄は慌てて両手を上げて降参のポーズを取る。
「あ、ごめんなさい」
八戒は自分が包丁を持ったままだと言うことに気が付いて慌てて包丁を降ろす。
「八戒、酷いー」
悟浄は態とらしく泣き真似をする。
「謝ったじゃないですか」
「八戒は俺のこと愛してないんだー」
「愛してますって…」
八戒は子供をあやすようにそう言って悟浄を宥める。
「じゃあ、一緒に風呂に入ってくれる?」
「………」
その言葉に八戒の動きが止まる。
冗談じゃない、それとこれは別問題だ。
「やっぱり俺のこと嫌いなんだ〜」
答えない八戒に悟浄は再び悟浄は嘘泣きを始める。
八戒は諦めるように溜息をつく。
「わかりました。一緒に入りますよ」
もうこうなったらヤケとばかりにそう言う。
その時、悟浄は影でVサインをするのを八戒は見逃さなかった。
「で、結局こうなるんですね」
八戒は脱衣所でヤレヤレとばかりに溜息を吐く。
浴室ではもう既に服を脱ぎ終わった悟浄が『早く〜』と手招きをする。
「わかりましたよ」
諦めてそう言うと服を脱ぎ浴室に入る。
「ほら、八戒。背中洗ってやるからそんなブーたれんなよ」
そう言い、椅子に座るように促す。
八戒が椅子に座ると悟浄は軽くお湯をかけ、石鹸の付いたタオルで八戒の背中をこする。
自分ではあまり力の入らない背中を洗ってもらうのは気持ちが良い。
たまには他人と風呂に入るのも良い、と思えるぐらいに。
……そう、普通ならば。
「悟浄…前は自分で洗えますから」
「お客さん、初めて?」
八戒の訴えに悟浄は下品なギャグで返す。
そう言いながら悟浄は八戒の腕や足までタオルでこする。
「もう、悟浄。いいですから」
「やっぱり隅々まで綺麗にしないとね」
悟浄の泡のついた手が八戒の中心を包み込む。
手を上下させると泡によって滑らかに滑る。
「…や…悟浄、やめて下さい」
悟浄は上から下まで動かし、まんべんなく洗う。
そして先端をまわすように洗う。
「ご…悟浄…」
だんだんと悟浄の手の動きに八戒の熱が高められる。
「あ、こっちも洗って欲しかった?」
そう言って悟浄は八戒の袋に手を伸ばし、やんわりと揉みほぐす。
「あ…んん……」
敏感なところを刺激されて、八戒の口から甘い声が漏れる。
しかし、あと少しで達するというところで悟浄の手離れてしまう。
「あ…悟浄…」
「さ、洗ったあとは流さないとな」
温かいお湯によって泡が流されていく。
お湯が八戒の中心に触れるたびに、体中にもどかしい感覚が広がっていく。
「あ…」
途中で放置された身体がもっと強い刺激を求めて訴える。
「や…何するんですか…」
身体の泡を流していたシャワーが八戒の後ろにあてられる。
「隅々まで綺麗にするんだろ?」
入り口が悟浄の指によって押し広げられる。
そこからお湯が体内へと入り込んでくる。
「あ…やだ……あつい…」
ある程度お湯を入れるとシャワーを止める。
そして指を入れ、中をゆっくりと掻き回す。
悟浄の指が動くたびに、中のお湯が波を立て、八戒の内壁を刺激する。
「こんなもんかな」
中を洗い終わると指を引き抜く。
「あ…ん……」
八戒の秘部から少しずつお湯が滴り落ちる。
八戒はその感覚に目を閉じてじっと耐える。
「じゃあ、身体も洗ったし湯に浸かろうぜ」
悟浄はそう言い浴槽に浸かると八戒に向かって手を伸ばす。
八戒は震える足でゆっくりと立ち上がる。
ここまできて普通に湯に浸かる…わけはない。
まず、この狭い浴槽に二人入るのは無理である。
「ほら、八戒」
八戒は差し出された手をそっと取る。
そして片足を浴槽内に入れた瞬間、悟浄が八戒の腰を掴み浴槽内に引きずり込む。
「わ…ちょっと……あ…」
突然のことに八戒がバランスを崩す。
水の浮力が働くため、ある程度の衝撃は抑えられるが、まだある程度の勢いを残したまま、悟浄の中心が八戒の中にお湯と共に入り込む。
まだ片足しかお湯の中に入れていなかったため、残りの片足は湯の中に入りきらず、悟浄の方に引っ掛かってしまっている。
そのせいか、悟浄がより深く八戒の中に入ってくる。
「ちょっと…悟浄…んんん……」
お湯の熱さと接合部の痛みに抗議の声を上げようとするが、その言葉は最後まで言うことなく悟浄の唇に吸い込まれた。
「八戒、大丈夫?」
「…大丈夫なわけないですよ」
ぐったりとした八戒が今のソファで横になる。
……いわゆる湯あたりというヤツである。
そのおおよその原因となる悟浄は、特に悪びれたふうでもない…。
…何でこんな人を好きになってしまったんでしょう。
八戒は心の中で溜息を吐く。
しかし…
─── 好きになってしまったものは…仕方がない。
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